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昆虫掲示板 : 2017年のハナムグリハネカクシ探索 1

投稿者 トピック
imasaka
管理人
  • 登録日: 2006-8-2
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2017年のハナムグリハネカクシ探索 1
2015年から始めたハナムグリハネカクシ類の探索も3年目になります。

2015年は地元・九州北部各地で採集した成果と、従来の九州内各地での自身の採集品をひっくり返して調べ、九州産として10種を報告しました。

今坂正一, 2016. 九州産ハナムグリハネカクシ類(予報)-2015年のハナムグリハネカクシ類探訪-. KORASANA, (84): 35-48.

2016年は、各種の発生時期、標高、集まる花などを特定しようと早春から採集を始めたのですが、自身が体調を崩し、そのほか諸々の家庭の事情で、果たせませんでした。

その代わり、私のホームページを見て、ハナムグリハネカクシ類に興味を持って下さった愛媛の越智さんが、地元・石鎚山系の探索を思い立ち、結局8種を採集して届けて下さいました。

結果、
越智恒夫・今坂正一, 2017. 四国石鎚山周辺のハナムグリハネカクシ類採集記. KORASANA, (85): 26-38.
として、報告しました。

興味深いのは、九州の10種と四国の8種のうち、共通種と思われるのは、ハラグロ、キイロ、キュウシュウの3種のみで、九州の7種と四国の5種は、それぞれその地域のみでした。

この結果、2年間で確認しただけでも、四国と九州でハナムグリハネカクシ類が15種も見つかったわけです。

今年は、九州と四国でさらに探索の場を広げながら、中国地方の友人にも頼んで探索していきたいと考えています。

さて、2017年度、最初のハナムグリハネカクシとの出会いは、3月16日、前のトピックでお知らせしたキュウシュウツチハンミョウが出現した枡形山のクヌギ林脇(標高450m)のアセビの花でした。

(枡形山のアセビの花)

















一昨年、大分県牧ノ戸峠のアセビの花で採集した覚えがあったので、試しに掬ってみたところ、数頭のキュウシュウハナムグリハネカクシが落ちてきました。まだ、気温5℃、曇天と、天気も良くない中でも、この虫は活動していました。

(キュウシュウハナムグリハネカクシ)
















次に、今年、久留米昆の採集例会の場所に選ばれた奥八女の釈迦岳の下見に出かけた3月28日、山頂直下(標高900m付近より上)はこの冬最後の冷え込みで積雪が有り、峠への直登コースは通行できませんでした。

それで、広域林道を通って竹原峠トンネルの方へ迂回し、大分側から峠に回りました。

途中、これも一昨年、サクラとドウダンツツジでハナムグリハネカクシ類を採集した、トンネル手前の公園(標高約800m)を探索したところ、残念ながらまだ花はなく、仕方なく林縁を叩いてみたところ、思いがけずキュウシュウハナムグリハネカクシが落ちてきました。

よくよく見ると、ヒサカキの花が咲いています。

(ヒサカキの花)
















これを叩いてみると、キュウシュウが無数にいます。
なんだ、ヒサカキで良いのか、と拍子抜けです。

ヒサカキなら、低山地の下生えに、どこにでも無数にあるし、花を探して彷徨する必要はまったく無くなります。
これは、今年の第一のポイントです。

ということで、4月1日、今度は地元・高良山の奥の耳納山(標高400m)でヒサカキを叩いてみました。

(耳納山のヒサカキの花)




















場所によって多少はありますが、大部分はハラグロハナムグリハネカクシで、キュウシュウ(左下端の6個体)も多少混じっていました。

(耳納山のヒサカキの花にいたハナムグリハネカクシ類)




















昨年まで、シキミと誤認していたクロキも満開で、こちらにもハラグロが多少いましたが、ヒサカキの方が圧倒的に個体数が多いようです。

(クロキの花)























枡形山(標高450m)まで標高を上げても、ヒサカキにはハラグロが主力で、キュウシュウは少数派でした。この標高までハラグロの発生が始まり、キュウシュウのピークは過ぎたようです。

その後平地の善導寺まで降りて、菜の花を掬うと、ここにはハラグロが少数いました。

4月4日には、昨年果たせなかったツクシハナムグリハネカク Eusphalerum tsukushiense Watanabe(基産地は脊振山の福岡市側曲淵)の探索に、脊振山系に出かけました。

まず鳥栖市の河内ダム(標高200m)から始めます。

(河内ダム)

















サクラが満開で、叩くと、ハラグロが少し落ちてきました。

(ビーティングネット上のハラグロ)















しつこく叩いてやっと、キュウシュウ1♀が落ちてきました。

















見方を変えて、菜の花を叩いてみると、ハラグロはかえってこちらの方が多くいます。
しかし追加はなさそうで、先を急ぎます。

鳥栖市と福岡県那珂川町との県境になる大峠(標高545m)手前で、ヒサカキを叩いてみました。

(大峠手前のヒサカキ)
















キュウシュウのみ無数にいます。

(キュウシュウ)



















九千部山(標高847m)山頂直下のヒサカキにもやはりキュウシュウだけがいました。

どうも、高いところはまだ、キュウシュウだけのようなので、那珂川町の方に降りることにしました。

南畑ダム(標高245m)の周辺にサクラの花を見つけたので採集してみました。

(南畑ダム)

















サクラにはキュウシュウがいましたが少なく、林縁をビーティングしながら探索してみました。

日陰のヒサカキを見つけて執拗に叩いたところ、キュウシュウに混じって、黒いのと、黄色いの、それぞれ1個体だけが見つかりました。

帰宅して、解剖して検鏡してみたところ、黒いのはサイゴクハナムグリハネカクシ♂

(サイゴクハナムグリハネカクシ♂)
















(♂交尾器、左:背面、右:側面)
















黄色いのはツクシハナムグリハネカク♀と思われました。

(ツクシハナムグリハネカク♀)
















このツクシハナムグリハネカクについては、今坂(2015)において、最後までサイズその他の点から、キイロハナムグリハネカクシとの異同について確信が持てず、暫定的に処理したのでした。

しかしながら、その後、広島の秋山さんから、自宅周辺で採集された多数の広島産キイロハナムグリハネカクシを送っていただいて、この南畑ダム産♀との差異を確実に把握することが出来ました。
2種の♀を並べてみましょう。

(左:ツクシ♀、右:キイロ♀)
















ツクシは、前胸の後縁は前縁よりやや幅広く、中央やや後ろ寄りで最大幅、後角は尖ります。
一方、キイロは、前縁が後縁より幅広く、中央より前で最大幅、後角は丸まります。上翅と腹部が後方でより幅広くなる点でも、体側縁がほぼ一直線になるツクシと区別できます。

広島産キイロハナムグリハネカクシ♂と、その交尾器も紹介します。

(キイロハナムグリハネカクシ♂、腹端は解剖で欠けています)
















(♂交尾器、左:背面、右:側面)
















広島産キイロハナムグリハネカクシを恵与いただき、生息環境についても教えていただいた秋山さんにお礼申し上げます。

その後、五ヶ山から坂本峠を通り、東脊振の九千部山広域林道沿いに、それぞれの場所で採集しましたが、見られたのは全てキュウシュウでした。

さらに、4月13日、前回雪で行けなかった奥八女の釈迦岳(標高1230m)に出かけましたが、杣の里(標高630m)のサクラの花でも、大分県日田市前津江との県境に当たる峠付近(標高1040m)でも、キュウシュウしか見つかりませんでした。

(杣の里のサクラ)


















意外だったのは、峠付近では花らしい花がなく、たまたま目に付いたフキノトウを揺すってみたところ、キュウシュウが無数に落ちてきたことです。

(蕗の薹に来たキュウシュウ、中央に2個体が見える)


















峠の手前では、普通虫の来そうにもないキブシの花にもキュウシュウが来ていましたし、実際、ハナムグリハネカクシ類にとっては、潜り込める花なら何でも良い感じがします。

確認した花を並べてみると、次のようになります。

キュウシュウハナムグリハネカクシでは、
アセビ、ヒサカキ、サクラ(ソメイヨシノ、ヤマザクラ他)、キブシ、蕗の薹、
昨年以前には、ウメ、ニワトコ、クロキ、ドウダンツツジ、ユキヤナギ、コブシ、ミツバウツギ、コアジサイ、コバノガマズミ、シダレザクラ、イロハモミジ、ズミ、

ハラグロハナムグリハネカクシでは、
菜の花、ヒサカキ、ニワトコ、サクラ(ソメイヨシノ、ヤマザクラ他)、イロハモミジ
昨年以前には、ノイバラ、ウツギ、ミツバウツギ、コアジサイ、コバノガマズミ。


さて、昨年4月2日に複数♂を採集して、ようやくその存在を確信したアラハダキイロハナムグリハネカクシ(仮称)ですが、もう少し数を稼いでおこうと、4月12日、昨年の採集ポイントである耳納山のサクラを掬いに出かけました。

今年は、平地のサクラの開花も1週間以上遅れているので、丁度良い頃合いかと思った次第です。

ポイントに着くと、サクラは多少散りかけながら満開の直後といった感じで、ハラグロハナムグリハネカクシが多数見られました。

(耳納山のサクラ)

















さらに、キュウシュウハナムグリハネカクシが少々と、待望のアラハダキイロハナムグリハネカクシも8♂5♀が見つかりました。写真右上の方、小型で黄色っぽいのがそうです。

(耳納山のサクラにいたハナムグリハネカクシ類)





















特に嬉しかったのは今回初めてアラハダキイロの♀が見つかったことです。
その♀は腹部まで黄色で、サイズと言い、色と言い、ルイスハナムグリハネカクそっくりです。

前胸と上翅の点刻が大きく、多少ザラザラした感じあること、全体に体色がやや濃いめであることがルイスとは違います。

(アラハダキイロハナムグリハネカクシ、左:♂、右:♀)
















特に♂交尾器はルイスとは全然似てなくて、基部が太く先が尖った中央片や、先端まで広がらず細い側片など、即座に見分けが付きます。

多分、ルイスとアラハダキイロは、分布帯の標高と発生期が異なっていて、同時に採れることはないだろうと予想しています。

(♂交尾器、左:背面、右:側面)
















その後、4月14日にも同地のサクラから2♂2♀、東に150mほど離れた場所のコブシの花(多分植栽されたもの)から、4月15日に2♀、4月16日に1♂が見つかりました。

(アラハダキイロがいたコブシの花)
















今のところ、高良山を含む耳納山地では、この3種でハナムグリハネカクシ類は全てではないかという感じがしています。

ここまでの3〜4月の、福岡県、佐賀県のハナムグリハネカクシ類の出現期を纏めておきます。

まず、3月中旬に低山地(標高3-400mの常緑樹林)でキュウシュウが出現し、徐々に標高を上げながら標高1000m付近では4月初旬から出現し、低山地では4月中旬まで活動する模様です。この間、ほぼ全山に普遍的に分布する感じがします。

次いでハラグロが、3月下旬頃から、より平地に近い低標高から出現を始め、こちらも徐々に標高を上げ、標高400m前後では4月中旬がピーク、一昨年の5月初旬、脊振山の標高1000m付近でも見つかっていますので、結構広く分布する模様です。キュウシュウと分布が重なりながら、やや遅く、やや下部に分布域を持つような感じがします。

どちらにしても、上記2種は、殆どの地域に普遍的に分布するようです。

アラハダキイロはほぼ1地点のみの観察で、良く解りません。

ツクシは標高250m〜1000mにかけて、サイゴクも同様、サイゴクは水環境(渓流やダム)近くの湿った場所でしか見つかっていません。ツクシも同様の場所でも見つかりましたが、一昨年の英彦山では日当たりの良い斜面で、本種のみが見つかるところがありました。

広島の低山地で多数見つかっているキイロは、彼の地では、あるいは北部九州のキュウシュウのように普遍的に分布する種のようです。

低山地〜ブナ帯の明るい落葉樹林に生息するものと想像していますが、福岡、佐賀では一昨年の竹原峠で1♂を確認しただけで、あまり見つかる感じがしません。

こちらでは、ツクシがキイロの置換種になるのか、それとも、実際はキイロも分布しているのか、解明が待たれるところです。