今坂正一の世界
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長崎県島原半島産甲虫覚え書き 1
(島原半島の甲虫相1〜5 以降の追加種)

今坂正一

長崎県島原市から久留米市に移って10年が経つ。その間、福岡市の事務所に通いながら、九州各地での環境アセスメント調査に従事してきた。2004年春には独立して現在に至っている。

島原半島産甲虫については、1975年以降、自身のベースグラウンドとして調査を続けてきたが、そこを離れるまでは踏ん切りが付かず、全体のまとめには至らなかった。久留米に移って初めて、その機会を持つことができ、今坂(1999-2002)として総括し、102科1972種を記録した。 その後も帰郷などの折りに、機会を見ては採集し、若干の追加種を得ている。また、中薗氏により、筆者が30年来採集できなかった興味深い種も追加・報告されているので、文献記録についても書き留めておきたい。今後も、自身の原点とも言える地域のファウナであるので、折りに付け採集・記録して、そのファゥナの由来や意味などを考えていきたい。

お忙しい中、ミツモンヒゲナガゾウムシを同定頂き、種々のご教示を頂いた妹尾俊男氏に厚くお礼申し上げる。

自身で採集し、追加できたのは以下の13種である。島原半島内の市町村は、平成の大合併により、最終的には3つの市に統合されるという。現在はまだ過渡的な状況であるし、採集時点ではまだ合併は行われていなかったので、旧町名で記録する。

1. ホソヒョウタンゴミムシ Scarites acutidens Chaudoir
1ex. 28. V. 2004, 愛野町阿母崎で灯火に飛来した。本種は本州、四国、九州、琉球に分布するが比較的少ない。荒れ地や河原に多い近似のナガヒョウタンゴミムシとは、中脛節外縁先端付近のトゲが2本(後種は1本)で有ることで区別できる。河口近くの泥土の河川敷で見られる。

2. フタボシチビゴミムシ Lasiotrechus discus (Fabricius)
1ex. 13. VIII. 2003, 吾妻町牛口で灯火に飛来した。本種は、北海道、本州、四国、九州に分布するが、いずれの地域でも、個体数は少ないようである。水辺の灯火で得られる。

3. オオマルガタゴミムシ Amara gigantea (Motschulsky)
1ex. 14. X. 2004, 愛野町阿母崎、ベイトトラップ。本種は、北海道、本州、四国、九州に分布し、砂地の河川敷で見つかる。

4. オオホシボシゴミムシ Anisodactylus sadoensis Schauberger
1ex. 14. X. 2004, 愛野町阿母崎、ベイトトラップ。本種は、近似のホシボシゴミムシが荒れ地や畑などに普通に見られるのに対して、河川敷に限って分布する。北海道、本州、四国、九州。

5. クロナガエハネカクシ Ochthephilum densipenne (Sharp)
1ex. 14. VIII. 2004, 愛野町阿母崎、河川の近くで灯火に飛来した。本種も河川などの泥土に生息すると考えられ、下流域〜河口や溜め池の灯火で得られる。本州、九州に分布。

6. ホソウミベハネカクシ Cafius algarum Sharp
3exs. 15. X. 2004, 西有家町須川海岸。須川港の横に狭い砂浜が残されており、そこの海藻などのゴミの下より得られた。本州、九州、佐渡、伊豆諸島に分布し、砂浜のみで見られる。

この砂浜では他に海岸特有の種として、ホソアバタウミベハネカクシ、アカウミベハネカクシ、ウミベアカバハネカクシ、オキナワコアオハナムグリ、アカアシコハナコメツキ、オオスナゴミムシダマシ、ハマヒョウタンゴミムシダマシ、トビイロヒョウタンゾウムシなども見られた。

7. ハラジロカツオブシムシ Dermestes maculatus DeGeer
1ex. 15. X. 2004, 西有家町須川海岸。腐った海藻の中より。その中に乾いた魚の死骸などが混じっていたのかもしれない。北海道、本州、四国、九州、沖縄本島、石垣島に分布。

8. ホソキヒラタケシキスイ Epuraea parilis Reitter
1ex. 28. IV. 2002, 千々石町千々石海岸。枯れ草のビーティングにより。北海道、本州、四国、九州、屋久島に分布。枯れ草や花、樹葉上に比較的普通。

9. ガマキスイ Telmatophilus orientalis Sasaji
3exs. 13. VIII. 2003, 吾妻町牛口。湿地に生えたガマの穂を叩いて採集。本州、九州に分布し、溜め池や湿地などに生えるヒメガマ、ガマなどの穂のみに見られる。ガマの穂の何を食べるのかは不明だが、花粉を主として食べるのではないかと推定している。

10.アカアシヒメコメツキモドキ Anadastus ruficeps (Crotch)
2exs. 14. X. 2004, 吾妻町牛口。枯れ竹とススキを叩いて採集。図鑑類では九州と、中国に分布とあるが、島根県の標本も確認している。ススキ、タケ、ヨシなどの枯れて湿った部分に集まる。

11.ミツモンヒゲナガゾウムシ Trigonorhinus zeae (Woifrum)
1ex. 2. VIII. 2004, 西有家町須川。砂浜のハマボウの枯れ枝から採集。本種は、妹尾(2004)によると、その発見から現在に至るまで、学名等幾多の変遷があるようである。まず、国内からは、東京の荒川河川敷と福岡県田川市東町からOpanthribus trimaculatus Senoh, 1986として新種記載され、その後同じ著者により、Trigonorhinus属に移動させられた。一方、福井大学構内から新種記載されたTrigonorhinus japonicus Morimoto, 1999は原著者等によって、2003年に本種のシノニムであることが報告され、さらに、Valentine(1999)により、前記学名も表記学名の種のシノニムになったと言う。この種はメキシコからアルゼンチンまで広く分布する種であるので、国内には農産物などの移動に伴い人為的に侵入したと推定されている。九州においては前記記録が知られるだけなので、今回が2例目である。

12.サビノコギリゾウムシ Ixalma hilleri Roelofs
1ex. 28. V. 2004, 千々石町田代原。樹葉上から採集。本州、四国、九州、奄美大島、石垣島に分布。サネカズラにつくという。

13.オビデオゾウムシ Acalyptus trifasciatus (Roelofs)
3exs. 2. VIII. 2004, 西有家町須川、センダン葉上より。図鑑類には四国・九州に分布するが少ないと記述されているが、福岡県内では低地の河川敷や、筑後平野のクリークまわりのセンダンに多い。本州でもセンダンがあれば生息しているようで、大阪周辺と島根県の標本を確認している。

さらに、中薗洋行氏により島原半島産として追加されているのは以下の種である。


14.マルマグソコガネ Mozartius jugosus (Lewis)
島原市眉山(中薗, 2004a)、冬季にイノシシの糞より採集されている。本種はネズミの穴に生息することが発見されて採集方法が開発され、九州では久留米市高良山を東限として、熊本・佐賀・長崎県本土と、対馬、五島(福江島)、山口県に分布することが明らかになった。

15.アオマダラタマムシ Nipponobuprestis amabilis (Snellen van Vollenhoven)
島原市眉山・新山2丁目(中薗, 2004b)、大部分は飛翔中のものを採集されているようである。

16.シラホシナガタマムシ Agrilus aiazon Lewis
島原市眉山(中薗, 2004b)、飛翔中。

17.キンモンナガタマムシ Agrilus auropictus kanohi Y.Kurosawa
島原市眉山(中薗, 2004b)、エノキのスウィーピングとあるが、通常はシイの葉上いる。本種は台湾から琉球を経て本州南岸まで分布するが、台湾(原亜種)と八重山は別亜種。比較的少ないが、長崎市でも採れている。

18.サビナカボソタマムシ Coraebus ishiharai Y.Kurosawa
千々石町田代原牧場・キャンプ場;西有家町高岩山(中薗, 2004b)、ヤマボウシのスウィーピングで採集されているらしい。全国的には非常に少なく、局地的な分布を示す種であるが、九州では九重高原など比較的採集例が多い。長崎県内では唯一の記録と考えられる。

以上を加えると島原半島産は102科1990種になる。今後とも調査を継続するつもりである。

引用文献
今坂正一(1999-2002)島原半島の甲虫相1〜5. 長崎県生物学会誌, (50): 125-170, (51): 19-39, (52): 56-73, (53): 65-84, (55): 53-73.
中薗洋行(2004a)マルマグソコガネをイノシシ糞より採集. 鰓角通信, (8): 36.
中薗洋行(2004b)島原半島産タマムシ科4種の記録. こがねむし, (68): 46.
妹尾俊男(2004)ミツモンヒゲナガゾウムシの学名と分布について. 象鼻虫 ZOU-MUSHI, (3): 12.


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