今坂正一とE-アシスト - 2020春の英彦山1
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昆虫掲示板 : 2020春の英彦山1

投稿者 トピック
imasaka
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  • 登録日: 2018-1-27
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2020春の英彦山1
3月末から、半年ぶりに採集を再開したものの、コロナ禍で世の中が騒がしい中、様々な場所に出かけるわけにもいきません。
晴れの日は地元で午後から採集を繰り返したものの、まだ、1日採集はやってなくて、腰や膝が心配です。

それで、少し早いですが、昨年から久留米昆の採集例会を始めた英彦山に、下見かたがた出かけようと思い立ちました。

ともかく、國分さんをさそって、4月15日に出かけました。

久留米から筑後川沿いに走って恵蘇宿橋を渡り、角のコンビニでコーヒーを一杯飲んでから右折、国道386号線を東に進みます。
杷木で左折して県道52号線へ入り、2017年九州北部豪雨で大きな被害を受けた赤谷川沿いを北上します。

災害後の復興事業は現在も大規模に行われており、大型ダンプカーがひっきりなしに行き交っています。
元々川幅数メートル程度だった川が、災害対策も含めて、100m以上の川幅に造成されようとしています。

川へ流れ込む、多くの谷間にも、土砂崩れの跡などに砂防ダムが建設されています。
当分、この川沿いには人が住める状態は無いものと思われます。

峠を越してから、国道211号に当たり、ここを左折。小石原へ向かいます。
この道沿いの川もやはりあちこちで改修工事が行われています。

沢山有る小石原の窯元は大部分閉まっており、道の駅も営業をしていない模様。
通常なら、特に土日は渋滞で、通り抜けるのに30分以上掛かる国道も、工事車以外ほとんどすれ違う車もありません。

街の外れで右折し、谷沿いに国道500号線をうねうねと下り、JR彦山駅にたどり着きます。
ここまで、久留米の自宅からほぼ1時間半。

JR日田-英彦山線もその豪雨以降3年近く止まっていて、復旧のめどは立っていません。
地元の人も、それを待ち望みながらも、もう復旧しないのではないかとの悲観的な見方が大勢です。

通常は右折して英彦山周遊道路に登っていきます。

今日はまだ時期も早いので、英彦山周遊道路沿いはまだ芽吹いていないと予想されるので、少し戻って、手前、右手の谷へ折れ、かつての好採集地・深倉峡を見てみようと思いました。

(英彦山と深倉峡の地図)

















実は、昨年(2019年)も何度か、深倉峡最奥の深倉園地まで行ってみようとしたのですが、先の豪雨で土砂崩れが起きたらしく、ずっと通行止めでした。

この道は余所に通じている道ではないので、当分、道路の復旧はなされないものと、半ば諦め、今回も無駄足を承知で見に行ったところ、なんと、通行止めは解除になっていました。

(深倉峡の奇岩:2008年秋撮影・両側の山塊にはこうした岩が林立している)


















途中の、土砂崩れがあったと思われる谷の上部には砂防ダムが建設中で、工事用の機材を入れるために復旧したものと思われます。

結局は林道を2/3ほど進んだ深倉園地まで開通していました。
今年も深倉峡は無理と思っていただけに、念を入れて下見に来て正解でした。

昨年採集の主力とした英彦山の周遊道路沿いには渓流沿いの採集場所は存在していないので、調査に多様性が追加され、面白い物が採れるかもしれません。

(深倉園地)
















駐車場の回りは、まだ、木々は芽吹いたばかり。
肌寒く、ほとんど虫は動いていません。

それでも、陽が射すと、チラチラと、シジミチョウが飛び出しました。
スギタニルリシジミのようです。

國分さんは来る前からこのことを予想していて、今日は、ネットは担いではいるものの、最初からビーティングです。

(ビーティング中の國分さん)

















結局、予想どおり1日動いて、スギタニ以外はアカタテハぐらいしか見られなかったそうです。

帰宅後、國分さんから預かった甲虫の採集品は次の通り。

(國分さんの採集品)















左上から、ハラグロハナムグリハネカクシ、キアシツブノミハムシ、クロヒメテントウ。
その下の黒いクビボソジョウカイはオオサワクビボソジョウカイ♀です。

このジョウカイボンは、近畿から山口まで、本州では広く分布しますが、なぜか、九州では英彦山山系のみで見つかっています。
英彦山にはこうした本州系で、ここ以外の九州内では見られない甲虫が何種か知られています。

その横は、カクムネベニボタル。

右上にいって、クロフナガタハナノミ、シリブトチョッキリ、、キアシツブノミハムシ、その下は、コクロヒメテントウ、右は、ヒゲナガホソクチゾウムシ、カシワクチブトゾウムシ(2)です。
下の丸いのはルリマルノミハムシ(4)、赤いのがアカタデハムシ、黄色い長いのはカバノキハムシ、そして、右の円盤状のはイチモンジカメノコハムシです。

あと、セダカシギゾウムシとイチゴハナゾウムシが見えています。大部分、春の甲虫たちです。

次に、私の採集品を紹介します。
いろんな採集法を試み、この時期にしたら、思ったより種数は稼げたようです。

(今坂採集品)


















見上げると、満開は過ぎていましたが、ヤマザクラの咲き残りが見られます。

(ヤマザクラの咲き残り)
















少し叩いてみると、私もオオサワクビボソジョウカイが採れました。この種は、結構、早い時期に出るようです。

(オオサワクビボソジョウカイ♂)
















これに勢いを得て、花を掬っていきます。ちょうどハナムグリハネカクシ類の発生期に当たっています。

(ヤマザクラの花で採集したハナムグリハネカクシ類)























(ツクシハナムグリハネカクシ♂)
















この種は、英彦山と脊振山のみで見つかっています。

次いで、ハラグロハナムグリハネカクシ、サイゴクハナムグリハネカクシ、クロハナムグリハネカクシもいました。

(ハラグロハナムグリハネカクシ)
















ハラグロハナムグリハネカクシは周辺離島を含む九州の固有種です。

(サイゴクハナムグリハネカクシ)
















サイゴクハナムグリハネカクシは、近畿より西の、中国、四国、九州北半分に分布します。

(クロハナムグリハネカクシ)
















他の種は、南斜面や山頂なども含めて、比較的広範囲に分布しますが、クロハナムグリハネカクシはかなり湿気の多いところでないと見られず、川沿いなどに局所的にいます。
広域の分布については、まだ良く解りません。

この時期の英彦山産のハナムグリハネカクシとしては、あと1種、キュウシュウハナムグリハネカクシが見られるはずですが、ここでは採れませんでした。
後で、英彦山一帯を走って採ったカーネットに入っていることが解りました。

(キュウシュウハナムグリハネカクシ)
















花からは、ヒメクロコメツキ、ホソハナコメツキ、キバネホソコメツキ、ヒナルリハナカミキリ、ツブノミハムシ、キアシツブノミハムシ、カバノキハムシ、ルリマルノミハムシなどが落ちてきました。

他に芽吹いている葉も叩いてみましたが、ズグロキハムシ、フジハムシ、キュウシュウヒゲボソゾウムシ、コブルリオトシブミくらいで、まだあまり出ていません。

それではと方針を変えて、コケ蒸した大木をスプレーしてみることにしました。
この樹は生木ですが、目の高さ当たりに小さな樹洞があります。
次の写真の車の後に写っている木です。

(スプレーイングした木など)

















この木からは思った以上に様々な甲虫が落ちてきました。
大半は樹幹のコケの中で、そして一部は樹洞で越冬していたのかもしれません。

(仮称・コケチビドロムシ)























最も数が多かったのが、(仮称)コケチビドロムシです。
この種は、最初(2007年)、長崎県多良山系の轟峡で、幹掃き採集により、コケ蒸した樹幹より発見した種です。

その後、琉球を含む各地で見つかっていますが、まだ、学名は決定されていません。
チビドロムシ科に含まれ、幼虫は渓流の中に生息すると想像されますが、確認されてはいません。
成虫は早春に出現し、渓流脇のコケ蒸した樹幹に集まります。まだら状に見える毛斑が特徴的です。

今坂正一, 2007. 2001年以降に長崎県多良山系で採集した甲虫-幹掃き採集など新しい採集法の紹介をかねて-. こがねむし, (72): 7-17.

(ハコネチビマルトゲムシ)
















本種も樹幹のコケに依存する種です。

(ダルマクチカクシゾウムシの近縁種と、ボウサンゾウムシ)


















左は、ダルマクチカクシゾウムシ Darumazo distinctus Morimoto et Miyakawa(九州,伊,ト悪,西,与那)の近縁種(種は不明)です。
この種も樹幹のコケにいます。

(フクオカツヤツチゾウムシ)
















従来、ホソヒメカタゾウムシとして知られていた種でしたが、昨年逝去された森本先生ほか(2015)の労作により、地域ごとに別種であるとして41種に分類・記載されました。
本種は英彦山を原産地として、古処山、福岡市油山、曲淵から記録されています。

森本 桂・中村剛之・官能健次(2015) 日本の昆虫 Vol. 4 クチブトゾウムシ亜科(2), 758pp.

本来、林床の落葉下に生息する種ですが、越冬時は樹幹にも這い上がるのかもしれません。

(フタツノツツキノコムシ)

















この種はキノコにいる種です。県内では英彦山の記録があるだけのようです。

(ニセコブスジツノゴミムシダマシ♂背面)

















(ニセコブスジツノゴミムシダマシ♂腹面)
















当初、コブスジツノゴミムシダマシの小型個体と思っていました。良く似ていますが、♂腹節末端に、左右両縁を黄金色の毛で縁取られた丸い窪みがあることで区別できます。

図鑑を見ると、モミやツガにつくツガサルノコシカケで生育するそうで、すぐ近くに何本もモミがあったので、納得です。
スプレーした木は広葉樹で、ホストの木とは考えられないので、越冬のため移動して潜り込んだのでしょう。

県内では笠置山の記録がありますが、ツガやモミがあるとも思えない低山(標高425m)なので、城戸さんは疑問?としています。
まあ、今回のは確実なので、福岡県にも分布することが確認できて良かったです。

城戸克弥, 2016. 福岡県のゴミムシダマシ上科. KORASANA, (84): 85-154.

(ジュウジチビシギゾウムシ)















他に、マルムネゴミムシダマシ、コマルキマワリ、クロホシテントウゴミムシダマシ、チャマダラヒゲナガゾウムシ、コゲチャホソクチゾウムシ、ツノブトホタルモドキ、オオホコリタケシバンムシ、ノコギリホソカタムシ、カワツブアトキリゴミムシなども落ちてきました。

昼食後、イエローパントラップも置いてみました。これは次回回収します。

(イエローパントラップ)

















それから、車の天板にカーネットを取り付けて、周遊道路の方に向かいます。

後で確認したカーネットの採集品は以下の通り。深倉峡-彦山駅-周遊道路-薬師峠入り口-帰り彦山駅まで設置していたので、どこで入ったかは特定できず、この分のデータは単に英彦山と表示することにしました。

(カーネットの採集品)




















大部分が同定できないヒゲブトハネカクシ類ですが、先に紹介したキュウシュウハナムグリハネカクシを始め、山地性のハコネミズギワゴミムシ、コクロマルハナノミ、コゲチャヒラタケシキスイの黒化型、ムネアカチビケシキスイ、ベニモンツヤミジンムシ、ヤマトネスイ、チャグロマグソコガネ、マルタマキノコムシモドキ、ナカアカヒゲブトハネカクシなどが含まれていました。
これらが、フワフワと、空中を漂っていたわけです。

(ハコネミズギワゴミムシ)
















カーネットの採集品のうち、最も個体数が多いのはいつでもハエ目で、次いでハチ目が続きます。両目共に主力は5mm以下の小型種で、同定可能な物はごく少ないようです。

その中でも、以下のハエ目の種はまったく初めて見る物で、中肢と後肢の腿節と脛節には、羽毛ソックリの長い毛が生えていました。
これで、空中にふわりと浮いて漂うのでしょうか?
図鑑類を見ても、こんな形のハエは載っていません。

(奇妙なハエ目背面)





















(奇妙なハエ目腹面)





















どうしても名前が知りたくなって、双翅目談話会の重鎮、大石さんと伊東さんに、画像を見て頂きました。

その結果、これはオドリバエ科の、Empis属の♀だろうという返事をいただきました。

インターネットで検索してみたところ、同じように、肢に羽毛がある種が出てきましたが、そこでも種名は未決定でした。
オドリバエ科は国内で200種ほどが知られるようですが、未記載種も含めて、1000種近くいる可能性がある膨大な科のようです。
♀に求愛する際、空中で、贈り物をすることで有名で、大勢の♂が♀の廻りを踊るように飛ぶことから、オドリバエと呼ぶそうです。

そして、羽毛肢を持つのは全て♀のようです。
♀は羽毛肢で空中に浮いたまま、♂の求愛を待つのでしょうかね・・・。

どちらにしても、知らない、見たことがない、昆虫はいくらでもいるのですね。

会員の有馬さんから、薬師峠が面白いかもしれない、と聞いていたので、道路沿いの広場に車を止めて見に行きました。

(薬師峠への分岐)

















15分くらい上ると薬師峠で、林道はここから下りながら大分県側へウネウネと続いています。
周辺はほぼ杉林で、ここを起点に鷹巣山と、反対側は英彦山山頂へと、登山道が続いているようです。

(薬師峠の道標)
















まだ足腰は慣らし運転中なので、登山は止めておきました。

傍らに、はらった枯れ材が積んであり、見ると、天然のシイタケが生えています。
残念ながら虫は付いていません。

(天然のシイタケ)

















これは良いお駄賃とばかり、さっそく摘んで帰り、夕食のおかずになったのは言うまでもありません。
多少堅かったのですが、味は良かったです。

さて、最後はスキー場跡です。
昨年、緒方さんがここでモリアオホソゴミムシを沢山採ったので、見に行ったわけです。

(スキー場跡)

















本種は成虫越冬するので、あるいはと思って、刈り取られた枯れススキをめくったり、叩いたりしてしばらく探してみましたが、見つかりませんでした。

見つかったのは以下の写真の昆虫です。

(スキー場跡で採集した甲虫)



















左から、ドウガネヒラタコメツキ(2)、チビヒサゴゴミムシダマシ、ヒナルリハナカミキリ、ユアサハナゾウムシ、タイワンチビカッコウムシ(旧名・ヨツモンチビカッコウムシ)、ワモンナガハムシ、その下はホソルリトビハムシ(3)、
2列目、キュウシュウヒゲボソゾウムシ(2)、ミヤマツツキノコムシ、
3列目、ヒメジョウカイ、ウエダニンフジョカイ、クビカクシゴミムシダマシ(2)、そして、コバネナガハネカクシの一種。

大部分の種はススキの枯れ葉の下にいるような種ではないので、たまたま潜り込んでいたのでしょう。

緒方さんは6月末から8月初めまでここで採集されていますので、また、来てみようと思います。

周遊道路沿いはなかなか好ポイントが見つからないので、今年は、深倉峡がメイン採集地になるような感じがします。

午前10時から午後4時まで、6時間ほど採集して、膝と腰が痛くなりかけています。
歩いたのは4000歩ほどで、まあ、ならしはこんなものでしょう。
なんとか、1日採集もこなせそうなので、余所へいけない分、英彦山に通おうかと思っています。

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  •  » 2020春の英彦山1 (imasaka, 2020-4-29 17:42)