今坂正一の世界
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宮島でナラアオジョウカイモドキを採集

今坂正一

宮島は広島湾内に浮かぶ比較的小さい島であるが、波打ち際にある厳島神社のすぐ裏からモミの大木を始めとして鬱蒼とした森林に被われており、ミヤジマトンボやミヤジマコガネコメツキなど、極めて興味深い昆虫類を産することが知られている。筆者はもう20年近く前、小型のジョウカイボンを求めてこの地で採集し、異様に黒いフタオビノミハナカミキリについて報告したことがある(今坂, 1988)。最近、昔の標本を整理し直していたところ、ナラアオジョウカイモドキを採集していたことに気が付いたので、報告する次第である。確か、弥山(標高530m)の登り口付近の谷間でカエデの花上から、フタオビノミハナカミキリ等と一緒に採集したように思う。

1♂4♀♀. 広島県宮島町厳島, 26. IV. 1988, 今坂採集・同定.

本種は中根猛彦博士が1956年に奈良春日山産を基に新種で記載された種である。北海道から九州まで分布するコアオジョウカイモドキ Anhomodactylus eximius (Lewis)によく似ているが、より小型で、前胸背は丸みが強く横長、前頭の突起の形は梯形(写真2)であり、この突起が三角形になる後種と区別されている。両種共に♂の触角の3、4、5節は内側に拡大しているが、本種の方がより膨らみは弱く(写真3)、4節はかなり細くて、明確に区別できる。記載以降、中根(1963)、佐藤(1985)、青野(2003)などにより図示され、栃木県栗山村川俣奥鬼怒(佐藤・大川, 1998)、福井市文珠山(佐々治・斉藤, 1985)、奈良市春日山(高橋, 1991)、大阪府東能勢村青貝山(仲田, 1982)、岡山市祇園(青野, 2003)などから記録されているが少ない。いずれも、4月後半〜5月前半の春先の採集のようである。広島県からは初めての記録になる。

文献記録についてご教示いただいた生川展行(鈴鹿市)、的場 績(和歌山県立博物館)、山地 治(岡山市)の各氏にお礼申し上げる。

参考文献

青野孝昭, 2003. すずむし, (137): 49-55, fig. 129.
今坂正一, 1988. 甲虫ニュース, (82): 6-7.
中根猛彦, 1963. 原色昆虫大図鑑, p186. pl. 93-12. 北隆館.
中根猛彦, 1983. 北九州の昆蟲, 30(3): 161-166.
仲田元亮, 1982. 能勢の昆虫, 甲虫の部上巻: 446pp..
佐藤光一・大川秀雄, 1998. 黒磯市動植物実態調査報告書: 257-333.
佐藤正孝ほか, 1985. 原色日本甲虫図鑑(III), p165. pl. 26-15. 保育社.
佐々治寛之・斉藤昌弘, 1985. 福井県昆虫目録: 79-245, 福井県.
高橋敞, 1991. 関西甲虫談話会資料(1), 45pp.

図説明

1. ナラアオジョウカイモドキ♂
2. ♂頭部
3. ♂触角
4. ナラアオジョウカイモドキ♀


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アオハムシダマシ類の上翅肩部にある縦稜と交尾姿勢との関係
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