今坂正一の世界
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大分県で採集した興味深い甲虫 (1989-1996)

今坂正一・三宅 武

 昨年、今坂・三宅 (2008) として2007年に大分県内で採集した甲虫のうち、興味深い種について報告した。今坂は、1979年以来、時に応じて大分県内で採集を繰り返しているが、年々採集品が溜まりながら、今までほとんど記録もせず、詳細に整理をしていなかった。昨年の報文をきっかけとして、過去の標本を見直し、必要なものは記録することにした。
 その中で、とりあえず整理が出来た1989-1996年分について、大分県内の記録が見られない種、あるいは記録が少ない種、または、最近、新しい知見が得られている種についても報告しておきたい。前報同様、必要に応じて、今坂 (採集者名を省く) 以外の採集品の記録も加えたが、それらについては、採集者名を明記した。
 いつもゾウムシの同定等でお世話になっている森本 桂九州大学名誉教授、的場 績氏(和歌山県立博物館)、ハムシの文献でお世話になっている南 雅之氏 (武蔵野市)、貴重な標本を恵与いただき、あるいは、記録の公表を委ねて頂いた阿比留巨人氏 (長崎市)、佐々木茂美氏 (日田市) にもお礼申し上げる。
 文献記録については、基本的に、大分県内は三宅が、それ以外は今坂が探索したが、大分・福岡・佐賀・長崎県以外の九州内の記録 (特に熊本県産) には、かなり抜けているものがあると思う。この点はご容赦いただき、ご存じの方はご教示いただければ幸いである。
 なお、採集地名は2度目から、簡略に示した。

<大分県で初めて記録される21種>
1.ウンゼンチビゴミムシの近似種 Epaphiopsis sp. (near E. unzenensis) (写真1)
 由布市庄内町黒岳かくし水, 3exs. 5. VII. 1994. 落葉下より。本種を含むEpaphiopsis属のゴミムシは、北海道から屋久島までの本土全域に分布し、地下浅層や落葉下に見られる。各地で分化していて、側所的にそれぞれ1種が分布している。
 九州産はこのうち、Pseudepaphius亜属に含まれるウンゼンチビゴミムシ Epaphiopsis unzenensis (Jeannel) (島原半島: 写真2) と、ハギチビゴミムシ Epaphiopsis punctatostriata (Putzeys) (山口〜英彦山: 写真3) が知られている。また、多良岳 (ハギチビに似る) や九州脊梁 (ウンゼンチビに似る) でも、それぞれ、種分化しているようであるが、研究・記載はなされていない。
 黒岳産は、より小型で上翅は短くて丸く、どちらかというと、となりの山塊である英彦山産 (ハギチビゴミ) よりは、九州脊梁産やウンゼンチビゴミムシに似ている。
 大分県内では数カ所でEpaphiopsisが得られているが、分類学的に正確な同定はなされていない。Epaphiopsis属については、本県も含めて九州全域について、早急な解明が期待される。
2.ニッコウミズギワゴミムシ Bembidion misellum Harold (写真4)
 黒岳男池, 2exs. 16. V. 1989. 河原の石起しで得た。山地性で、上翅が短く、丸いのが特徴。北海道、本州の分布が知られるだけで、九州の記録はない。
3.ニッコウハネスジキノコハネカクシ Carphacis nikkoensis Schulke (写真5)
 黒岳かくし水, 1ex. 12. VII. 1995. キノコより。本種は、従来,ハネスジキノコハネカクシ Lordithon striatus Olivier (北海道〜九州から記録,現在はCarphacis属に変更) とされていた種が、数種に分割されたうちの1種である。この処置により複数の種にハネスジキノコハネカクシの和名が使用されるという結果を招いたので、今坂・伊藤 (2006) において九州 (熊本県白鳥山) から記録した折りに、学名に因む上記の新称を提唱した。本種は本州と九州 (熊本) に分布する。
4.ホソクロチビジョウカイ Malthodes furcatopygus Wittmer (写真6, 7)
 豊後大野市祖母山障子岩, 1♂. 20. VI. 1995. 本種は小型のクロチビジョウカイ属 Malthodesに含まれる種で、♂の腹部末端節が先端が二裂するクギヌキ様 (写真7) の形をしていることで区別できる。基産地はMinogo, Onomichi (広島県) で、本州、九州 (福岡) の記録があるが少ない。
5.ソボムラサキジョウカイ九重亜種 Themus sobosanus M. Sato et Ishida ssp. (亜種未記載: 写真9)
 黒岳かくし水, 3♂♂. 5. VII. 1994. クリ花上より。本亜種は上翅が明るい紫色〜緑がかり、上翅は基部を除いて半分以上がヒメキンイロジョウカイのような黄褐色を呈し、触角と脛節・フ節の多くが黄褐色になる。九重山系で得られているのは今のところ全てこのようなタイプである。当初、黄褐色部の広いヒメキンイロジョウカイであると誤認していたが、♂交尾器の類似性から、ソボムラサキジョウカイの亜種的な個体群であることが判明した。
 ソボムラサキジョウカイ Themus sobosanus M. Sato et Ishida (写真10) は祖母山を基産地として記載された種で、上翅は濃い紫、触角と肢は黒色で、祖母山系以南の九州脊梁に広く分布する。
 一方、北九州亜種 ssp. kitakyushuensis Takakura (写真8) は、英彦山を基産地として記載された亜種で、上翅は青緑、本州産のアオジョウカイに酷似し、英彦山・脊振・多良山系に分布する。
 九重山系の亜種は、この2亜種に挟まれて分布しているわけで、大分県内に同種の3亜種が分布するのは興味深い。大分県内に2つ以上の亜種が分布する例は、セダカコブヤハズカミキリなどごく少なく、大分県の甲虫相を考える上で注目される。本亜種が、大分県に分布することは、既に、今坂 (2002a) で紹介しているが、データを伴う記録としては、今回が初記録になる。
6.ヒメシロニンフジョウカイ Asiopodabrus sp. 58 (未記載種: 写真11, 12, 13)
 黒岳男池, 1♂2♀♀. 21. VI. 1992. 葉上。本種は林縁の葉上など日当たりの良い場所に見られ、花にはほとんど来ない。生時は乳白色で、死ぬと黄色っぽくなる (写真11)。本種を含む小型のニンフジョウカイ類は、従来、Podabrus属として扱われていたが、Takahashi (2002) により、Asiopodabrus亜属が属に昇格させられて、属名としてAsiopodabrusを使うようになっている。
 本種はAsiopodabrusの中にあって、♂交尾器にメディアンフックを持つinexpectusグループに含まれ (写真12, 13)、キベリクロニンフジョウカイ Asiopodabrus inexpectus (Takahashi) に近い。九州 (佐賀・長崎・熊本) で記録されている。
 なお、九州産ジョウカイボン科については、今坂・大塚 (1996) に熊本県産の種までの検索と、背面頭胸部と♂交尾器の写真を載せている。多くはそれで同定できると思う。
7.ホソニンフジョウカイ Asiopodabrus fragilis (Nakane et Makino)
 黒岳男池, 3♂♂. 21. VI. 1992. 本種は低山地からブナ帯まで広く分布し、カエデなどの花上、新芽、葉上に多い。本種以降のニンフジョウカイ類は、全て♂交尾器に実効性のあるメディアンフックを持たず、macilentusグループに含まれる。本種の原産地は福岡県英彦山で、本州 (奈良、和歌山、広島)、九州 (福岡・佐賀・長崎・熊本) で記録されている。
8.チビニンフジョウカイ Asiopodabrus neglectus neglectus (Nakane)
 九重町牧ノ戸峠, 3♂♂5♀♀. 6. VI. 1990; 祖母山障子岩, 1♂. 20. VI. 1995. 花と樹葉上から採集。本種は本属でも最も小型の1種でかなり山地性。カシ帯の上部からブナ帯にかけて見られる。興味深いのは、森林の中では比較的濃色の個体が多いのに対して、草地や林縁では淡色の個体が多い。原産地は鹿児島県霧島山で、本州 (山口)、九州 (佐賀・長崎・熊本・鹿児島) から記録されている。
なお、神奈川県産は亜種 ssp. minus (Takahashi) として知られているが、多分別種。紀伊半島や対馬にもそれぞれ近似の別種がいる。
9.シロニンフジョウカイ Asiopodabrus sp. 48 (未記載種)
 九重町大船林道, 1♀. 16. V. 1989; 九重町九酔渓, 1♂. 25. V. 1996. 花上と樹葉上より。本種も生時は乳白色で、死ぬと黄色っぽくなる。先に紹介したヒメシロニンフジョウカイに良く似るがやや大きく、♂交尾器にメディアンフックを持たない。本州 (山口)、九州 (佐賀・長崎・熊本) で記録しているが、あるいは、カミコウチニンフジョウカイ Asiopodabrus kamikochianus (Nakane et Makino) にかなり近いものと言えるかもしれない。
10.コウゲンニンフジョウカイ Asiopodabrus sp. (未記載種: 写真14, 15, 16)
 九重町飯田高原, 10♂♂13♀♀. 16. V. 1989. 飯田高原のカシワの葉上と、瀬の本高原 (熊本県) のみで採集している。河川敷のみに生息するカワラニンフジョウカイ Asiopodabrus owarianus (Nakane et Makino) に似た小型で黄色っぽい種であるが、♂交尾器 (写真15, 16) はむしろ、チビニンフジョウカイに似る。本種は高原の草地〜カシワ疎林に適応した種かもしれない。初めて報告される種であるので、当然、大分県初記録である。
11.クリイロタマキノコシバンムシ Byrrhodes nipponicus Sakai
 黒岳かくし水, 1ex. 27. VII. 1996. 樹葉上より。本種はキノコに集まる球形のシバンムシの一種で、赤褐色、触角先端3節は、内側に三角形に突出する。本州、四国、九州に分布し、福岡・佐賀・長崎で知られている。
12.スギケブカサルハムシ Lypesthes itoi Chujo
 山国町魔林峡, 1ex. 28. IV. 1996. 樹葉上。ケブカサルハムシ Lypesthes lewisi (Baly) をやや小型にしたような種で、ニホンケブカサルハムシ Lypesthes japonicus Ohno にも良く似る。上翅会合部末端は抉られないのでこの2種から区別できる。スギ・ヒノキを食害することが知られおり、環境アセスメント調査のサンプルではしばしば見かけるが、データ付の具体的な記録は殆ど見ない。九州 (宮崎・鹿児島)、屋久島、トカラ列島に分布する。大分県は本種の北限記録となる。
13.キアシツブノミハムシ Aphthona semiviridis Jacoby (写真17, 18, 19, 20)
 飯田高原, 1♀. 11. V. 1993; 黒岳 2♂♂. 5. VII. 1994; 同 2♂♂. 23. V. 1995; 祖母山障子岩, 3♂♂4♀♀. 20. VI. 1995. 樹葉上。南・滝沢 (2005) は、Konstantinov (1998: 今坂未見) を引用して、従来、ツブノミハムシ Aphthona perminuta Balyとされていたもののうち、前・中肢が黄褐色のものを、改めて別種として区別し、東京都の山地から記録した。
 本種はChujo・Kimoto (1961) によりツブノミハムシのシノニムとして扱われ、木元・滝沢 (1994)もその考えを継承している。しかし、異論もあり、大野 (1966) は、本種が肢の色、前頭瘤や点刻、♂交尾器の形でツブノミハムシと区別できることを主張した。ホストとしてミツマタ・アカメガシワをあげている。肢の色は解りやすいが、前頭瘤 (写真19) や点刻、♂交尾器の付図は解りづらく、高倉・城戸 (1980) は「大野の解説にある特徴を持つものは見いだせなかった。」と述べている。しかし、高倉 (1984) では本種の鹿児島の記録などを引用している。
  このように、色々な変遷のある本種であるが、ブナ帯などで出現するやや大型で、前・中肢が黄褐色 (写真18: 個体により腿節は濃色) のものは、確かに別の種と思われる。♂交尾器腹面中央は高まるが、顕著な竜骨状にはならない (写真20)。
 一方、低地のノイバラなどに多いやや小型の個体群が真のツブノミハムシ (基産地は長崎) と考えられ、肢は濃色 (写真22) で、♂交尾器はやや短く、腹面中央に竜骨状の顕著な縦稜 (写真21) を持つ。同じ、黒岳 1♂1♀. 5. VII. 1994のデータで、ツブノミハムシも見られたので、高地では混生している可能性もある。
 なお、高倉 (1984) は、自刊ながら、それまでの九州内のハムシの記録を整理してあって、非常に有用である。以後の種についても、ハムシにおいては県の分布記録のベースとして用いた。
14.セスジトビハムシ Lipromela minutissima (Pic)
 黒岳かくし水, 3exs. 4. VII. 1994; 祖母山障子岩, 3exs. 20. VI. 1995. 樹葉上。黄褐色で細長く、上翅に点刻列を持つ。本州、四国、九州、対馬、壱岐の分布が知られているが、九州では福岡の記録があるくらいで、佐賀・長崎では見つかっていない。黒岳では牧場の廻りの林縁に多いようである。
15.ハッカアシナガトビハムシ Longitarsus nipponensis Csiki
 黒岳かくし水, 1♂. 5. VII. 1994. 林内の下草のスウィーピングで得られた。1.5mm程度の微小で褐色のLongitarsusで、ホストはヤマハッカが知られる。北海道、本州、四国、九州 (福岡)、対馬の記録があり、佐賀・長崎では得られていない。
16.キアシキスジノミハムシ Phyllotreta ochripes (Curtis) (写真24)
 九酔渓, 1ex. 25. V. 1996. コンロンソウ葉上より。九酔渓のコンロンソウには、他で見たことがないハムシやゾウムシが多く見られ、非常に興味深い。キスジノミハムシの仲間は、通常、上翅の中央に黄色い縦紋 (キスジ) を持つのでこの名があるが、本種ではそれが、前後に分断され小さいヨツモン状になっている。高倉 (1989) の示した図によって同定した。
 本種はKimoto (1966) に掲載され、本州、九州の分布が示され、同じく木元・滝沢 (1994) のシノニミックリスト (p335) にも掲載されているにもかかわらず、同書の本文中や検索表には説明が無く、不思議である。九州では福岡県の平尾台と久留米市高良山から記録されている。
17.チュウジョウナガスネトビハムシ Psylliodes chujoe Madar (写真25, 26, 27, 28)
 九酔渓, 2♂♂. 25. V. 1996. 本種もコンロンソウ葉上より。ナガスネトビハムシ属Psylliodesは触角が10節であることから全てのトビハムシ亜科の属から区別される。属内の検索表では、まず、頭頂に明瞭な点刻があるかどうかで、点刻が有る方は、上翅側片に顆粒状印刻と剛毛を持つナトビハムシと、上翅側片が平滑な群に別れる。後者はさらに、足が赤いベーリーナガスネトビハムシと、黒青色の群に別れる。黒青色のうち、頭頂の表面がほぼ平滑なチュウジョウナガスネトビハムシと、頭頂の表面がサメ肌状かシワ状の2種に別れる。
 本個体は、触角が10節であることから、Psylliodesであることは間違いないし、検索表ではチュウジョウナガスネトビハムシに落ちてしまう。しかし、木元・滝沢 (1994) の説明では、チュウジョウは4.5mmと本属では大型なのに対して、この個体は3mm足らず、前・中肢の第一フ節が大きく広がり (写真25)、♂交尾器も細身 (写真27, 28) で木元らの付図とは異なっている。
  それで、あるいは日本未記録の種かと思ったが、Takizawa (2005) がこの類の総説を書いているので確認してみた。解説ではチュウジョウナガスネトビハムシの基産地は英彦山、ホストはミツバコンロウソウ。体長は2-3mm、おまけに、掲載されている背面写真でフ節が大きく広がっているのが解り、♂交尾器の形も合うようなので、チュウジョウで良いと思う。南 雅之氏のご厚意で、Marder (1960) の原記載も見てみたが、♂交尾器の形が少し違うようにも見える。分布は北海道、本州 (宮城〜岡山)、四国、九州 (福岡・熊本・鹿児島)、対馬である。
18.イマサカアラハダトビハムシの近似種 Zipangia sp. (near Z. imasakai) (写真29, 30, 31, 32)
 飯田高原, 1♂. 17. VII. 1995. ほとんど採集時の記憶がないが、ヨモギトビハムシなどと一緒に採集していたので、草地のスウィーピングで得たものと思う。
 イマサカアラハダトビハムシ Zipangia imasakai Takizawa (写真33, 34, 35) は下甑島固有種で、1982年に渡島したおり、伐採地の林縁で採集して新種になった種である。この種が含まれるZipangia属には、日本産としてガマズミトビハムシなど6種が本土から琉球に分布しており、イマサカアラハダ (写真35) のみ、後翅が退化し、上翅の肩部は丸まっている。
  本種はイマサカアラハダに良く似ているが後翅がある (写真30)。♂交尾器は、側面から見た形(写真32) は良く似ているが、背面からは先端 (写真31) は尖って (イマサカアラハダは丸い: Takizawa, 1990より引用, 図33)、多少差がある。前頭隆起もイマサカアラハダ (写真34) が縦長なのに対して、本種 (写真29) は横長の三角形である。あるいは、本種群のうち、下甑島に閉じこめられた個体群がイマサカアラハダに分化したというような印象も受ける。日本未記録の種であることは確実である。
19.クワササラゾウムシ Demimaea mori Kono (写真36)
 九酔渓, 1ex. 25. V. 1996. 本種の採集状況も定かではない。本州ではクワの害虫と云うが、九州では具体的な採集データが付いた記録を見たことがない。タバゲササラゾウムシに似るが、上翅の黒い毛房は無く、オオクボササラゾウムシにも似るが後半の灰色横帯は無く、本種と同定した。北海道、本州、九州に分布する。
20.コバルトサルゾウムシ(仮称) Ceutorhynchus sp. (near C. filiae) (写真37)
 九酔渓, 2exs. 25. V. 1996. コンロンソウ葉上より。強いコバルト色の光沢がある。最初、ミドリサルゾウムシ Ceutorhynchus filiae Dalla Torreの色彩変異かと疑っていて、ある時、森本 桂先生に見て頂いたところ、「新種です」という返事で、そのまま何個体か差し上げた。しかし、その後も記載されていないようである。Ceutorhynchus属の種の中には、アブラナ科に集まるものが多く、ダイコンサルゾウムシに良く似た不明種も見つかる。
21.フタキボシゾウムシ Lepyrus japonicus Roelofs
 日田市筑後川, 2exs. 12. V. 1996. ヤナギ葉上より。本種は北海道、本州、九州に分布し、比較的大きな河川の河川敷に生えたヤナギから見つかるが、個体数は多くないようである。そのためか、大河川が殆ど無い佐賀・長崎からの記録はなく、福岡で記録されている。大分県では環境調査 (3河川とダム2か所) で得られているが公式な記録はないようで、そう言う意味で大分県初記録になる。

<大分県では記録の少ない45種>
  県内で、1〜数例の採集記録しか無い種を、以下に記録する。
22.サワダマメゲンゴロウ Platambus sawadai (Kamiya)
 黒岳男池, 1ex. 4. VII. 1994. 灯火に飛来した。山地の渓流に生息する種である。北海道、本州、四国、九州(福岡・佐賀・長崎・熊本)で記録され、大分県内では祖母山系尾平と藤河内 (堤内, 1998)で記録されているが、九重山系では初めての記録となる。
23.マルガムシ Hydrocassis lacustris (Sharp)
 黒岳男池, 2exs. 15. IX. 1995. ライトに飛来。常々、本種は山地渓流に住む稀種と考えていたが、低山であっても、渓流や源流域なら、比較的普通に生息する種であるらしい。渓流の淀みに浮いて溜まっている落葉や流れ藻などの中に見られる。北海道、本州、四国、九州 (佐賀・長崎) に分布し、大分県では飯田高原 (三宅, 2007) で記録されている。
24.キラチャイロコガネ Sericania kirai Sawada(写真38)
 黒岳男池, 1♀. 23. V. 1995. 樹皮下より。本種を含むSericaniaはコガネムシの中で数少ない地域性の強い種で、従来、国内から42種3亜種が知られていたが、最近、小林・藤岡 (2008) は、1新種を含めて、28種4亜種に整理した。近縁種が多く、特に♀の同定は困難であるが、本種に限っては、黒色で背面には緑色の金属光沢を持ち、解りやすい。本州 (青森〜山口)、四国 (愛媛)、九州 (福岡・大分・熊本)、隠岐と分布は広い。大分県内では黒岳で2例 (佐々木, 1981; 城戸, 1997)記録されているに過ぎない。
25.ナラノチャイロコガネ Proagopertha pubicollis (Waterhouse)
 飯田高原, 4exs. 16. V. 1989. カシワ葉上より。本種はコナラの林や河川敷などで見かけることもあるが、かなり少ない。北海道、本州、四国、九州 (福岡・佐賀・長崎・大分)、隠岐に分布し、大分県では黒岳 (今坂, 1988 ; 城戸, 1999) の記録がある。
26.クロコバネジョウカイ Trypherus nigrinus Brancucci (写真39, 40)
 牧ノ戸峠, 2♂♂. 6. VI. 1990. ヤナギ類の葉上より。九州産のコバネジョウカイ属 Trypherusには、現在、ニセキベリコバネジョウカイ Trypherus mutilatus (Kiesenwetter)、クロコバネジョウカイ、キベリコバネジョウカイ Trypherus niponicus (Lewis) の3種が知られている。このうち、♂の中腿節が著しく太くなるのはキベリコバネのみで、他の2種は目立たない。また、ニセキベリはほぼヤナギに依存し河川敷に限って分布する。本種は山地性で、体全体がかなり黒化するので、以上の特徴により区別可能である。Trypherusは雌雄共に腹節末端の形でも区別できる (写真40)。本州、四国、九州の分布が知られおり、大分県では原記載 (Brancucci, 1985) にMt. Kujuの記録がある。
27.キアシツマキジョウカイ Malthinus humeralis Kiesenwetter
 黒岳男池, 1♀. 12. VII. 1995. 樹葉上。ツマキジョウカイ属Malthinusは、一見、小型のニンフジョウカイ類に似るが、亜科が異なる。大あごの先端が二裂することで区別はし易い。同属のウスバツマキジョウカイ Malthinus nakanei Wittmerに似るが、より小型で、上翅は一様に褐色〜黄褐色。♂交尾器も異なり、本種がむしろ少ない。本州、四国、九州の記録があるが、近縁種と混同されている可能性があり、分布は明らかではない。大分県では中津市耶馬渓地方の環境調査のみ。
28.ホソニセヒメジョウカイ Lycocerus okuyugawaranus okuyugawaranus (Takahashi)
 大船林道, 1♂1♀. 16. V. 1989; 九酔渓, 3♂♂2♀♀. 25. V. 1996. カエデの花と樹葉上から得た。本種は本州、四国、九州に分布し、低山地からブナ帯まで見られるが、ヒメジョウカイなど近似種数種と同時に採集され、同定には♂交尾器を確認する必要があるなどやや難しいので、専門家以外の分布記録は少ない。大分県からは、near Kuro-dakeとKuju-san (どちらもOkushima, 2005) の記録がある。
 なお、従来、本種を含むAthemus属とAthemellus属に所属していた全ての種は、Okushima (2005)によりLycocerus属に所属が変更された。
29.ツユキクロホソジョウカイ Lycocerus tsuyukii (Takahashi)
 黒岳男池, 1♂. 13-17. V. 1995, 阿比留巨人採集; 九酔渓, 1♂. 25. V. 1996. 後者はカエデの周辺を飛翔していた個体。本種は本州、四国、九州、隠岐に分布し、低山地の谷間で飛翔しているのを見ることが多い。背面はほぼ全体黒色で、腹部が赤いことにより近縁種と区別できる。九州では福岡・長崎・宮崎県で記録があり、大分県からは、Kinun-kyo, Kusu-cho (Okushima, 2005) から記録されている。
30.クビアカジョウカイ Lycocerus oedemeroides (Kiesenwetter)
 黒岳男池, 2♂♂. 13-17. V. 1995, 阿比留巨人採集. 爪には付属物が無く、従来はAthemellus属に入れられていた。前胸が赤くて上翅が黒い種で、樹葉上に見られ、灯火に飛来する。大分県産を始め、九州脊梁など比較的標高の高い場所の個体は、上翅の立毛は黒褐色で、黒っぽく見える。一方、佐賀・長崎など西九州産は黒い上翅の上に金色の立毛を備え、茶色っぽく見える。低地から山地まで、早春から晩春まで比較的多く見られる。本州 (岐阜以西)、四国、九州に分布し、大分県では九重町大船山 (今坂, 1988) の記録がある。
31.キイロニンフジョウカイ Asiopodabrus ochraceus (Kiesenwetter)
 飯田高原, 2♂♂. 11. V. 1993; 魔林峡, 3♂♂3♀♀. 28. IV. 1996. きれいな黄色〜橙色。平地から山地まで、オープンな環境の優占種で、早春に日当たりの良い草地のノイバラ・スズメノエンドウなどの新芽や花に多く集まり、アブラムシ類を捕食する。かつての図鑑類ではチビクビボソジョウカイと呼ばれていた。長崎原産で、福岡・佐賀・熊本でも記録されている。大分県では九重町の長者原〜坊ヶつる・坊ヶつる〜大船山、黒岳、並石・錦雲峡・由布市由布岳の記録 (佐藤, 1975ほか) がある。
32.ササキニンフジョウカイ Asiopodabrus sp. 39 (写真41, 42, 43)
 飯田高原, 8♂♂7♀♀. 19. V. 1993; 黒岳, 1♂. 17. V. 1986. 佐々木茂美採集. 飯田高原ではカシワ葉上に比較的多かった。本種は広島・大分・佐賀・熊本の各県から記録した未記載種であるが、広島のものは別の種と思われ、北部九州の固有種のようである。ニンフジョウカイとしてはやや大型、前胸にクッキリと ( ) の形の黒紋を持つ。大分県内からは最近、日出生台 (今坂, 2005) から記録し、今坂・中村 (1993) でも飯田高原と黒岳産を報告しているが、具体的な採集データを示していなかったので、改めて記録した。
33.ニセクロマルケシキスイ Cyllodes dubius (Reitter)
 黒岳かくし水, 8exs. 15. IX. 1995. 夜間のキノコ。黒くて無紋の丸いケシキスイは、本種とクロマルケシキスイ Cyllodes ater Herbstがあるが、むしろ本種の方が一般的で多い。本種はより長い体形と上翅会合部付近に大小二通りの点刻があることで区別される。古い図鑑には後者のみが掲載されていたことにより、本種の記録は少ない。本州、四国、九州 (福岡・佐賀・長崎・大分)、隠岐で記録されており、大分県では黒岳 (高倉, 1987ほか) と、長者原〜雨ヶ池 (松田, 1996) の記録がある。
34.クロバチビオオキノコムシ Pseudamblyopus similis (Lewis)
 黒岳かくし水, 1ex. 27. VII. 1996. キノコより。頭と前胸が橙黄色で、上翅が黒色の小型のオオキノコには、スネビロオオキノコ、ホソチビオオキノコ、アカヒゲチビオオキノコなど何種か有るが、本種は体下と足が黄褐色で脛節先端が三角に広がり、小あご髭が二等辺三角形になるので区別できる。本州、四国、九州 (福岡・佐賀・長崎・大分) で得られているが記録は少ない。大分県では黒岳 (廣川・西田, 1995ほか) の記録がある。
35.カクモンチビオオキノコムシ Tritoma discaloides Nakane
 黒岳かくし水, 1ex. 21. VI. 1992. キノコより。かつては、その斑紋の類似性から、今坂も、中部以北に分布するヒシモンチビオオキノコと混同していた。本種は、最近、再認識されたので、九州 (佐賀・長崎・大分) の記録が知られる程度であるが、九州には広く分布するだろうと思う。大分県では黒岳 (城戸, 1993) の記録がある。
36.イツホシテントウダマシ Leistes decoratus (Gorham) (写真44)
 黒岳かくし水, 4exs. 27. VII. 1996. キノコより。黄褐色地に上翅では5つの黒紋を持つ綺麗な種で、キノコや落葉下から採集される。本州、四国、九州に分布し、福岡・大分では知られているが、佐賀・長崎では記録されていない。大分県では黒岳 (城戸, 1997) の記録がある。
37.ズグロツヤテントウ Serangium punctum Miyatake
 黒岳男池, 1ex. 23. V. 1993; 九酔渓, 1ex. 25. V. 1996. 樹葉上より。各地で見られるツヤテントウの頭を黒くしたような種。北海道、本州、四国、九州 (福岡・大分) に分布し、佐賀・長崎では記録されていない。大分県では黒岳 (高倉, 1984ほか) と、九酔渓 (今坂, 2008) の記録がある。
38.シロジュウロクホシテントウ Halyzia sedecimguttata (Linnaeus)
 大船林道, 2exs. 16. V. 1989. 樹葉上より。山地性のテントウで、前胸と上翅の側縁が上反する。北海道、本州、四国、九州 (長崎・大分) に分布し、福岡・佐賀では記録されていない。大分県では黒岳 (佐々木, 1981) の記録がある。
39.クロコキノコムシダマシ Pisenus rufitarsis (Reitter)
 黒岳かくし水, 3exs. 27. VII. 1996. 前報で記した様に、大分県内では黒岳で過去2例 (今坂ほか1980; 今坂, 2008) が知られるのみ。
40.ナガイホソナガクチキムシ Xylita nagaii Nakane (写真45)
 黒岳男池, 2exs. 12. VII. 1995. 褐色で無紋、長い体形で、触角は短い。九州 (大分・宮崎) の固有種で、大分県では傾山・北川ダム (堤内, 1999) の分布が知られている。
41.コクビボソムシ Macratria fluviatilis Lewis
 黒岳男池, 2exs. 4. VII. 1994; 同 6exs. 27. VII. 1996. 牧場周辺で林縁の樹葉上から得られた。本州、四国、九州に分布するが、九州では福岡・長崎 (平戸島)・大分で見つかっている程度で、山地性の種のようである。大分県では山国町毛谷村 (高倉, 1988) の記録がある。
42.オオクチキムシダマシ Elacatis kraatzi Reitter
 飯田高原, 1ex. 16. V. 1989. カシワの枯れ木から得られた。北海道、本州、四国、九州 (福岡・佐賀・長崎・大分) から知られ、本州では伐採地の枯れ材に多く見られたが、九州では余り見ない。大分県では黒岳 (佐々木, 1981ほか) の記録がある。
43.クリイロチビケブカカミキリ Terinaea atrofusca Bates
 黒岳男池, 1ex. 4. VII. 1994. 枯れ木からビーティングで採集。北海道、本州、佐渡、四国、九州(福岡・大分) から知られるが、佐賀・長崎では採れていない。大分県では祖母山 (堤内, 1997) の記録がある。
44.オビモンナガハムシ Zeugophora unifasciata (Jacoby) (写真46, 47, 47)
 黒岳男池, 2exs. 23. V. 1995. 上翅は黒褐色で、通常、翅端近くに黄白色の横帯紋が見られるのでこの名前がある。黒岳産は全体に黒化が強く、まったく (写真46)、あるいは、ほとんど (写真47)この紋を消失する。高倉 (1984) によると、英彦山産も同様であるらしい。しかし、九州南部の宮崎県青井岳産 (写真48) は本州産同様はっきり横紋があり、紋が消失するのは、今のところ、英彦山と九重山のみと云うことになる。本州、四国、九州 (福岡・大分・宮崎) から知られているが、佐賀・長崎では記録されていない。大分県では黒岳 (城戸, 1995) の記録がある。
45.ムギクビボソハムシ Oulema erichsoni (Suffrian) (写真49)
 黒岳男池, 1ex. 23. V. 1995; 飯田高原, 1ex. 17. VII. 1995. オープンな草地で得られる。牧草地のイネ科に付くのではないかと思われるが、普段は殆ど見る機会がない。南千島、北海道、本州、九州 (福岡・長崎・大分・熊本) に分布し、佐賀の記録はない。大分県では耶馬渓地方2か所の環境調査で得られている。
46.キスジツツハムシ Cryptocephalus limbatipennis Jacoby (写真54)
 飯田高原, 6exs. 17. VII. 1995. 草原の葉上で採集。食草はヌマトラノオ、局地的に多産する。上翅の黄色紋は縦筋状に繋がったり、前後に別れたり、大きさにも変化がある。本州、九州 (福岡・大分) に分布し、佐賀・長崎の記録はない。大分県では耶馬渓地方と河川の環境調査で得られている。
47.ミズキコブハムシ Chlamisus interjectus (Baly) (写真50, 51)
 大船林道, 1ex. 16. V. 1989. 多分ミズキの葉上から採集。かつて、黒くて小さいコブハムシを高倉康男氏に本種であると同定していただき、長崎県内各地から本種の名前で記録した。しかし、数年前、調べ直していたら、それはヒメコブハムシ Chlamisus diminutus (Gressitt) の誤りであることが解った。高倉氏ご自身ではヒメコブハムシを記録されていないので、ミズキコブハムシと誤解されたままだったのであろう。結局、私自身が記録したものは全てヒメコブハムシで、長崎と佐賀ではミズキコブハムシを確認できていない。ヒメコブハムシ (写真52, 53) は大陸から九州の固有種で、より小型、前胸腹板後突起先端付近が側方に鋭く突出し (写真53)、背面は全体黒色で褐色部分がないことで区別され、低地に多く、種々の広葉樹から採集できる。
 一方、本種はより大型で黒く、前胸腹板後突起が両側ほぼ平行で先端は丸い (写真51) ことで区別される。ほとんど、ミズキ葉上から採集され、九州ではやや山地性。本種は本州 (福島以西)、四国、九州、対馬、平戸島、天草、甑島から記録されているが、上記のような事情もあり、見直す必要がある。大分県では耶馬渓地方の環境調査で得られている。
48.マルキバネサルハムシ Pagria ussuriensis Moseyko et Medvedev
 玖珠町日出生台, 1♀. 16. VII. 1995; 由布市塚原, 1♂1♀. 16. VII. 1995. 日本産のヒメキバネサルハムシ Pagria signata (Motschulsky) と扱われた種には、実は4種が混棲しており、本土では、殆どの場所で3種が同一の葉上で見られることを、今坂・南 (2008) として報告した。結局、Pagria signata自体は日本には分布していないようで、この種は日本産から抹消した。同様の記事を今坂の個人ホームページに掲載している。キバネサルハムシ属 Pagriaは本来は南方系であるが、本種は北方系のようで、シベリアから本州、四国、九州まで分布する。九州では4種共に記録されているが、大分県の山地草原でクズ・ハギなどマメ科に見られるのは、ほとんど、本種のみのようである。上記報文では、大分県産として本種を日出生台、飯田高原、地蔵原の3ヵ所から記録している。
49.ヒコサンクロボシハムシ Gonioctena hikosana Kimoto (写真55)
 黒岳かくし水, 2exs. 27. VII. 1996. 樹葉上より。本種は英彦山産を基に記載された種で、九州 (福岡・大分・宮崎) の固有種と思われる。ホストはイヌシデ。大分県では黒岳 (佐々木・今坂, 1981ほか) の記録があるが少ない。
50.トホシハムシ Gonioctena japonica Chujo et Kimoto
 黒岳かくし水, 11exs. 5. VII. 1994. 樹葉上より。ホストはハンノキ。本種は、南千島、北海道、本州 (青森〜石川)、四国、九州 (大分) から記録されている。本州では山地に比較的普通であるが、九州では大分県黒岳 (佐々木, 1985ほか) の記録しか知られていないのは不思議である。九州ではほとんどハンノキを見ないことと関係があるかも知れない。
51.ムネアカオオノミハムシ Luperomorpha collaris (Baly)
 大船林道, 2exs. 16. V. 1989. 樹葉上。北海道、本州、九州 (佐賀・長崎・大分・熊本・鹿児島)から知られる。大分県では耶馬渓地方の環境調査で得られている。
52.モリモトタマノミハムシ Sphaeroderma morimotoi Chujo et Ohno(写真56)
 黒岳男池, 1ex. 23. V. 1995. 全体黒色のタマノミハムシ。本州 (山口)、九州の福岡県英彦山 (原産地)、長崎県多良岳・雲仙岳で記録されているくらいで、分布地はかなり局限される。雲仙では標高1000mほどの林床に咲くユリの一種から見つかる。英彦山では、犬ガ岳に多いという (高倉, 1984)。大分県では錦雲峡 (高倉, 1986) の記録がある。
53.アラハダトビハムシ Zipangia lewisi (Jacoby)
 飯田高原, 1ex. 11. V. 1993. ガマズミに比較的普通に見られ、本州、四国、九州 (福岡・長崎・大分・熊本・鹿児島)、五島列島などから知られる。大分県では毛谷村 (高倉, 1988) と、黒岳 (城戸, 1995) の記録がある。
54.チビカミナリハムシ Zipanginia picipes picipes (Baly)
  黒岳かくし水, 4exs. 21. VI. 1992. グミ葉上。グミに見られるが、やや局地的。本州、四国、九州 (福岡・佐賀・長崎・大分) から知られる。大分県では黒岳 (高倉, 1984) と、由布岳 (高倉, 1986) の記録がある。
55.マダラフトヒゲナガゾウムシ Basitropis nitidicutis Jekel
 黒岳かくし水, 1ex. 27. VII. 1996. 枯れ木に見られた。本種は奥尻島、北海道、本州、九州 (福岡・佐賀・大分) から知られるが、長崎では記録がない。大分県では黒岳 (城戸, 1985) の記録がある。
56.キボシメナガヒゲナガゾウムシ Oxyderes fastigatus (Jordan)
 黒岳かくし水, 1ex. 27. VII. 1996. 枯れ木のビィーティングで採集した。本種は本州、四国、九州 (福岡・佐賀・長崎・大分)、伊豆諸島、屋久島に分布し、九州では低山地に比較的普通に見られる。大分県では黒岳 (今坂ほか, 1980) の記録がある。
57.クロホシメナガヒゲナガゾウムシ Phaulimia aberrans (Sharp)
 大船林道, 1ex. 16. V. 1989. 枯れ木より。やや大型で,黒っぽいヒゲナガゾウムシで、九州では山地に広く分布するが、個体数は多くない。本州、四国、九州 (福岡・佐賀・長崎・大分)、対馬、トカラ中之島の分布が知られ、大分県では黒岳 (佐々木, 1985) の記録と、県西部の環境調査で得られている。
58.ビロウドアシナガオトシブミ Himatolabus cupreus (Roelofs)
 黒岳男池, 5exs. 23. V. 1995; 同, 1ex. 27. VII. 1996; 祖母山障子岩, 1ex. 20. VI. 1995. カツラの葉上に見られ、秋に新成虫が多い。本州、四国、九州 (福岡・大分・熊本) に分布し、山地性のようで、佐賀・長崎の記録は知られていない。大分県では黒岳 (佐々木, 1981ほか) の記録がある。
59.モンケシツブチョッキリ Auletobius submaculatus (Sharp)
 黒岳男池, 1ex. 12. VII. 1995; 同, 1ex. 27. VII. 1996.  前報でも述べたように、大分県では、他に黒岳で得られた2例 (今坂・三宅, 2008) が知られるのみ。本州、四国、九州 (福岡・大分)。
60.ホソウスイロチビゾウムシ Nanophyes mihokoae Morimoto
 塚原, 8exs. 16. VII. 1995. 草地の湿気た部分で採集したと思う。四国、九州 (福岡・大分) の記録があり、大分県からは日出生台 (今坂, 2005) の記録が知られるのみ。
61.アイノカツオゾウムシ Lixus maculatus Roelofs(写真57)
 塚原, 2exs. 16. VII. 1995. 的場 績氏同定。ヨモギから採集した。九州では、なぜか、カツオゾウムシ類は少なく、通常はカツオゾウとハスジカツオゾウしか見つからない。本種は細長いカツオゾウで、北海道、本州、四国、伊豆諸島、小呂島、対馬、男女群島から知られており、九州では、大分県黒岳 (九州初として: 城戸, 1996) と、九重町地蔵原 (三宅, 2007) から記録されているだけである。本州では低地の河川敷などでも普通に見られる本種が、九州ではなぜ、山地高原に限って見られるのか、興味深い。
62.サビノコギリゾウムシ Ixalma hilleri Roelofs
 黒岳男池, 1ex. 23. V. 1995.  樹葉上。本種のホストはサネカズラ。本州、四国、九州 (福岡・佐賀・長崎・大分)、奄美大島、石垣島の分布が知られる。九州では、個体数は多くないが、各地で見られ、大分県では耶馬渓地方の環境調査で得られている。
63.ハチジョウノミゾウムシ Rhamphus hisamatsui Chujo et Morimoto
 黒岳かくし水, 3exs. 5. VII. 1994. ヤシャブシ葉上。北海道、本州、四国、九州 (福岡・佐賀・長崎・大分)、伊豆諸島で記録されており、植裁のヤシャブシについて広がった可能性もある。大分県では長者原 (三宅, 2007) で記録されている。
64.クロナガハナゾウムシ Bradybatus sharpi Tournier
 大船林道, 1ex. 16. V. 1989. 樹葉上。北海道、本州、四国、九州 (福岡・長崎・大分・熊本) に分布し、九州では山地性。標高1000m付近で見られることが多い。大分県では黒岳 (城戸, 1996) と、傾山 (堤内, 2006) で記録されている。
65.チャイロアカサルゾウムシ Coeliodinus brunneus (Hustache)
 黒岳男池, 1ex. 25. V. 1996. 樹葉上。本州、九州 (佐賀・長崎・大分) から知られており、山地性のようである。大分県では黒岳 (高倉1984) で記録されている。
66.ジュウジコブサルゾウムシ Sinauleutes bigibbosus (Hustache)
 祖母山障子岩, 1ex. 20. VI. 1995. 樹葉上。本州、四国、九州 (福岡・長崎・大分) から知られており、山地性のようである。大分県では尾平 (高倉, 1984) で記録されている。
67.オオヒメクモゾウムシ Macrotelephae ichihashii Morimoto
 黒岳男池, 1ex. 16. V. 1989. 樹葉上。本州、九州 (福岡・大分)、対馬から知られており、山地性のようで、佐賀・長崎の記録はない。大分県では黒岳 (城戸, 1996) で記録されている。
68.タイコンキクイムシ Scolytoplatypus tycon Blandford
 黒岳男池, 1♂. 25. V. 1996. 倒木より。北海道、本州、四国、九州 (福岡・佐賀・長崎・大分) から知られ、各地で見つかる。大分県では九重町鹿伏岳 (佐藤, 1987) で記録されている。

<山地の記録が無い6種>
 以下の種は大分県では低地の記録はあっても山地の記録がないので、参考のために記録しておきたい。
69.ホソフタホシメダカハネカクシ Stenus alienus Sharp
 大船林道, 1ex. 16. V. 1989. 本種は平地の溜め池などの水辺で見つかることが多い。奥尻島、北海道、本州、四国、九州 (長崎・大分) の記録がある。
70.コクロマルハナノミ Odeles inornata (Lewis)
 黒岳男池, 1ex. 23. V. 1995. 本種の幼虫は水生で、成虫は低山地の渓流沿いの林縁で見つかることが多い。北海道、本州、四国、九州 (福岡・佐賀・大分) に分布する。
71.チビマルヒゲナガハナノミ Macroeubria lewisi Nakane
 塚原, 1ex. 16. VII. 1995.  本種の幼虫は水生で、成虫は水辺の草の上で見つかる。本州、四国、九州 (福岡・佐賀・大分)、屋久島、奄美大島、石垣島に分布する。前種共に、長崎の記録がないのが興味深い。
72.ウスバツマキジョウカイ Malthinus nakanei Wittmer
 黒岳男池, 4♀♀. 21. VI. 1992. 低地から山地まで、林縁の樹葉上で見られる。本州、九州 (福岡・長崎・大分) の分布が知られている。
73.キムネヒメジョウカイモドキ Hypebaeus picticollis (Kiesenwetter) (写真58, 59)
 祖母山障子岩, 1♂. 20. VI. 1995. 樹葉上。シイなど常緑樹の葉上で見られるが、少ない。Hypebaeus属の♂の翅端は複雑な構造があり、種ごとに形態が異なる (写真58)。本州、四国、九州 (福岡・佐賀・大分) の記録がある。
74.ナガマルキスイ Atomaria punctatissima Reitter
 九酔渓, 1ex. 11. V. 1993. 普通は低地の枯れ草の中から見つかる。北海道、本州、九州 (福岡・長崎・大分) の分布が知られている。

  以上74種を記録したが、最も多くの種を記録したのは黒岳 (男池・かくし水) の43種で、次いで、飯田高原の10種、九酔渓の9種、大船林道の8種、障子岩の7種などが多い。
 その他、塚原の4種、牧ノ戸峠・魔林峡の2種、日出生台・筑後川の1種などを記録した。
 採集した回数が多い為でもあるが、黒岳には何度出かけても、大分県初記録を含めて珍しい種が採れる。それに、飯田高原・塚原・日出生台などの草原も面白い。また、九酔渓はなぜか、他と違った種が見つかる。
 まだ、1997年採集以降は未整理なので、整理ができ次第報告したい。

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