今坂正一とE-アシスト - 今年の春の訪れは甑島から4
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昆虫掲示板 : 今年の春の訪れは甑島から4

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imasaka
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  • 登録日: 2018-1-27
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今年の春の訪れは甑島から4
今年の春の訪れは甑島から 4回目です。

3月25日

下甑島2日目、昨日は尾岳のみで終わったので、今日は下甑島全域の下見と、探索をするつもりです。

25日の採集地は次の図の通り。数字の順番のように、ほぼ反時計回りに見て回りました。

(25日の採集地)























まず、ほとんど今回採集できなかった砂浜から。宿の目の前にある手打の浜を見てみます。

今日も朝から気温は上がらず、相変わらず風も強い浜辺では、ほとんど飛ぶ虫もいません。

37年前も、あまり虫がいた記憶はありませんが、ともかく、海浜草地は多少ともありそうなので、イエローパンFITトラップと、ベイトトラップは設置してみます。

(手打の砂浜)
















その後で、草の下や、打ち上げられたゴミの下などを探してみましたが、ほとんど虫らしい虫は出てきませんでした。国分さんは、飛ぶチョウが見られないので、草地のスウィーピングをやられていました。

次の写真の点線の左半分が今坂、右半分が国分さんです。

(手打の砂浜で採集した昆虫)
















一方、築島さんはけっこう熱心に、打ち上げられたゴミや草の根際を探していたので、二人とは段違いに虫が採れていたようです。

(築島さんが手打の砂浜で採集した甲虫)


















カラカネゴモクムシ、アカウミベハネカクシ、ホソセスジヒゲブトハネカクシ、アカアシコハナコメツキ、ウスキケシマキムシ*、ヒゲブトゴミムシダマシ、ヒメカクスナゴミムシダマシ、ハマヒョウタンゴミムシダマシ、ヒメホソハマベゴミムシダマシ*、トビイロヒョウタンゾウムシなど砂浜性の虫が一通り入っていました。

(ホソセスジヒゲブトハネカクシ、ヒメカクスナゴミムシダマシ、ヒメホソハマベゴミムシダマシ)














海岸に生息する大型のスナゴミムシダマシは、通常、オオスナゴミムシダマシだろうと思ってましたが、帰ってから、ちゃんと同定したところ、ヒメカクスナゴミムシダマシでした。

本種は通常は、大河川の中流部の砂地の河川敷に見られる種ですが、その河川の河口部の砂地にも見られることがあります。これらは出水などで流されて、河口部に住み着いたものと思われます。

しかし、近くに大河川のない砂浜で見られることはまずありません。
そういう意味で、大河川がない長崎・佐賀・福岡の記録がないのは頷けます。

ひるがえって、では、なぜ甑島の海岸にいるのでしょうか?

SATSUMA162号の甑島特集号でも述べましたが、甑島の対岸、やや北方に、川内川の河口があります。そして、この間の海峡には北から南へ流れる薩南下流という海流が知られています。

川内川の中流部にヒメカクスナゴミムシダマシが生息するとしたら(このことはまだ確認していません)、大雨で河口から海へ押し流された本種は、即座に甑島に流れ着くことになります。

と言うことで、甑島産ヒメカクスナゴミムシダマシの分布の謎は自身の中では解決しました。九州では中北部に限って分布するオオスナゴミムシダマシがいないことも、ヒメカクスナゴミムシダマシの移住を容易にしたものと思われます。

浜の虫はトラップに期待することにして、次へ回ります。

東海岸を北上し、手打のトンネルを抜けてから、築島さんが、「瀬尾の滝のある谷が良いかもしれない」と言うので、行ってみることにしました。

瀬尾の観音滝は、キャンプ場もあり、公園化されている場所でした。

(瀬尾の観音滝:奥に見える)

































それでも、平地の少ない甑島にあって、低地の河川沿いに入れる谷などめったにありません。
ちょっと探索してみようと言うことになりました。

川沿いの遊歩道に見知らぬ小さな白い花が咲いていました。

(白い花)
















試しに叩いてみると、微小な2mmに満たない黄白色のハナムグリハネカクシがいくつも落ちてきました。
直感的に、昨日、尾岳で築島さんが採っていたハラグロハナムグリハネカクシより一回り小さい種だと解りました。

尾岳では2個体だけで、潰すのも躊躇われましたが、ここには沢山います。何度か叩いて、数十個体を確保しました。
また、ハラグロハナムグリハネカクシも少数ですが一緒にいました。

後日、♂交尾器も確認して、微小な黄白色の種はハラグロとは違うことを確信しました。今のところ、四国と本州の中国地方に分布するトクシマハナムグリハネカクシ Eusphalerum tokushimanum Watanabe et Yoshidaに似ていますが、この種は♂の腹節が黒く、♀は黄白色になるのに対して、下甑島産は♂♀共に、腹は黒ずみ、♂交尾器も微妙に違うようです。

(仮称)コシキハナムグリハネカクシ Eusphalerum sp. 14と呼ぶことにします。比較のために、トクシマハナムグリハネカクシやハラグロハナムグリハネカクシ(上甑島産)も並べてみましょう。微妙に違うのが解ると思います。

(コシキハナムグリハネカクシ♂、♀、♂交尾器背面、側面)
















(トクシマハナムグリハネカクシ♂、♀、♂交尾器背面、側面)















(ハラグロハナムグリハネカクシ♂、♀、♂交尾器背面、側面)












また、このコシキハナムグリハネカクシが多数集まっていた見慣れない花は、植物屋の小原さんによると、シマイズセンリョウだそうです。九州では近似のイズセンリョウの方が一般的で、シマイズセンリョウは九州南部(よくみかけるのは鹿児島県南部以南)から琉球にかけて普通にみられるそうです。

また、イズセンリョウの花期が4-6月に対して、シマイズセンリョウは3-4月で、より早い時期に咲くそうです。あるいは、このシマイズセンリョウの分布も甑島が北限かもしれませんね。ご教示いただいた小原さんに深謝いたします。

(シマイズセンリョウの花)

















林縁にカワラタケがビッシリ付いたサクラの立ち枯れがあったので、スプレーイングをしてみました。

(カワラタケが付いたサクラの立ち枯れでスプレーイング)
















残念ながら、ゴマフツツキノコムシ、マダラツツキノコムシ*くらいしか落ちてきませんでした。

それでも、この川沿いの林縁をひとしきり叩いて、採れた甲虫は以下の通り。黄色いゴマの様に見えるのが、コシキハナムグリハネカクシです。その小ささが解ると思います。

(瀬尾の観音滝で採れた甲虫)


















クロツヤメダカハネカクシ*、キュウシュウチビジョウカイ*、ハヤトニンフジョウカイ、キイロニンフジョウカイ、ホソヒメジョウカイモドキ、クギヌキヒメジョウカイモドキ、キベリチビケシキスイ、ベニモンアシナガヒメハナムシ、アミダテントウ、カワムラヒメテントウ、シロジュウシホシテントウ、クロフナガタハナノミ、ナガハムシダマシ、チャバラマメゾウムシ、ドウガネツヤハムシ、クワハムシ*、アカタデハムシ、サメハダツブノミハムシ、コマルノミハムシ、ダイコンナガスネトビハムシ*、フキタマノミハムシ、カシルリチョッキリ*、コシキオビモンヒョウタンゾウムシ、シラホシクチブトノミゾウムシ、エノキノミゾウムシ、クロトゲサルゾウムシ*などです。

(マダラツツキノコムシ、クワハムシ)
















(ダイコンナガスネトビハムシ、クロトゲサルゾウムシ)
















カワゲラやハバチなども多少採れました。

(カワゲラなど)















国分さんは、モンクチビルテントウ*、ナミテントウ、アカクビナガハムシ*、ツヤキバネサルハムシ、タイワンツブノミハムシ、キイチゴトビハムシを採られていましたが、ほとんど重複しないのが面白いですね。

アカクビナガハムシが今まで採れていなかったのが不思議です。キバネサルハムシは国内に4種いて、どこでも2-3種が重複して分布しますが、なぜか、甑島ではツヤキバネサルハムシしか見つかっていません。

(国分さんが採集した甲虫)
















築島さんは熱心にあちこち叩いて採集されていましたが、やはり、だいぶ違うものを採集されています。

(ビーティングをする築島さん)
















(築島さんが採集した甲虫)


















エグリゴミムシ、クリノホソヒラタハネカクシ、コシキハナムグリハネカクシ、カタモンマルハナノミ*、ミエコジョウカイ*、デメヒラタケシキスイ、ミヤマオビオオキノコムシ、アヤモンチビカミキリ、アカクビナガハムシ*、ドウガネツヤハムシ、マダラアラゲサルハムシ、クロウリハムシ、タイワンツブノミハムシ、オオアカマルノミハムシ、クロケシツブチョッキリ、タイワンモンクチカクシゾウムシ、ヒサゴクチカクシゾウムシなどです。

(エグリゴミムシ、オオアカマルノミハムシ)
















(築島さんが採集した雑虫)


















この場所は次回も調査すべき場所のようで、足場も良く、広い駐車場もあるので、ナイターをやってみたい感じもしました。

さて、11時になり、少し早かったのですが、山に入ると弁当を買う場所もないので、長浜までは走って、食堂を探して昼食をとることにしました。

頼みはフェリー乗り場の食堂でしたが、行ってみると定休日、月曜日休みは覚えておく必要がありそうです。

長浜では売店もなかなか見かけないので、甑島の観光案内パンフを見ながら、築島さんが電話して空いてる食堂を探してくれました。

その結果、海岸通りから一筋入った珈琲「やま想」が見つかりました。
駐車場は有りませんでしたが、近所の大通りはまあ勝手御免といった感じで、道脇に寄せて駐まれば問題なさそうです。

(やま想店内)
















山小屋風のこぢんまりしたお店で、奥さんが一人でやられていて、日曜日と水曜日はお休み、日替わりのおまかせ定食のみで、この日はメンチカツがメインの料理でしたが、けっこうボリュームがありました。これで一人880円。

(やま想店内でのお二人)
















食事を済ませてから、尾岳へ向かいます。

尾岳は、やはり寒くて、あまり虫は動いてなさそうなので、当初考えていたカミキリ等の材採りと、落ち葉篩をすることにしました。

(落ち葉を篩った林床)















帰宅してから簡易ベルレーゼで抽出された甲虫は次の通り。

(尾岳の落ち葉から出た甲虫)


















エグリゴミムシ、コウセンマルケシガムシ、ツノフトツツハネカクシ、コシキコバネナガハネカクシ、ヒコサンコバネハネカクシ、ヤマオオトゲアリヅカムシ、ヒメデオキノコムシ、ムネクリイロボタル(幼虫)、オバボタル(幼虫)、チャイロセマルキスイの近似種、クリイロムクゲキスイ*、フタモンヒメナガクチキ*、チビヒサゴゴミムシダマシ、クロテントウゴミムシダマシ、オチバゾウムシの一種、コブマルクチカクシゾウムシ、ヒサゴクチカクシゾウムシ、オチバキクイゾウムシなどが抽出できました。

残念ながら、大部分は1982年に尾岳の落ち葉から出てきた種ばかりでしたが、下甑島固有のコシキコバネナガハネカクシと、固有種と思っているチャイロセマルキスイの近似種が採れたのは幸運でした。

(コシキコバネナガハネカクシ、ヤマオオトゲアリヅカムシ)
















(チャイロセマルキスイの近似種)
















本当は、昨日行った廃道林道の先、左手の鞍部に入った発達したシイ林で篩をし、ライトFITも試したかったのですが、膝痛で躊躇しているところ、築島さんがその役を引き受けてくださいました。築島さんにはライトFITを4基ほど設置して貰いました。

(尾岳のシイ林)





















(尾岳のシイ林へのライトFITの設置)





















落ち葉の方も採ってきてくださったので、こちらも後日抽出しました。

(築島さんが採ってきた落ち葉から出た甲虫)























築島さんが採ってきてくれた落ち葉からは、個体数・種数共に少なかったものの、ヒラタセスジハネカクシが沢山と、コシキコバネナガハネカクシ、アカセミゾハネカクシ、マドボタルの一種(幼虫)、クビカクシゴミムシダマシ、ヨツボシゴミムシダマシ*、オチバゾウムシの一種、サタアナアキゾウムシ*など、今坂の落ち葉とは大分違ったメンバーが出てきました。

(ヒラタセスジハネカクシ)
















このうち、マドボタルの一種はまだ、幼虫でしか確認されていないので、種は確定できていません。

(サタアナアキゾウムシ)
















特に興味深いのは、サタアナアキゾウムシで、九州本土に普通にいるチュウジョウアナアキゾウムシに良く似ていますが、より細長く、上翅の斜めの黄色毛の紋の位置がより後ろで、前腿節の歯状突起が細長いので区別できます。

従来の分布は九州(佐多岬)、伊豆御蔵島、トカラ中之島ですから、下甑島は北限になると思います。

さて、次に下甑島の西海岸の探索です。
西側へ降りるとすぐ分岐が有り、右側へ進むと山腹に集落が出てきました。このあたりで標高350m程度、コンクリートの建物や住宅がいくつもあり、急峻でほとんど耕作地もなさそうなのに、何でこんなところに・・・という感じです。

地図で確認すると、内川内という集落で、自衛隊関連の人も住んでいるようです。

木が比較的大きく、眺めの良いナイタースポットにして良さそうな場所も何カ所かありましたが、自衛隊基地も近いことから、ライトの光を見とがめられそうです。

仕方が無いので、ナイター適地などを探しながら、標高350m前後の等高線沿いに走る林道を南下します。

今日の天気予報では夕方から雨ということなので、途中の林や地形を見るだけで先へ進みます。
37年前には、瀬々野浦の手前標高300m付近に小規模な伐採地が有り、尾岳に次いで色々な種が採れた採集ポイントでした。しかし、何処にあったものか、まったく見当も付きませんでした。

ともかく瀬々野浦の海岸まで行くことにしました。
集落の横を川が流れ、海岸にはごく狭い砂地の浜がありました。

漁港の正面に聳える奇岩が観光スポットのナポレオン岩だそうで、ナポレオンの帽子から連想した命名と思われます。

(瀬々野浦の漁港とナポレオン岩)
















この地は風が相当強いのか、岩肌にはトベラやタイミンタチバナの矮小木がベッタリとへばり付くように被っています。あるいは、こんな場所特有な虫が・・・と思って少し叩いてみましたが、低温と強風もあり、ほとんど虫は落ちてきませんでした。

築島さんが、ごく狭い範囲にある砂浜で、粘って虫取りをしていたので、何かいるのかもしれないと国分さんと参加してみました。

石起しをしてみると、朝一に探索した手打の浜より、よほど沢山の虫がいます。
ここから、本気モード全開、砂地にへたり込んで石を起こしていきます。

採集できたのは次の写真の虫達です。なお、画面上部のアカクビナガハムシ*、クワハムシ*、ホソヒメジョウカイモドキなどは道横の茂みから落ちてきたものです。

(瀬々野浦の浜で採れた甲虫)





















砂浜ではオオスナハラゴミムシ、トゲアトキリゴミムシ、ゴモクムシダマシ、コスナゴミムシダマシ、ヒメカクスナゴミムシダマシを採集しました。

これらの種は、アカアシコハナコメツキを除くと、元々砂浜にいる種というより、畑や荒れ地・裸地などにいる種です。

国分さんは、以上の他に、コアオマルガタゴミムシ*、キボシマメゴモクムシ、クギヌキヒメジョウカイモドキを採集されていました。キボシマメゴモクムシは既に記録されていますが、甑島は北限です。

(キボシマメゴモクムシ)
















築島さんはさすがに後から加わった二人より多くて、上記の物に加えて、ナガヒョウタンゴミムシ、ウスアカクロゴモクムシ、ハマベエンマムシ、ツヤケシヒゲブトハネカクシ、ハマベオオヒメサビキコリ、ハマヒョウタンゴミムシダマシ、ヒメホソハマベゴミムシダマシ*、トビイロヒョウタンゾウムシを採集していました。

(築島さんの採集品)

















築島さんが石を起こしながら、慌てて虫を押さえているので、何かと思ったら、アリヅカコオロギの一種だそうです。それで、次にアリヅカコオロギを見つけた時、築島さんを呼んで採ってもらいました。

(アリヅカコオロギの一種とホスト?のアリ)





















他にも面白そうなナガカメムシ、ツチカメムシ、ハサミムシなども採られています。

(ナガカメムシなど)
















まだ、何とか空が保っているので、次に、片野浦に行くことにしました。

片野浦には(下甑島としては)結構大きな川が流れていました。
築島さんは、前回の下見でここの川はチェックしていなかったということで、是非、ふんどし流しでヒメドロムシを採集したいとの希望です。

今にも降り出しそうな天気で、今日はもうここまでと思ったので、「気が済むまでやったら」とOKしました。
待っている間、ちょっと付近を叩いてみるかとビーティングネットを取り出そうとしたら、いきなりポツポツと雨が降って来ました。

予報より少し早かったですが、「雨ならしかたがない」とばかり国分さんと車の影で雑談をしながら待ってましたが、1日の疲れもピークに達しており、雨もどんどん強くなってきます。

とうとう雨が本降りになりましたが、それでも築島さんは帰ってきません。
川の水も多少増えだしたようです。

結局、小一時間して築島さんは戻ってきましたが、「個体数が少ないけれども3種くらい採れたみたい。1種はどうも、見慣れない感じですが・・・。」とのこと。

体長1-2mmが主力のヒメドロムシを、裸眼でそこまで見えるとは・・・若さは素晴らしいです。

結局、雨も本降りになり、ここで今日の採集はお終いにして、宿のある手打へ向かいました。
片野浦から山手へ上がると、立派な幹線道路が通っていて、手打まで、あっという間にたどり着きました。

昨日は持参のカップ麺等で済ませたので、今日は焼き肉等、肉類や蒲鉾類、缶ビールをスーパーで調達し、全て築島さんの賄いで食事を済ませました。

その後、目がくっつきそうになるまで、採集物をソーティングし、それぞれ四角紙に並べ、疲れ果てて寝ることにしました。