今坂正一の世界
九州の昆虫
自然環境アセスメント
おたより・ログイン

FAQ(よくある質問と回答)

メインページ »» 環境アセスFAQ

目次


環境アセスメントとは?
環境アセスメントとは「環境影響評価」のことです。道路やダムの建設、大規模な工業団地開発など、環境に著しい影響を与える恐れのある事業を計画した段階で、周辺の環境の状況を調査し、事業を実施した場合に環境にどのような影響を与えるか、予測と評価を行って、その結果を住民に公表し、意見を聴き、より適正な環境への配慮を確保するための手続き(制度)のことです。
どんな事業が環境アセスメントの対象になりますか?
環境アセスメントの対象となる主な事業は、道路(高速自動車道など)、河川(ダム、堰、湖沼開発など)、鉄道(新幹線など)、飛行場、発電所、廃棄物最終処分場、埋め立て、土地区画整理事業などです。このうち、規模が大きく、環境に大きな影響を及ぼすと認められる事業を「第1種事業」とし、必ず環境アセスメントの手続きを行うことが義務づけられています。また、これに準ずる大きさの事業を「第2種事業」とし、これについては個別に判断されることになっています。つまり、「第1種事業」のすべてと、「第2種事業」のうち手続きを行うべきと判断されたものが、環境アセスメントの対象となります。
環境アセスメント調査にはどのような分野がありますか?
主に物理系(計測)、化学系(分析)、自然系(多様性)の調査があります。物理系(計測)としては、騒音・振動、悪臭、電波障害、交通量など、化学系(分析)としては大気、水質など、自然系としては、いわゆる生物多様性、自然景観(景観、地形)などの分野があります。
生物系環境アセスメント調査にはどのような分野がありますか?
:海洋・河川など水生生物(魚介類、底生動物、プランクトンなど)、陸上動物(哺乳類、希少猛禽類、鳥類、両生・爬虫類、昆虫類、土壌動物など)、植物(植物相、植物群落)などの分野があります。
陸上動物調査の調査方法について教えて下さい。
環境調査としての陸生動物調査は、原則として、その地域に生息する種全てを把握することを目的とします。一般的な各動物の調査方法は以下の通りです。

◎哺乳類
1.フィールドサイン調査(中・大型哺乳類を対象)
 調査範囲を詳細に踏査して、足跡、糞、食べ跡などの動物が生息している痕跡を調査します。

2.トラップ調査(小型哺乳類を対象)
 パンチュウトラップ、シャーマントラップ、墜落缶などを用いて、小型のネズミ、モグラ類などを捕獲し、調査範囲に生息する種類と個体数を調査します。

◎鳥類
1.ラインセンサス(鳥類全般を対象)
 調査ルートを時速2kmほどのゆっくりとしたスピードで踏査し、一定範囲内に出現する鳥類を、姿、飛形、鳴き声などにより識別して、種類別の個体数を調査します。

2.ポイントセンサス(鳥類全般を対象)
 調査定点において、一定時間で観測し得る鳥類を、姿、飛形、鳴き声などにより識別して、種類別の個体数を調査します。

◎両生・爬虫類
1.任意観察調査(両生・爬虫類全般を対象)
 調査範囲を詳細に踏査して、出現する両生・爬虫類の成体・幼体・卵、鳴き声などを確認して、種類別の個体数を調査します。

◎昆虫類(クモ類も含むことがある)
1.任意採集調査(昆虫類全般を対象)
 調査範囲を詳細に踏査して、各地点の環境条件に応じてスウィーピング、ビーティング、石起こし、朽ち木崩しなど、種々の方法で昆虫類を採集します。また、採集が難しいチョウ・トンボ類などの目視確認や、セミ・コオロギ類など鳴き声の観察も実施します。

2.ベイトトラップ調査(地表性昆虫類を対象)
 調査範囲の代表地点において糖蜜、腐肉などの誘引餌(ベイト)を入れたトラップを設置し、落ち込んだ昆虫を採集します。

3.ライトトラップ調査(夜行性昆虫類全般を対象)
 日没から2時間程度、白布のスクリーンに蛍光燈やブラックライトなどを用いて、夜間活動性が有り光に誘引される昆虫を採集します(カーテン法)。最近は、自動的に昆虫を捕獲する装置を用いてのライトトラップ調査(ボックス法)も行われています。
昆虫類の実際の調査の流れについて教えて下さい。
昆虫類は動物の中で最も種数が多く、1989年に九州大学昆虫学教室から発行された日本産昆虫総目録には約29000種が掲載されています。実際は日本国内にその3倍から4倍、最大10万種程度の昆虫が生息すると推定されています。それだけ多くの種が生息するグループを、予算範囲内で効率的に、最も正確に調査地の環境が把握できる方法で調査する必要があります。

事業規模にもよりますが、通常、2?5名の調査者が、春・夏・秋の3季に、それぞれ3?5日程度、上記(答え5)の調査方法を用いて現地調査を行います。得られたサンプルは、屋内作業として、ソーティング(種類の選別)、専門家の同定(種名を調べる作業)を経て、和名・学名・調査方法・個体数などを一覧表にしたリストを作成し、それを元に環境に対する影響を考慮した報告書を作成するということになります。
昆虫類調査の現地調査での問題点は何ですか?
アセスメント調査としての昆虫類調査は、他の陸上動物と比較して、多くの採集法に対応した多くの機材を必要とし、これらの機材を駆使して十分な成果を上げるためにはそれだけ多くの調査者を必要とします。また、その調査者の専門性と採集能力により、成果に大きなバラつきが出ます。

これらの問題点を解決するために、国土交通省の河川と水辺の国勢調査などでは、採集方法や機材を統一して、調査者によるバラつきを少なくしようと努力しています。モニタリングなど、経年変化を調査する場合には、調査者によるバラつきを少なくするために、同じ調査者に同じ採集方法で実施してもらうことが多いようです。
屋内作業のうち、ソーティングと同定の問題点は何ですか?
昆虫類調査では、通常、年間に想像以上に多数の種(500?2000種程度)と個体数が確認されます。これらのサンプルから正しいアセスメント調査の結果を得るためには、何より、まず得られた種の名前を正確に把握(同定)することが必要です。通常、一人の調査者が昆虫全体を調べることは不可能に近く、可能な限り、数多くの専門家に同定を依頼する必要があります。依頼した同定者の能力によって、調査の信頼性・精度が大きく左右されます。

また、適材適所の同定者にサンプルを配るために、グループごとに、サンプルを仕分けし直すという作業(ソーティング)も発生します。このソーティングは単なる仕分け作業と思われがちですが、実は、同定者とほぼ同レベルの専門性が必要で、ソーティングが正確に行われていないと、専門外のサンプルが届くなどして、正確な情報が得られない場合が発生します。
正確な同定結果が得られたら、その結果として種リストを作成しますが、リスト作成についての問題点は何ですか?
現在、種リスト作成の基準として、2つのリストが存在します。第一のものは、先に説明した九大リストを元にした環境省リストで、この十数年、アセスメント調査ではこのリストが標準にされてきました。

しかし、最近、国土交通省から、第二のリストとして、平成18年度版「河川と水辺の国勢調査」用リストが発表されました。このリストは、九大リスト以降10数年が経過して、その後の分類学の進展により多くの種が追加・訂正されていることを受けて、新種を追加し、学名・和名などの改訂が行われて作成されたものです。しかし、河川とダムの調査を目的として作成されたリストなので、河川と関係ない一部のグループは除外・省略されていて、日本産昆虫の全部の種は掲載されていません。また、種の配列も便利さを優先して配列し、科ごとに属名のアルファベット順に並べられており、ほぼ亜科ごとの分類順に並べられている九大リストとは大幅に異なっています。

どちらも、単なる種名の羅列ですので、学名・和名が同時に変化している場合、専門家以外は両リストにおける異同を判断することが難しい状況です。現状では、この2つのリストの互換性が無く、どちらを使うかで、外見上まったく違うリストが出来上がってしまいます。どちらのリストを使うかは用途に合わせて、調査の依頼者と十分に打ち合わせをする必要があります。
得られた種リストを基にして報告書作成をしますが、その際の問題点は何ですか?
前記、両リストのどちらを用いるにしろ、全体の種リストが作成できたとします。通常は、地点別、調査季別にどのような種が何種・何個体出現したか、どのような生態的特質を持った種がどれくらい出現したかなどを示して、その出現種の傾向から、地点等の環境を評価します。この場合の問題点は、調査方法と調査結果の学問的な関連性・評価方法などが確立されていないことです。どんな調査方法を用いて、どのような調査結果が出たら、その環境をどの様に評価するといった基本的な研究がたいへん不足しています。また、出現したそれぞれの種の生態に関して、現在までに解っていることはごく一部です。そのため、特定の出現種のみの評価から、環境全体を評価することも不可能です。

現状では、今までに研究された事例を参考にしながら、調査者が自身の経験をふまえて、昆虫調査の結果表を評価・考察して、報告書を作成しています。つまりは、調査者により、調査報告書の内容には大きなバラツキがあると言うことです。
環境アセスメントとしての昆虫調査では何が重要なのですか?
結局、人ということになります。どのような環境で、どんな環境調査を計画するのか? どのような調査方法を用いるのか? 現地調査を、ソーティング・同定を誰に頼むのか? 出てきた結果をどのように評価するのか? 全て、その目的に最も適した人に依頼し、その人達と協力して業務を遂行することが大切だと考えられます。昆虫類調査に関して、そのような人の情報は、誰に尋ねたら解るのですか?という質問の一つの回答を、このホームページの別のページに紹介しています。


投稿された内容の著作権はコメントの投稿者に帰属します。