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imasaka
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  • 登録日: 2018-1-27
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KORASANA89号が発行されました
久留米昆蟲研究會より会誌 KORASANA 89号が6月15日に発行されました、2018年度としては3冊目になります。

総頁223ページの大冊ですが、ページに含まれていないカラー図版などが28枚(裏地は白)なので、実質56ページプラスの278ページ分の厚さです。紙質とカラーページもグンとグレードアップしました。

事務局では希望される方にそのKORASANA 89号を3500円で頒布しておりますので、その内容について紹介したいと思います。

KORASANA 89号をご希望の方は、このホームページ左上の「おたより」をクリックして申し込まれるか、あるいは直接、事務局 國分謙一 kokubu1951@outlook.jpまでお申し込みください。

KORASANA № 89. 2018
目 次

今坂 正一・齋藤 正治・築島 基樹・江頭 修志[ 2017年に釈迦岳で採集した甲虫類 ]・・・1
今坂 正一・城戸 克弥[ 2016年以前に採集した釈迦岳の甲虫類 ]・・ 93
今坂 正一 [ 福岡県八女市日向神ダム周辺で採集した甲虫類 ]・・111
佐々木 公隆[ 2017年 福岡県八女市矢部村 釈迦岳の蛾類調査報告 ]・・121
國分 謙一・吉美 信一郎・今坂 正一 [ 八女市矢部村釈迦岳の蝶 ]・・159
坂田 裕明・今坂 正一[ 中学生時代に釈迦岳で採集した昆虫 ]・・166
司村 宜祥・今坂 正一[ 2017年に採集した釈迦岳のカゲロウ目・カワゲラ目・ヘビトンボ目・トビケラ目]・・・・・・・・・ 171
上森 教慈・三田 敏治・今坂 正一[ 釈迦岳のハチ類(ハバチ類・有剣ハチ類) ]・・ 174
田畑 郁夫 [ 八女市矢部村御側上流?釈迦林道のハバチ類と関連情報 ]・・177
伊藤 玲央・今坂 正一[ 釈迦岳のカメムシ類 ]・・・・・207
今坂 正一 [ 2017年に釈迦岳で採集したバッタ類ほか ]・215
祝 輝男・今坂 正一[ 釈迦岳のシリアゲムシ目(長翅目)とハエ目(双翅目) ]・・・・ 219

以上12編です。

(表紙)
































表紙解説

右上の写真は、釈迦岳の大分県側山頂にある国土交通省釈迦岳レーダ雨量観測局から、福岡県側の山頂(三角点)への眺望です。車の上のピンクのものは自作のカーネットです。

この写真から反時計回りに、釈迦岳で得られた興味深い4種の昆虫と、採集品から考えられる釈迦岳のファウナの特徴を表現するための図を並べてみました。
まず、ハバチ科ハムグリハバチ亜科の1種 Kihadaia sp. ♂です。2007年6月11日、八女市矢部村釈迦林道での田畑さんによる第1回目の調査で1 ♂が得られたのみで、それ以降、追加個体は全く採れていません。本属Kihadaia は本州産の模式種rufithoraxのみが知られていましたが、この個体はそれとは異なる未知の種と考えられます。

次は、ハバチ科ハバチ亜科のアシキイロハバチ(キアシコシアカハバチ)Conaspidia singularis ♀です。本種も前種と同日に1 ♀が得られたのみで、それ以降採れていません。従来知られた分布は、ロシア極東、北海道(?)、本州(石川、山梨、兵庫、岡山の4県のみ)で、九州の分布が知られて
いなかった稀種です。

本地域の調査では、両種のように、1回は得られてもその後追加個体が得られない稀種が多いようです。詳細は田畑さんの報文(177ページ)を参照してください。

次のカラー地図は釈迦岳周辺の3D地図です。国土地理院のホームページから拝借しました。緑が平野部で褐色が山地ですが、思った以上に、釈迦岳と英彦山の間に断絶があるようです。これを見ながら釈迦岳の昆虫相についての考えが膨らんでいきます。

黒いゴミムシはヌレチゴミムシの一種 Apatrobus sp.です。九州には3種のApatrobusが知られていますが、そのどれとも違うようです。特に近傍の英彦山に分布するヒコサンヌレチゴミムシ Apatrobus hikosanusと違うと言う見解は注目されます。

次の九州地図は分化線の模式図です。緑の部分は平地、黒っぽいのが山地の部分です。先の3D地図での印象通り、釈迦岳と英彦山で別(亜)種となる種群がいくつか見つかっています。こちらは今坂ほかの報文(1ページ)の最後の方に蘊蓄を傾けています。

最後は、ケブカヒメカタゾウムシ Arrhaphogaster pilosaです。北海道、本州(千葉・東京・神奈川・静岡伊豆半島東部・長野・石川)、伊豆大島から記録され、石川県より西では見つかっていませんでした。その後、ピットフォールトラップでも採集されており、後翅が退化していることもあって、地表を徘徊しているようです。

ということで、表紙に本号のキモの一部が表現されています。

目次に添って、報文の内容を紹介します。

まず、

1. 今坂 正一・齋藤 正治・築島 基樹・江頭 修志, 2017年に釈迦岳で採集した甲虫類.: 1-92.

この報告は、2017年の採集会を含む釈迦岳の甲虫の採集記録で、2017年1年間に著者等が釈迦岳で採集した甲虫類84科1066種について述べています。

釈迦岳に実際に出かけて地図を確認すると、県内で最も高いと思っていた英彦山(標高1199m)より標高が高く(1231m)、つまりは福岡県下での最高峰ということになります。

(採集地点)

































また、九州山地の多くの山でシカの食害による下草やクマザサ等、森林の林床植生が危機に瀕しているにもかかわらず、釈迦岳では未だほとんどシカ害は感じられず、スズタケもまだ健在です。

ほぼ完全な形で残っている筑後地方のブナ帯のファウナをできる限り調べておこうというのが今回の釈迦岳調査の動機です。

採集地点は標高が高い方から低い方に順に並べ、1と2が大分県側、3以降が福岡県側です。

採集場所の写真、トラップ等、参加した会員等も掲載されています。

(採集状況)




















種リスト部分には、新しい試みとして、各種注目すべき種の白黒写真を挿入してみました。このため、図示した総種数は103種になり、特に重要と思われる44種については文末のカラーの図版にしています。

(リスト1)























(リスト2)



















(リスト3)





















(2017年採集釈迦岳産図版)






























































また、本報告の特徴として、種リストの提示のみに留まらず、得られた種全体について、可能な範囲での種々の考察を繰り広げていることが上げられます。

確認された種のうち、ヒメチャチビヒョウタンゴミムシ 、ニセキノカワハネカクシ、アカチャモンキノコハネカクシ、シバタマルクビハネカクシ、ツヤヒラタアリヤドリハネカクシ、ニセツヤヒメコメツキダマシ、ニセデオネスイ、オナガヒメハナノミ、ケブカヒメカタゾウムシ、アシブトゾウムシの10種は九州初記録と思われます。

2017年1年だけで84科1066種を確認できましたが、このうち、最も多くの種が確認できたのはハネカクシ科(134種)で、次いでハムシ科(121種)、ゾウムシ科(92種)、オサムシ科(75種)、コメツキムシ科(57種)、ケシキスイ科(44種)、カミキリムシ科(43種)、コガネムシ科(41種)、ゴミムシダマシ科(28種)、コメツキダマシ科(26種)、ジョウカイボン科(26種)、テントウムシ科(25種)、オオキノコムシ科(24種)、タマキノコムシ科(22種)、ハナノミ科(22種)、ヒゲナガゾウムシ科(14種)、エンマムシ科(13種)、タマムシ科(13種)、ナガクチキムシ科(12種)、チョッキリゾウムシ科(12種)、ツツキノコムシ科(10種)と続きます。

採集地点ごとの種数は次の通りです。

(採集地点ごとの種数)













地点ごとの共通種等を数え、その共通点についても考察しています。

また、採集方法ごとの種数も数えてみました。

(採集方法ごとの種数)









採集方法ごとの種の共通性についても論じています。

種数と個体数の経年変化も調べてみたところ、従来、九州の低地で感じていた経年変化とは、釈迦岳のブナ帯ではだいぶ違うことが明らかになりました。

(3峠付近での種数の経年変化)















調査の結果、確定的ではありませんが、釈迦岳を含む奥八女の山地に固有な種と亜種の存在が、クローズアップされました。

それに伴って、近隣の英彦山山系や、九重山系とのファウナの違いが問題となってきたので、その解析の方法として、「分化線」の手法を導入して考えてみました。

(九州本土の分化線)























(釈迦岳周辺の分化線)


















さらに、各地のファウナ比較の手法として、分化型による比較も行いました。
その結果、釈迦岳は、従来、今坂が解析してきた長崎県各地よりは、数段上の、九州の山地帯としてのベイシックなファウナであり、人為的な影響が少ない原始ファウナに近いと言うことが明らかになりました。

2. 今坂 正一・城戸 克弥, 2016年以前に採集した釈迦岳の甲虫類. 93-110.

2016年以前にそれぞれが釈迦岳で採集した甲虫50科429種を記録したものです。

特に城戸さんは、2000年以前からかなり足繁く釈迦岳に通われており、既に別報告で240種ほど記録されています。

それらに掲載しきれなかった分と、今坂の以前採集した分をまとめたものです。クロホソコバネカミキリなどのカミキリ類を初めとして、最近は、殆ど見られない、あるいは、ごく個体数が少なくなった種などを含んでいます。

(2016年以前の釈迦岳産図版)


































3. 今坂 正一, 福岡県八女市日向神ダム周辺で採集した甲虫類. : 111-120.

日向神ダムは釈迦岳の麓標高300m付近に位置します。釈迦岳採集の行き帰りに、ササッと採集しただけですが、釈迦岳では採れない種が半数程度含まれています。

その原因が標高の差なのか、植生の差なのか、または、人為的環境と原生林に近い環境との差なのか、それとも、水環境と山林環境の差なのか、色々な原因が考えられます。

ということで、別報告にしてみました。

確認された種の中で、最近の河川と水辺の国勢調査ででよく話題に上がる種なども含まれていたので、近似種との区別も含めて解説してみました。

(日向神ダムのコウチュウ図版)



































4. 佐々木 公隆, 2017年 福岡県八女市矢部村 釈迦岳の蛾類調査報告. : 121-158.

2017年度に採集した種と文献記録など、釈迦岳産の蛾552種が記録されています。

これまで多数の福岡県未記録種が記録されており、特色として、冷地性の蛾類が多種生息しているそうです。

カトカラ類では、シロシタバ、ベニシタバ、エゾシロシタバ、ヨシノキシタバなど8種(大分県側で記録されたアサマキシタバを含めると9種)が記録され福岡県では英彦山に次ぎ多いようです。

また、南方系種としては偶産蛾が多数見られ、キマダラフサヤガ、シロスジクロホソヤガ、クロモンシタバ、コヘリグロクチバ、オオルリオビクチバ、マエジロアカフキヨトウ、アシブトクチバなどが確認されているようです。

今回の目玉は次の種です。
オビグロスズメ、コエビガラスズメ、ハネブサシャチホコ、フタモンキニセノメイガ、モモイロキンウワバ

灯火に飛来した蛾の生態写真が多数掲載されており、カラー図版1ページ(14種)、白黒写真9ページ(135種)の計149種が図示されています。

(蛾の生態写真)


































5. 國分 謙一・吉美 信一郎・今坂 正一, 八女市矢部村釈迦岳の蝶. : 159-165.

2017年に釈迦岳で記録されたチョウ52種が記録されています。調査範囲は大杣公園(標高550m)から山頂(標高1229.5m)までの範囲です。

確認できたのはセセリチョウ科9種、アゲハチョウ科7種、シロチョウ科3種、シジミチョウ科9種、タテハチョウ科24種などで、本州や九州のブナ帯では、シカによるクマザサ類の食害により激減しているヒメキマダラヒカゲが健在で、多産するのが特徴です。

また、9月19日に採集されたアサギマダラは標識が付いており、その後の調べで、九重町田野で8月25日に放された個体であることが解りました。

(標識されたアサギマダラ)














6. 坂田 裕明・今坂 正一, 中学生時代に釈迦岳で採集した昆虫. : 166-170.
今から去る18年前の2000年、中学3年生の坂田裕明君は夏休みの宿題として、釈迦岳で採集した昆虫の標本を提出しました。それが福岡市市長賞を取り、本人の励みとなり、その後島根大学の生物系学科に進学し、現在は、鳥取県でも注目される若手農業経営者に躍進されています。

昆虫も若人に夢を与えるきっかけになることがあります。その意味で、当時の様子を書いていただきました。

(採集した昆虫類)


































7. 司村 宜祥・今坂 正一, 2017年に採集した釈迦岳のカゲロウ目・カワゲラ目・ヘビトンボ目・トビケラ目. : 171-173.

2017年に釈迦岳で採集されたカゲロウ目1科1種、カワゲラ目2科6種、ヘビトンボ目1科2種、トビケラ目10科14種の計23種の水生昆虫類が記録されています。

8. 上森 教慈・三田 敏治・今坂 正一, 釈迦岳のハチ類(ハバチ類・有剣ハチ類). : 174-176.

2017年に釈迦岳で採集したミフシハバチ科1種、コンボウハバチ科1種、ハバチ科2種、ヤドリキバチ科1種、セイボウ科2種、アリバチ科1種、アリバチモドキ科1種、ツチバチ科1種、スズメバチ科4種、アナバチ科1種、ギングチバチ科14種、ミツバチ科6種などが記録されています。

この中には、アムールギングチ、アイヌギングチ、サッポロジガバチモドキのように九州でこれまで報告されていなかった種が含まれています。

9. 田畑 郁夫, 八女市矢部村御側上流?釈迦林道のハバチ類と関連情報. : 177-206.

田畑さんが2007年以降、釈迦岳に通って確認したハバチ類50種ほどが記録されています。田畑さんによると、釈迦岳では、1回は得られてもその後追加個体が得られない稀種が多いようです。

九州産のハバチ類は、既存の図鑑類ではなかなか同定が難しいようで、この報告の中にも、属名だけで種名が確定されていない種が23種も掲載されています。このうちの大部分が新種の可能性が強いようです。

この様な理由で、カラー図版は13ページにも及び、部分図や同定のポイントなども図示されているので、九州産ハバチ類を調べるためには欠かせない報文と言えると思います。

(田畑図版1)


































(田畑図版13)

































10. 伊藤 玲央・今坂 正一, 釈迦岳のカメムシ類. : 207-214.

2017年に釈迦岳で採集したカメムシ目、21科113種が記録されています。

このうち、チャイロカスミカメ、ウスモンオオマダラカスミカメ、オオケナガカスミカメ、ハイイロヒラタカメムシ、オオイトカメムシ、ミヤマカメムシの6種は福岡県から初めて、

同じく、スケバチビカスミカメ、セダカマルカスミカメ、ウスモンオオマダラカスミカメ、オオケナガカスミカメ、クロアシナガサシガメ、カクムネヒメヒラタカメムシの6種は大分県から初めての記録となるようです。

福岡県での最高峰の名にふさわしく、山地性の種も多く得られたようです。

(釈迦岳で採集したカメムシ目図版)
















11. 今坂 正一, 2017年に釈迦岳で採集したバッタ類ほか. : 215-218.

2017年に釈迦岳で採集した5目17科37種を記録しています。
ゴキブリ目1種、カマキリ目1種、ハサミムシ目1種、アミメカゲロウ目2科2種、そしてバッタ目12科32種です。

このうち、9種は山地性でブナ帯などに多く見られる種のようです。

12. 祝 輝男・今坂 正一, 釈迦岳のシリアゲムシ目(長翅目)とハエ目(双翅目). : 219-223.

2017年に釈迦岳で採集したシリアゲムシ目1科3種、ハエ目7科17種を記録しています。

分布域が限られるため原記載以降、記録の少ないマエフタスジトゲシリアゲをはじめ、両目共に分布記録の少ないグループなので、重要な報告と思われます。
KORASANA 89号には以上12報文を掲載しています。

久留米昆蟲研究會では、今年度はKORASANAを3冊、合計500ページ超となる会誌を発行することが出来ました。

次年度も会員からの原稿を、無制限に掲載する予定です。
昆虫に関連する記事であれば、九州産に限らず、何でも結構です。

発表する機会や会誌が見当たらない虫屋・研究者の皆さん、久留米昆に入会すれば、いくらでも発表できます。

奮って入会し、原稿をお寄せ下さい。

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