今坂正一とE-アシスト - 「日本産ホタル10種の生態研究」の紹介
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昆虫掲示板 : 「日本産ホタル10種の生態研究」の紹介

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「日本産ホタル10種の生態研究」の紹介
板当沢ホタル調査団より「日本産ホタル10種の生態研究, 298pp.」が発行されました(発行日は2006年11月25日)。

図1.日本産ホタル10種の生態研究



















今坂は、つい最近まで、この本についてまったく知りませんでしたが、突然、板当沢ホタル調査団の事務局である小俣軍平さんから連絡があり、対馬のアキマドボタルについての問い合わせがありました。
その折、この本を送って下さると言うことで、2-3日後に、受け取った次第です。
到着した本は、A4版の大判で、冒頭には、ムネクリイロボタル、カタモンミナミボタル、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタル、オオマドボタル、クロマドボタル、オオオバボタル、オバボタル、スジグロボタルの10種の卵、幼虫、蛹、雌を含む成虫、生息場所などのカラー写真が掲載されています。
ホタル類の幼生期については、形態も含めて、水生のゲンジボタル、ヘイケボタル以外はほとんど知らなかったので、これほどまで、生態が解ってきたのかと驚きと共に感心した次第です。
図2.ムネクリイロボタル生態a   図3.ムネクリイロボタル生態b
















事務局による著者の弁は以下の通りです。
「日本のホタルの生態に関する文献は、これまでゲンジボタルとヘイケボタルが中心で、陸生のホタルの生態研究に関するものはすくなく、未解明な点が沢山ありました。また、明らかにされている内容についても、追試がほとんどなされておりませんでした。
例えば、? 成虫の発光、? 幼虫の食餌、? 幼虫の棲息場所、? 幼虫の脱皮、? 幼虫の天敵 などがあります。
そこで、私たちはずぶの素人集団ですが、室内よりもできるだけ現場に張り付いて追試をしてみようと思いました。そして、その結果をまとめたのが、この本です。ただ、生態研究に関する基礎学習をしっかり積んだ者ばかりではありませんので、見当違いや、思い違いが沢山あることと思います。その点のご指摘を含めて、この本が、日本に生息するホタル、とくに陸生のホタルの生態研究の突破口になれればこんなに嬉しいことはありません。」

図4.クロマドボタル生態a      図5.クロマドボタル生態b















板当沢ホタル調査団は、もともと事務局の小俣さん始めとして、八王子市上恩方町板当沢をフィールドとして、クロマドボタルなど陸生ホタル類の生態を研究しようと始められた会だということです。
この調査は、一応、1998年から2001年まで、冬期に生息地の落葉を一枚ずつはぎ取って幼虫を探すような地道で辛抱強い調査が板当沢において続けられ、その間に多くの陸生ホタルの卵・幼虫・蛹の形態を含めて、多くの新たな生態知見を発見されたようです。
それと共に、クロマドボタル幼虫には斑紋の多型が現れることを発見されました。同時に、他の地域の調査により、幼虫の斑紋パターンには場所により違うタイプも現れることを発見されました。
その後、調査を全国規模に拡大されて現在に至っているようです。板当沢にはクロマドボタルだけで、オオマドボタルは生息しないことになっていますが、全国的な幼虫の斑紋の多型調査によって、幼虫ではこの2種の区別ができないこと、オオマドボタルの生息地とされる九州・四国地域でも、クロマドボタルと同様な斑紋多型が見られ、場所ごとに斑紋のパターンが異なることなどが述べられています。

図6.マドボタル類幼虫の斑紋変異論文









オオマドボタルとクロマドボタルとは、本当に別種か、あるいは亜種か、と言った様々な意見があり、両種の斑紋多型がそれぞれ地域的な差があることから、地史まで踏み込んでの研究に発展しているようです。

図7.マドボタル類幼虫の斑紋変異a     









図8.マドボタル類幼虫の斑紋変異b












また、その点について、ミトコンドリアのDNA遺伝子の解析によるアプローチの一端も紹介されています。

図9.マドボタル類のDNA解析論文     





図10.マドボタル類のDNA解析結果













この本は、そうした、調査団の約8年間の集大成であるようです。

先に事務局が述べられているように、この本は「陸生のホタルの生態研究の突破口」であることは間違い有りません。
一度手にとって読んで頂きたい本の一冊です。そして、是非、ホタル類の生態研究に役立てて下さい。

この本を入手希望の方は、板当沢ホタル調査団事務局の小俣軍平(おまた ぐんぺい)さんに直接電話かファックスでご連絡下さい。本2500 送料500の、合計3000円で頒布されるそうです。

小俣軍平 電話及びファックス(042-663-5130)

なお、発行元の板当沢ホタル調査団は、2007年4月をもって発展的に解散されたそうです。引き続き、事務局を中心に、現在、「陸生ホタル生態研究会」という、陸生ホタルの生態をさらに深く全国規模で解明しようという会の発足を計画中です。上記の本を読んで、ホタルについての興味が湧いてきた方は、是非、小俣さんまで連絡して、新しい会にご入会下さい。