今坂正一の世界
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喜界島で2007年に採集した甲虫

今坂 正一・祝 輝男

<はじめに>
 鹿児島県喜界島は、奄美大島の東、約30kmに浮かぶ隆起珊瑚礁で、東西12km、南北12kmの足跡みたいな形をしている島である。最高地点は東海岸中央部の百之台で標高214m、そこから南東部は切り立った崖になっており、北西方面に向かっては、なだらかな傾斜を持つ珊瑚礁段丘となっている。西海岸に砂浜と港、空港などがある。大部分、台地上に平坦な耕作地が広がっており、樹林は崖や傾斜地など一部に存在する程度で、自然植生に乏しい島である。
 著者の一人・祝は、2007年の4月および、8月に喜界島に出かけ、若干の甲虫を採集した。そのうち、74種が同定できたので記録しておきたい。コメツキムシ2種の同定をお願いした堤内雄二氏(臼杵市)と、ハムシ類の文献資料を教えて頂いた南 雅之氏(武蔵野市)にお礼申し上げる。
 採集場所は、空港や町並みが集中する西南部から、周遊道路沿いの時計回りに、池治(いけじ)、坂嶺(さかみね)、小野津(おのづ)、志戸桶(しとおけ)、早町(そうまち)、嘉鈍(かどん)、阿伝(あでん)、蒲生(がもう)、花良治(けらじ)、川嶺(かわみね)などである。
 図1に採集場所を示しているが、小野津と志戸桶の中間にある溜池については、地名が良く解らないので単に溜池と表示している。
 2007年4月26〜27日と8月5〜7日、全て、祝 輝男採集、コメツキ2種を除いて今坂正一同定・保管であるので、採集データは、坂嶺4(26)1の様に示した。喜界島坂嶺で、2007年4月26日に1個体、祝 輝男採集の意味である。
 大部分は任意採集で、この分は特に表示していない。4月には一部を、外灯や自動販売機の灯りから採集したので、この分をライトと表示した。また、8月には各地で、設置型のライトトラップで採集し、これはボックス(B)ライトと表示した。記録した甲虫の大半が喜界島初記録であるので特に表示せず、むしろ既知記録があるもの(17種)のみ、学名の後に●印を付けた。

<喜界島産採集目録>
1. シロヘリハンミョウ沖縄亜種 Cicindela yuasai okinawensis Hori et Cassola(図版2-21)
坂嶺8(5)1; 海岸を流れる小川の周辺で見られた。トカラ〜八重山まで広く分布する固有の亜種で、本土ではシロヘリハンミョウが岩礁地帯、ヨドシロヘリハンミョウが干潟と棲み分けているのに対して、後者が分布しない琉球にあっては、本亜種がその両方の生息場所に進出している。
2. オオアオモリヒラタゴミムシ Colpodes buchanani Hope
早町〜花良治(ライト)4(26)3
3. ハラアカモリヒラタゴミムシ Colpodes japonicus (Motschulsky)
早町〜花良治(ライト)4(26)2; トカラ以北と、南大東島で記録があり、本土からの移入かもしれない。
4. ニセマルガタゴミムシ Amara congrua Morawitz
坂嶺4(26)1; 従来の記録は北海道〜九州と、トカラ、石垣などで、あるいは本土からの移入かもしれない。
5. イハゴモクムシ Harpalus ihai Habu
坂嶺4(26)1, 早町〜花良治(ライト)4(26)1, 川嶺4(26-27)1; 琉球に広く分布。
6. キイロチビゴモクムシ Acupalpus inornatus Bates
阿伝(Bライト)8(6-7)5
7. キベリゴモクムシ Anoplogenius cyanescens (Hope)
早町〜花良治(ライト)4(26)1
8. ヒゲクロツブゴミムシ Pentagonica biangulata Dupuis(図版2-22)
阿伝(Bライト)8(6-7)1, 川嶺(Bライト)8(6-7)1
9. ヒラタアトキリゴミムシ Parena cavipennis (Bates)
阿伝4(27)1; 従来、トカラ以北と、石垣島で記録がある。
10.コクロヒラタガムシ Helochares abnormalis (Sharp)(図版2-26)
阿伝(Bライト)8(6-7)1; 阿伝のボックスライトは小さな池に隣接して設置したので、水生甲虫類が多く捕獲された。奄美〜石垣島で記録されているが、あまり多くない。
11.ミナミヒメガムシ Sternolophus inconspicuus (Nietner)
阿伝(Bライト)8(6-7)3; 本州〜琉球に広く分布するヒメガムシより、一回り小型。従来、与論島〜与那国島から記録されているので、北限記録になる。
12.アカセスジハネカクシ Oxytelus incisus Motschulsky
池治(Bライト)8(6-7)1, 阿伝(Bライト)8(6-7)1; 本州〜沖縄に広く分布。河川や耕作地の腐食物に見られる。
13.キアシシリグロハネカクシ Astenus latifrons (Sharp)
早町〜花良治(ライト)4(26)1
14.ツマグロナガハネカクシ Pseudolathra unicolor (Kraatz)
池治(Bライト)8(6-7)1; 水辺に多い。
15.ヒラタクワガタ奄美亜種 Dorcus titanus elegans (Boileau)●(図版2-27)
川嶺(Bライト)8(6-7)1♀; 奄美大島の固有亜種。
16.オオニセツツマグソコガネ Ataenius australasiae (Bohemann)
早町〜花良治(ライト)4(26)1; 九州以南の琉球に広く分布。
17.クロツツマグソコガネ Saprosites japonicus Waterhouse
川嶺4(26-27)2
18.フタスジカンショコガネ Apogonia bicarinata bicarinata Lewis●(図版2-29)
川嶺(Bライト)8(6-7)1
19.アオドウガネ奄美亜種 Anomala albopilosa gracilis Schonfeldt●
池治(Bライト)8(6-7)1, 阿伝(Bライト) 8(6-7)7, 蒲生(Bライト)8(6-7)2, 川嶺(Bライト)8(6-7)11; トカラ口之島〜徳之島の固有亜種。
20.オキナワコアオハナムグリ Gametis forticula forticula (Janson)●
坂嶺4(26)4, 小野津と志戸桶の中間にある溜池4(26)1, 志戸桶4(26)4; 本州南岸から沖縄諸島まで分布。
21.リュウキュウツヤハナムグリ奄美亜種 Protaetia pryeri oschimana (Nonfried)●(図版2-32)
坂嶺8(5)2, 川嶺8(5)1; トカラ、奄美〜徳之島、沖縄諸島、宮古などの個体群はそれぞれ別の亜種にされ、島ごとに分化の著しい種。
22.タイワンカブトムシ Oryctes rhinoceros (Linnaeus)(図版2-28)
川嶺(Bライト)8(6-7)1; 幼虫はヤシの幹やサトウキビの根を食害。人為的に分布が広がっているものと考えられる。
23.タテスジナガドロムシ Heterocerus fenestratus Thunberg
早町〜花良治(ライト)4(26)1
24.キンイロエグリタマムシ琉球亜種 Endelus collaris kerremansi Thery
川嶺4(26-27)2; 対馬と屋久島以南〜台湾に分布し、本土とは別の亜種。シダにいる。
25.シロモンサビキコリ Agrypnus scutellaris scutellaris (Candeze)●(図版2-23)
阿伝(Bライト)8(6-7)1
26.チャイロコメツキ琉球亜種 Haterumelater bicarinatus shibatai Ohira
川嶺(Bライト)8(6-7)1 (堤内雄二氏同定・保管)
27.オキナワカンシャクシコメツキ Melanotus okinawensis Ohira●
川嶺4(26-27)1; (堤内雄二氏同定・保管) かつては、琉球に広く分布するMelanotus saitoi Ohiraの亜種とされていたが、現在は独立種に扱われている。トカラ〜沖縄に分布。
28.アカアシコハナコメツキ喜界島亜種 Paracardiophorus sequens kikai Kishii(図版1-2)●
坂嶺4(26)1; 本種は本州以南の河口〜海岸の砂地に生息する。島ごとに多くの亜種が記載されており、喜界島産は固有の亜種として区別されている。
29.スジカツオブシムシ Dermestes freudi Kalik et N.Ohbayashi(図版2-31)
川嶺8(5)1; 海鳥などと共に分布を拡げているものと考えられる。
30.カマキリタマゴカツオブシムシ Thaumaglossa rufocapillata Redtenbacher(図版1-3)
阿伝4(27)1; 屋久島以南の琉球から初めての記録。カマキリの卵嚢に寄生する種で、移入は考えにくく、琉球にも広く分布しているのが、見つかっていないだけか?
31.アマミホソジョウカイモドキ Attalus trochantinus Wittmer(図版1-4)
嘉鈍4(26-27)1, 志戸桶4(26)1; 足まで黒いので、区別できる。トカラ(宝島、小宝島)、奄美、徳之島に分布する。
32.モンチビヒラタケシキスイ Haptoncus ocularis (Fairmaire)
蒲生(Bライト)8(6-7)1
33.アカマダラケシキスイ Lasiodactylus pictus (MacLeay)●
早町〜花良治(ライト)4(26)2, 阿伝(ライト)8(6-7)1, 蒲生(ライト)8(6-7)1
34.ヒメムクゲオオキノコムシ Cryptophilus propinquus Reitter
蒲生(Bライト)8(6-7)1, 川嶺(Bライト)8(6-7)1; ムギワラやイネ科の枯れ草にいる。人為的分布の可能性もある。
35.ヨツボシケナガキスイ Toramus quadriguttatus Sasaji(図版2-24)
蒲生(Bライト)8(6-7)2; 本種はSasaji(1989)により、沖縄、渡嘉敷島より記載された種である。その後の分布記録は知られていないようで、喜界島は北限記録となる。黒褐色地に上翅には淡色の4つの紋を持つ顕著な種である。灯火で得られたが、近縁種から類推すると、枯れ草にいるのではないかと思われる。
36.ウスモンケナガキスイ Toramus uenoi Sasaji(図版2-25)
蒲生(Bライト)8(6-7)9; 本種も前種と同じ、Sasaji(1989)により、久米島、石垣島、西表島、与那国島から記載された種である。前種とほぼ同じサイズで、どんどん淡色にしていくと本種の色彩になり、喜界島産は、一瞬、前種の未熟個体かと思った。しかし、点刻のぐあいや、全体のプロポーションが異なり、本種と判断した。前種と同時に得られているので、混棲するのであろう。
37.アシグロヒメコメツキモドキ Anadastus melanosternus (Harold)
花良治4(27)1
38.クロツヤテントウ Serangium japonicum Chapin(図版1-5)
阿伝4(27)1; 本種はトカラ以北の分布が知られていた。沖縄以南には、上翅に点刻が見られない近縁のリュウキュウツヤテントウSerangium ryukyuense H. Kamiyaが知られている。
39.ミヤタケヒメテントウ Scymnus miyatakei H. Kamiya(図版1-6)
川嶺4(27)1; トカラから西表まで分布するが、余り多くないようで、図鑑類には図示されていない。
40.アマミアカホシテントウ Chilocorus amamensis H. Kamiya(図版1-7)
花良治4(27)1; 奄美〜沖縄の固有種。
41.ナナホシテントウ Coccinella septempunctata Linnaeus
坂嶺4(26)2, 小野津と志戸桶の中間にある溜池4(26)1, 志戸桶4(26)2, 花良治4(27)1
42.ニジュウヤホシテントウEpilachna vigintioctopunctata (Fabricius)
花良治4(27)1
43.ウスチャケシマキムシ Cortinicara gibbosa (Herbst)
蒲生(Bライト)8(6-7)2 ; 枯れ草にいる。
44.ヤマトケシマキムシ Melanophthalma japonica Johnson(図版2-31)
蒲生(Bライト)8(6-7)1; 枯れ草にいるが多くない。琉球の記録は知られていない。
45.ホソクロハナノミ Mordella niveoscutellata Nakane et Nomura(図版1-8)
嘉鈍4(26-27)1 本州〜沖縄に分布。背面全体が黒い日本産Mordella属中、本種のみが、小楯版が銀色で区別しやすい。
46.エダシゲクロヒメハナノミ Mordellistena edashigei Chujo
川嶺4(27)5; トカラ〜沖縄に分布。後脛節段刻が短いMordellistena は、背面の毛は黒っぽいが、本種は強い金色光沢を持つ。
47.フタイロカミキリモドキ Oedemeronia sexualis (Marseul)
坂嶺4(26)4, 阿伝4(27)2, 花良治4(27)1, 川嶺4(27)2
48.ムネアカアリモドキ Anthelephila ruficollis (Saunders)(図版1-9)
早町〜花良治(ライト)4(26)1, 阿伝4(27)1; トカラ〜沖縄諸島の固有種。
49.ホソクビアリモドキトカラ亜種 Formicomus braminus tokarensis Nomura(図版1-10)
川嶺4(27)1; 本亜種はトカラ〜沖永良部に分布。
50.カタモンニセクビボソムシ Pseudoloterus humeralis Nomura
川嶺4(27)2
51.シワハムシダマシ Anisostira rugipennis (Lewis)(図版1-11)
阿伝4(27)1; 奄美〜宮古まで分布。
52.アマミトビイロクチキムシ(和名新称) Borboresthes amamianus Maeda et Nakane(図版1-12)
坂嶺4(26)1, 阿伝4(27)1; トビイロクチキムシ近縁で、奄美大島の固有種。木元(2004)に従った。
53.ミナミスナゴミムシダマシ Gonocephalum moluccanum (Blanchard)(図版1-13)
早町〜花良治(ライト)4(26)2; トカラ、久米島、粟国島など。南太平洋地域にも広く分布する。
54.ヘリアカゴミムシダマシ Eutochia lateralis (Bohemann)
早町〜花良治(ライト)4(26)1
55.リュウキュウヒメカミキリ Ceresium fuscum fuscum Matsumura et Matsushita●
早町〜花良治(ライト)4(26)1; トカラ〜沖縄の固有亜種。
56.オオシマウスアヤカミキリ Bumetopia ohshimana ohshimana Breuning(図版1-14) ●
川嶺4(27)1; 奄美から沖永良部までの固有亜種。ススキやタケにいる。
57.アトモンチビカミキリ Sybra oshimana Breuning●
坂嶺4(26)1; 沖縄以北に分布。
58.ホシベニカミキリ Eupromus ruber (Dalman)(図版1-15)●
花良治4(27)1; 大林ほか(1992)以前は琉球の記録が無く、東(2002)で喜界、大林・新里(2007)で奄美と喜界島から記録されているので、最近の移入と考えられる。
59.リュウキュウルリボシカミキリ Glenea chlorospila chlorospila Gahan(図版1-16)●
阿伝4(27)1, 花良治4(27)8; 与論島以北に分布。
60.キボシツツハムシ Cryptocephalus perelegans perelegans Baly
川嶺(Bライト)8(6-7)1
61.ダビッドサルハムシ Basilepta davidi (Lefevre)(図版1-17)
坂嶺4(26)1; トカラ〜西表に分布。図鑑類では、図示されたことがない。
62.フタイロウリハムシ Aulacophora bicolor (Weber)
阿伝4(27)1; 奄美以南に分布。
63.ウリハムシ Aulacophora indica (Gmelin)●
阿伝4(27)1, 坂嶺8(5)1
64.オキナワイチモンジハムシ Morphosphaera coerulea Schonfeldt●
坂嶺4(26)1
65.ヒメカミナリハムシ Altica caerulescens (Baly)
花良治8(6)1
66.サツマイモヒサゴトビハムシ(和名新称) Chaetocnema confinis Crotch (図版1-18, 19)
小野津と志戸桶の中間にある溜池4(26)1; 本種は台湾原産で、パラウ、北アメリカの分布が知られている。国内からの記録は、最近、Takizawa(1998)によって、沖永良部島と徳之島から報告され、今回が3例目である。全形図は図示されたことがないので、図版1-18に示した。アメリカでは、サツマイモの害虫として、Sweet potato flea beetleと呼ばれているらしいので、和名は上記の名前を提唱したい。国内のChaetocnemaの中では最も小型(1.5mm内外)で、前頭部触角間が広く、隆起が少なくやや扁平になること(図版1-19)で、区別できる。
67.ナスナガスネトビハムシ Psylliodes angusticollis Baly●
小野津と志戸桶の中間にある溜池4(26)2, 花良治4(27)7
68.タテスジヒメジンガサハムシ Cassida circumdata Herbst
坂嶺4(26)1
69.ヨツモンカメノコハムシ Laccoptera quadrimaculata (Thunberg)(図版2-30)
坂嶺8(5)1, 花良治8(6)1; サツマイモの害虫で、最近、九州(長崎)に侵入している。
70.ワタミヒゲナガゾウムシ Araecerus fasciculatus (DeGeer)
花良治4(27)1, 阿伝(Bライト) 8(6-7)1
71.ニセホソヒメカタゾウムシ Neasphalmus okinawanus Nakane(図版1-20)
川嶺4(26-27)1; 口永良部島、トカラ中之島、沖縄、宮古島、石垣島、南大東島で記録されているが、フィリピン系のグループらしい。
72.オキナワクワゾウムシ Episomus mori Kono
川嶺4(26-27)1; クワにつき、奄美以南に分布。
73.アルファルファタコゾウムシ Hypera postica (Gyllenhal)
坂嶺4(26)1; 琉球では、沖縄のみで記録されている。本種は最近の移入であろう。
74.ヒサゴクチカクシゾウムシ Simulatacalles simulator (Roelofs)
川嶺4(26-27)1

<喜界島の甲虫相の特徴>
 喜界島の昆虫相はあまり調査されていないようで、日本産昆虫総目録(1989)や、増補改訂 琉球列島産昆虫目録(2002)などを総合しても、甲虫類ではわずかに81種が記録されているだけである。今回、記録した74種(新記録57種)を加えて、喜界島産甲虫は138種が記録されたことになる(表1参照)。
 この数は、実際に喜界島に分布する甲虫の1割程度と考えられるが、なかなか、喜界島の甲虫ファウナを考える機会は無いので、今回は分布が判明した138種について、その分布型の構成を考えてみたい。 喜界島産甲虫のうち、最も多く記録されているのはカミキリムシ科(34種)で、次いで、ハムシ科(20種)、コガネムシ科(15種)、オサムシ科(10種)、コメツキムシ科(8種)、テントウムシ(5種)、ガムシ科(5種)、タマムシ科(5種)、ハネカクシ科(4種)、コメツキモドキ科(4種)、ゾウムシ科(4種)などである。
 喜界島では固有種は知られておらず、固有亜種としてイシガキシロテンハナムグリ、ハマベヒメサビキコリ、アカアシコハナコメツキ、アマミノブオケシカミキリなど4種の喜界島亜種が知られている。いずれも、種としては琉球に広く分布し、島ごとに変化しているグループである。
 琉球列島での種分化と分布は、島の成り立ち(地史)の影響を大きく受けていると考えられる。喜界島を中心に考えると、亜種レベル以上の喜界島産の分布パターンは、大きく、A. 喜界島固有、B. 奄美諸島(奄美〜徳之島)固有、C. 奄美〜沖縄固有、D. トカラ〜沖縄、E. 本州(一部は九州)〜沖縄、F. 奄美〜八重山、G. トカラ(一部は九州南端)〜八重山、H. 北海道あるいは本州〜八重山などを区別することが可能である(その他をIとする)。
 表1に、文献を含めた喜界島産の分布パターン、文献・採集記録の有無などを示した。文献No.および、その他の数字は、引用文献のNo.を示している。各グループの種数は、以下の通りである。 A. 喜界島固有:4種(3%) B. 奄美諸島固有:11種(8%) C. 奄美〜沖縄固有:6種(4%) D. トカラ〜沖縄:8種(6%) E. 本州〜沖縄:22種(16%) F. 奄美〜八重山:19種(14%) G. トカラ〜八重山:26種(19%) H. 北海道〜八重山:33種(24%) I. その他:9種(7%)。
  このうち、Hの北海道から八重山まで広く分布する広域分布種が最も多く、全体の1/4近くを占める。次いで、Gのトカラから八重山まで琉球に普遍的に分布する種が多く(2割弱)、これらはいわゆる琉球系と言われているグループである。さらに、Eの沖縄以北に分布する種が続くが、このグループは暖地性で、一部は黒潮に乗って沖縄から本土に北上した種であるが、むしろ、本土から南下してきたと考えられる種も多く含まれている。さらに、Fの、より南から島伝いに北上してきて、奄美−喜界島を北限とする南方系の種が続く。
  喜界島を中心として考えた固有種として、Aの喜界島固有亜種および、Bの喜界島を含む奄美群島固有、あるいは、もう少し分布域の広いCの奄美〜沖縄固有や、Dのトカラ〜沖縄までの固有種なども産するが、その比率は余り高くない(A, B, C, Dを含めても29種:21%)。周辺の、奄美大島や沖縄などは、琉球諸島の中でも特に固有種の率が高い地域であるので、その属島とも言える位置にある島としては、喜界島は固有種の比率が著しく少ないと言えると思う。
 最後に、分布パターンが不連続なIのその他の群であるが、分布の理由が良く解らないPhilonthus variipennis、ミスジツブタマムシ、カマキリタマゴカツオブシムシ、ヒメムクゲオオキノコムシ、ヤマトケシマキムシを除いて、ハラアカモリヒラタゴミムシ、ニセマルガタゴミムシ、ホシベニカミキリ、アルファルファタコゾウムシの4種は本土からの人為的な移入であろうと思う。最近、人の移動と物流の拡大によって、本土から琉球各地に侵入する昆虫類も増加しているようで、あるいは対策を講じる必要があるかもしれない。
 林(1986)はニイニイゼミ類の分布と分化に関連して、「洪積世中後期(ミンデル−リス間氷期)に起こった海進により、島々は分離され、現在の喜界島〜中略〜は海中に没した。〜中略〜ウルム氷期(洪積世後期)の海退時には、奄美大島−喜界島、〜中略〜はそれぞれ陸続きとなり、第II群の種だけが新しく隆起した地域に進出した。」と述べている。
 喜界島は隆起珊瑚礁として成立した島であり、島の成り立ちが新しいことは上に述べられている通りである。これらのことから予想される喜界島の甲虫は、ウルム氷期(15万年前〜1万年前)の海退時に奄美大島から侵入した種群をベースに、その後、海流等で漂着した種、人為的に持ち込まれた種などで構成されていると想像される。喜界島産甲虫として分布が確認された138種について、分布パターンを調べて解析した結果は、まさしく、予想通りであった。
 今回判明した喜界島産甲虫の顔ぶれを見る限り、少数の奄美大島由来の固有種が分布しているものの、分布している種の中心部分は、比較的最近、侵入した農業害虫を含む移動力の強い広域分布種で占められていると言えると思う。タイワンカブトムシ、ニジュウヤホシテントウ、ウリハムシ、ヨツモンカメノコハムシなどはその顕著な例である。
 喜界島は、現在は、まとまった樹林が少なく、島の大部分が耕作地や草地などで占められている。実際に発見されている甲虫は、研究者が多いカミキリムシ科を除くと、むしろ、樹林性のものより草地性のものが多く、移動性に富む広域分布種が、本来の甲虫相の比率以上に多く発見されている可能性が高い。しかし、詳細な調査を繰り返すことにより、多少、樹林性の種や固有種の比率が上がるのではないかと期待している。

 <引用文献>
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