今坂正一とE-アシスト - 夏の甑島はライト三昧 2
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昆虫掲示板 : 夏の甑島はライト三昧 2

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imasaka
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  • 登録日: 2018-1-27
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夏の甑島はライト三昧 2
夏の甑島はライト三昧の2回目です。

2020年7月20-26日 久留米昆蟲研究會甑島調査ですが、1では、牧の辻段と、遠目木山について紹介しました。

[上甑島 2020年7月20日?23日 細谷・國分・今坂]

<7月20日>初日

○須口池 109種(甑島列島初記録9種) 7月20日から22日

















遠目木山のライトFITを設置した後、北側の海岸沿いに西行し、須口池へ行きました。ここは、上甑島北岸に点在する塩湖の中では、最も塩分が少ないのではないかと考えている池で、周囲はヨシを始め、水生植物が多く繁茂しています。

(須口池)

















(花がいっぱい)

















海浜はやはり礫の浜ですが、礫の中に多少とも砂泥が混じり、海浜植物も見られることから、海浜特有の種と水生昆虫の、両方が狙える場所として採集ポイントと考えている場所です。

(ボタンボウフウに多いアカスジカメムシ)

















浜にはボタンボウフウや、ハマナデシコが咲き、ハナバチやヒメハナノミも見られます。
(訂正:当初、カワラナデシコとしていましたが、池崎さんのご教示により、ハマナデシコに訂正しました。ご教示いただいた池崎さんに感謝いたします。)

(ハマナデシコ)

















花の周りに、イエローパンと、それを利用したライトFITを設置します。

(イエローパン)



















(イエローパンのライトFIT)



















砂浜ものを狙って、ベイトトラップもかけてみましたが、翌日見てみると、フナムシだけがてんこ盛りに入っていて、これでは他の虫が入る余地がまったくありません。

なぜか砂浜にはフナムシはいませんが、砂浜以外の潮気のある場所は完全にフナムシの天下のようです。

また、池を見通せる場所には、極力、風の影響を受けにくい茂みにライトFITを設置します。

(茂みにかけたライトFIT)


















細谷さんは花の周りを中心にスウィーピングをされていました。彼のタトウには、荒人崎というデータが書いてあったので、何処かと思って地図を再確認したところ、この須口池の北西の角のあたりが荒人崎でした。ここでは須口池にまとめておきます。

(荒人崎でスウィーピングする細谷さん)

















彼はコハンミョウ*とクロウリハムシ、アトボシハムシを採集していました。

また、國分さんもオキナワコアオハナムグリ、タノオアラゲサルハムシ、ツヤキバネサルハムシを採られていました。チョウはキアゲハとウラナミシジミを見たくらいで、ツクツクボウシの声を聞かれたそうです。

20日はこれで中甑に戻り、21日夜はここで國分さんと二人、スクリーンを張って灯火採集をしました。

(灯火採集)
















國分さんはやはり蛾の採集に専念されていましたが、ウスオビコミズギワゴミムシ☆とクロケシツブチョッキリも採られていました。

(ウスオビコミズギワゴミムシ)
















私は、スクリーンとそれに吊したFITで、コヒメヒョウタンゴミムシ*、アカヒメヒョウタンゴミムシ☆、クリイロコミズギワゴミムシ*、チャイロコミズギワゴミムシ☆、ブロンズクビナガゴミムシ*、トゲバゴマフガムシ*、ニセユミセミゾハネカクシの近似種☆、ツマアカカワベナガエハネカクシ☆、カワベナガエハネカクシ☆、アカバナガエハネカクシ*、アオバアリガタハネカクシ、

チビクビボソハネカクシ*、カクコガシラハネカクシ*、ヒラタクワガタ*、セスジカクマグソコガネ*、ヒメセスジカクマグソコガネ*、マルガタビロウドコガネ*、ドウガネブイブイ、ヤマトアオドウガネ*、スジコガネ*、リュウキュウダエンチビドロムシ*、ミカドヒゲブトコメツキ*、マルガタキスイ*、ズグロカミキリモドキ*、ハイイロカミキリモドキ*、コスナゴミムシダマシ*、キイロクワハムシ*を採集し、林縁を飛ぶシラホシハナムグリとカナブンを採集しました。

このうち、ニセユミセミゾハネカクシの近似種としたのは、ニセユミセミゾハネカクシにソックリなのですが、後者の前胸に見られる縦隆起と前後2対の窪みが見えなかったので、この様に表示しました。甑島産としては、今坂(2019)で、ニセユミセミゾハネカクシの近似種を2種報告していますが、それらとの異同も今のところ不明です。

さすがに、水辺で見られるゴミムシ類やハネカクシ類が多かったのですが、海に近い位置で多少塩分が濃いのか所謂、水生甲虫であるゲンゴロウ、ガムシ類などは予想以上に少なかったです。

私は21日と22日にはライトFIを回収しました。その中に、シロヘリハンミョウ*が入っていて、アレッと思いました。

(シロヘリハンミョウ)























当然、上甑島では初記録ですが、上記、荒人崎のあたりは海岸沿いに岸壁と崖が連なっていて、本種の生息環境が存在します。

甑島で見つかっているハンミョウは今のところ、コハンミョウとシロヘリハンミョウの2種だけで、前者は水田まわりや河川敷に、後者は海岸の崖にいます。

広い砂浜や河川敷が存在しない甑島ですが、さらに、ハンミョウとエリザハンミョウくらいは居て良い様に思われますが、6月と7月に調査して見ていないところをみると、いないのかもしれません。

ゲンゴロウ類では、コガタノゲンゴロウ、ウスイロシマゲンゴロウ、ホソセスジゲンゴロウと共に、カンムリセスジゲンゴロウ☆とチンメルマンセスジゲンゴロウ☆が入ってました。ゲンゴロウ類は良く調べられている中にあっても、両種共に、甑島では初めてです。
チンメルマンの方は特に意外でしたが、長崎県など九州西岸では比較的多くの記録が見られます。

(カンムリセスジゲンゴロウ、右は♂交尾器)
















(チンメルマンセスジゲンゴロウ)
















海浜性と思われる種も、クロオビコミズギワゴミムシ*、ムツモンコミズギワゴミムシ☆、シズオカヒメハナノミ☆、タテスジフトカミキリモドキ☆、ハラグロランプカミキリモドキ*、チビイッカク*などが採れています。

(ムツモンコミズギワゴミムシ)
















(タテスジフトカミキリモドキ、中は♂交尾器包片、右は♂交尾器中央片)
















ここでは海岸に多いカミキリモドキが、ズグロカミキリモドキ、ハイイロカミキリモドキも含めて4種見られました。ハイイロを除くと、3種は良く似ていますが、タテスジは前胸・上翅の表面にツヤがあり、♂交尾器の形と共に区別できます。

タテスジフトカミキリモドキは九州南部、種子島、屋久島、奄美大島に分布し、上甑島は北限になると思います。

他に、スクリーンでの灯火採集では採れていない種として、ケゴモクムシ☆、ミドリマメゴモクムシ*、キボシマメゴモクムシ*、オオホソクビゴミムシ*、アカケシガムシ、オオドウガネコガシラハネカクシ、ヒメカンショコガネ*、ヒメサクラコガネ*、サンカクスジコガネ*、セマダラコガネ*、ワタナベモンヒメハナノミ☆、ツシマムナクボカミキリ*、アオスジカミキリ、フタモンツツヒゲナガゾウムシ*が採れました。

(ワタナベモンヒメハナノミ)
















本種は畑山・今坂(2019)で初めて九州本土(諫早湾)のヨシ原から記録しましたが、それ以前は八重山と沖縄本島(この報告で書いているだけでデータは未記録)から知られているだけでした。

畑山武一郎・今坂正一, 2019. 2018年8月九州ライトFIT採集紀行 -九重黒岳・久留米高良山・諫早・多良岳-. こがねむし, (84): 37-55.

私はこの種を九州西岸各地で確認していましたが、てっきり、フタオビヒメハナノミ Mordellina signatella (Marseul)と思い込み、誤同定していました。

ところが、改めて諫早産を畑山氏に見ていたただいて、初めて、実際は本種であることを教えていただいたわけです。
ということで、各地の河口あたりのヨシ原にいるとは思いますが、今のところ、八重山以北では、甑島と諫早湾だけということになります。

畑山氏のご教示によると、かなり多くの本種を確認されているものの、全て♀で、♂は確認されていないそうです。また、図示した須口池産は通常よりかなり黒化した個体だそうです。種々ご教示いただいた畑山氏に深謝します。

その他、ウバメガシ主体の海岸林が少しあるだけで、特にいそうも無い種として、チャイロホソヒラタゴミムシ*、ヤエヤマニセツツマグソコガネ*、カドマルカツオブシムシ*、ケモンセスジシバンムシ☆、マルヒラタケシキスイ*、クロスジムクゲテントウダマシ☆、チャイロテントウ、ガイマイゴミムシダマシ☆なども得られましたが、何故居るのかよく解りません。

(ケモンセスジシバンムシ)
















(クロスジムクゲテントウダマシ)
















(ガイマイゴミムシダマシ)

















チャイロホソヒラタゴミムシなど、九州本土では3-400m以上の山地でないと見られないのに、ここでは海岸沿いにいます。このことは、前に紹介したツヤコガネも同様です。

22日はトラップ回収後、周辺を叩いたり掬ったりしてみましたが、シロテンハナムグリ、アカアシコハナコメツキ、ヒメジョウカイモドキ*、クロスジヒメテントウ、チャイロテントウ、ウリハムシ、ワタミヒゲナガゾウムシなど少数が見つかっただけでした。

國分さんはアオスジアゲハ、アゲハ、キアゲハ、キタキチョウ、ウラナミシジミ、ルリシジミ、イシガケチョウを目撃し、クロマダラソテツシジミ1♂を採集されたそうです。

○江石 14種(甑島列島初記録2種) 7月20日から22日

















須口池にライトFITを下げた後、宿に戻る前に、中甑の湿地・ヤナギ林を見に行くことにしました。

それで、中甑の中心街の手前で国道から左折、直進すると、あれあれ、山手に入っていきます。左折して入るのが少し早かったようです。

それでも、この道は入ったことが無かったのでそのまま進むと、ちょっと良い林を通り、峠からどんどん下って、曲がり角の所に大きなクヌギが立っています。

(江石のクヌギ)

















甑島ではほとんどクヌギは見かけず、特に、これほどでかいのは初めてです。

樹液が出ているらしく、ルリタテハが止まっています。ヒメジャノメも飛び出して、國分さんが追い回し、2♀を採集されました。甑島では初採集だそうです。

細谷さんはここに、バナナトラップとライトFITを設置されました。

(バナナトラップ)



















22日の回収では、バナナトラップでオバケデオネスイ☆を採られています。

(オバケデオネスイ)
















ライトFITには、ダイミョウツブゴミムシ☆、コヨツボシアトキリゴミムシ、オオクシヒゲコメツキ、クリイロアシブトコメツキ*、クシコメツキ、ウスチャケシマキムシ、ツヤケシヒメホソカタムシ、ウスモンヒメコキノコムシ*、コマルキマワリ*、ミヤマカミキリ、クワカミキリ、ウスモンツツヒゲナガゾウムシ、フタモンツツヒゲナガゾウムシなどが入っていたようです。

(左:ダイミョウツブゴミムシ、右:ヒゲクロツブゴミムシ)
















同様の色合いのツブゴミムシとして、甑島では南方系のヒゲクロツブゴミムシがこの後、里のミッキー牧場のライトFITで見つかりました。
両種は一見良く似ていますが、ヒゲクロツブゴミムシが二回りほど小さく、上翅にハッキリした点刻列があるので、区別できます。

この曲がりから少し降りると江石の集落、そして海岸にたどり着きます。

○中甑 51種(甑島列島初記録14種) 7月20日から22日

















間違った道の行き先は確認できたので、中甑の湿地・ヤナギ林に戻ります。

國分さんは、「これだけヤナギがあれば、コムラサキはいるのではないか」と、だいぶ探し回られたようですが、アオスジアゲハ、モンキアゲハ、カラスアゲハ、キタキチョウ、ヤマトシジミ、コミスジ、イシガケチョウ、ヒメジャノメの目撃で終わり、コムラサキは確認できなかったそうです。

ヤナギ林の下の地面を確かめると、水はほとんどなく、大分乾燥しているようです。

道沿いの草を掬って、アオバネサルハムシ、マルキバネサルハムシ☆、ヨツモンカメノコハムシ、サカグチクチブトゾウムシが見つかりました。

(マルキバネサルハムシ)
















甑島では、それまで、なぜかキバネサルハムシの仲間としては、ツヤキバネサルハムシ唯1種が確認されていました。島で多様性が少ないので、この1種だけかと半ば諦めていたのですが、「何だ、マルキバネサルハムシもいるではないか」と安心した次第です。

ここに来たのは、湿地性・水生昆虫狙いでのライトFITの設置なので、ヤナギ林の中と、平行して流れている川にかかった橋の欄干にライトFITを掛けることにします。

(ヤナギにかけたライトFIT)


















(川にかかった橋にかけたライトFIT)


















それでも翌21日の回収では、水生昆虫ではナガマルチビゲンゴロウ*、チビゲンゴロウ、カンムリセスジゲンゴロウ☆、チンメルマンセスジゲンゴロウ☆、タテスジナガドロムシ*、

湿地性あるいは水辺の虫としては、ヒメヒョウタンゴミムシ☆、アトモンミズギワゴミムシ*、クロオビコミズギワゴミムシ*、ヒラタコミズギワゴミムシ☆、クリイロコミズギワゴミムシ*、ヨツモンコミズギワゴミムシ*、チャイロコミズギワゴミムシ☆、キイロチビゴモクムシ、キベリゴモクムシ、ホソチビゴモクムシの近似種☆、キボシマメゴモクムシ*、メダカアトキリゴミムシ*、キアシナガハネカクシ☆、クロチビマルハナノミ、ヤマトケシマキムシ☆、シズオカヒメハナノミ☆、トゲナシヒメハナノミが採れていました。

(ホソチビゴモクムシの近似種)
















この種は、当初、ムネミゾチビゴモクムシと思っていたのですが、ゴミムシ研究者の森田さんとやりとりをしていたらどうも違うみたいで、結局、送って調べていただいています。

クロズアカチビゴモクムシに似ているようなのですが、詳細は後日、明らかになってからお知らせします。

(ヒメヒョウタンゴミムシ)
















(キアシナガハネカクシ)
















(ヤマトケシマキムシ)
















上記3種は溜め池、湿地、泥土の河川敷などで採れる種ですが、今のところ、甑島ではここだけでしか採れていません。

(トゲナシヒメハナノミ)
















(訂正:当初、本種をワタナベモンヒメハナノミと表示していましたが、畑山氏のご教示によるとトゲナシヒメハナノミということなので、訂正しました。なお、正しいワタナベモンヒメハナノミは須口池で採れていましたので、そちらで図示・解説しています。ご教示いただいた畑山氏に重ねて深謝します。)

草地や耕作地周りの種としては、マダラチビコメツキ、スジマダラチビコメツキ、チャイロコメツキ、クチブトコメツキ、ミカドヒゲブトコメツキ*、デメヒラタケシキスイ*、マルガタキスイ*、ヒメムクゲオオキノコ*、クロスジムクゲテントウダマシ☆、ウスモンホソアリモドキ☆、コスナゴミムシダマシ等が採集され、

(ウスモンホソアリモドキ)

















ヤナギの葉や樹液に来ていたと思われるドウガネブイブイ、ヒメコガネ、カブトムシなども入っていました。

クロホソアリモドキ☆は、普通、砂浜や砂地の河川敷などにいる種です。

(クロホソアリモドキ)
















大部分普通種ですが、甑島初記録種を採るという目的からすると、ここのライトFITは非常に効率的(15/51)でした。

ヤナギ林に下げたものより、河川の橋に下げたもののほうが、倍以上興味深い種が入っていたようです。

それだけ、甑島では湿地や耕作地、河川などの調査をしていなかったと言うことでしょう。


つづく