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「日本産アオハムシダマシ属の再検討」への訂正と追加

今坂正一

Additions and corrections to "Review of the genus Arthromacra in Japan".
Shoichi Imasaka

Key words: Additions and corrections, in Japan, genus Arthromacra, Coleoptera, Tenebrionidae, Lagriinae.

はじめに
本誌前号(参考文献参照)において、上記タイトルの元に日本産アオハムシダマシ属について総括をした。これは、本誌の中村慎吾博士を始めとして、多数の研究者・同好者のご支援の賜として完成したと考えている。

その後、さっそく、協力頂いた方々に別刷りを差し上げてお礼を申し上げたところ、種々の感想と共に、報文に於ける筆者の勘違いやケアレスミスに起因する間違いをご教示頂いた。その中には、検視標本の同定誤りや、地名の記述ミスなど、改めるべき事柄が多く見られたので、ここに謹んでお詫びすると共に訂正しておきたい。

また、その後1、2の新しい知見も得られているので、それらについても述べておきたい。種々の誤りをご指摘頂き、その後も変わらず支援頂いている協力者の方々に、心より厚くお礼申し上げる。また、前にも増して新しい情報をお寄せ頂いた白石正人、門脇久志の両氏にも重ねてお礼申し上げる。


A.訂正

1.ホロタイプの地名と採集者名の誤り
キイアオハムシダマシ Arthromacra narukawai Imasaka, 2005のホロタイプの採集地名
p92, 14行目 Mt. Chichigatakeは、Chichigataniの誤り、同じく採集者名のN. NakanishiはM. Nakanishiの誤りである。

この2点に関しては、p113, 12行目の邦文による採集地と採集者名、図版XVII説明上から11行目および14行目の地名に関しても、同様に訂正したい(父が岳→父が谷)。


2. 本文の記述の誤り
p70, 9行目 太良岳→多良岳
p74, 15行目 青木一夫→青木良夫

1)〒830-0037 福岡県久留米市諏訪野町1736-3(1736-3 Suwano-machi, Kurume City, Fukuoka Prefecture, Kyushu, Japan, 830-0037)

3. 分布の記述の誤り
オオダイアオハムシダマシ Arthromacra oodaigahara Imasaka, 2005の分布について、
p81, 4行目(英文)、p106, 17行目、いずれも、分布から和歌山県を除く。大峰山系と大台ヶ原山系は和歌山県には含まれていなかった。


4. 同定誤りによるデータの訂正
これは、九州大学博物館所蔵の佐々治コレクションについて、返却の前に標本を再整理していて気が付いたものである。


a. p144, 6行目 ニシアオハムシダマシ Arthromacra kyushuensis Nakane, 1997の名の下に1ex.(KUM), 宝満山, 31. V. 1957, 神谷寛之採集として記録した個体は、アオハムシダマシ Arthromacra viridissima Lewis, 1895の誤りであったので訂正したい。


b. p152, 下から5行目 アカハムシダマシ Arthromacra sumptuosa Lewis, 1895の名の下に1ex.(KUM), 北沢峠, 27. VII. 1960, K. Yano leg.として記録した個体は、オオアオハムシダマシ Arthromacra majuscula Nakane, 1994の赤銅色の個体の誤りであったので訂正したい。


5. 採集データ(主として読み)の訂正
p80, 下から5行目  Amakawa-mura→Tenkawa-mura
p92, 16行目  Kameoka→Kameyama
p100, 11, 13, 19および26行目 Togo Is.→Dogo Is.
p100, 14行目 Dankagami→Dangyo
p100, 14行目 Aburai→Yui
p100, 15行目 Naku→Nagu
p100, 16行目 Minamitani-rindo→Minamidani-rindo
p100, 17行目 Tamawakasu-shrine→Tamawakasunomikoto-shrine
p120, 下から9行目およびp141, 下から6行目頭ヶ島→桃頭島
p141, 下から8行目尾鷲町→尾鷲市
p144, 下から5行目石鎚山二の峰小屋→石鎚山二の鎖小屋
p152, 7行目 栗尾→栗生
p156, 2行目 2004→2005
p156, 6行目および図版XXIの図版説明2および3 玉若酢神社→玉若酢命神社
他にも有るかもしれないが、現時点で判明しているのは以上である。


B.新知見の追加

1.アオハムシダマシ四国より初記録
前報で記録した四国産アオハムシダマシ属は、キアシアオハムシダマシ Arthromacra flavipes Nakane, 1994、ニシアオハムシダマシ、アカハムシダマシ、シコクオオアオハムシダマシ Arthromacra shiraishii Imasaka, 2005の4種のみで、西日本の他の地域と比較して、最も種数が少ない点を強調しておいた。その上で、四国を取り囲むように紀伊半島、中国地方、九州と分布するアカガネハムシダマシ Arthromacra decora (Marseul, 1876)、アオハムシダマシ、ミヤマアオハムシダマシ Arthromacra kinodai Nakane, 1997の3種が四国から記録がないことにも疑問を呈した。

報文の発表後、間髪を入れず、そのうちのアオハムシダマシが、白石正人氏により採集されたので、四国新記録として記録しておきたい。多分、本種は四国でも九州同様、やや早い時期に出現しているものと想像される。

◎アオハムシダマシ Arthromacra viridissima Lewis, 1895
3♂♂2♀♀, 愛媛県東温市(旧重信町)皿ヶ嶺, 29. V. 2005, 白石正人採集
1♂, 愛媛県久万高原市石鎚山, 29. V. 2005, 白石正人採集
2♂♂5♀♀, 愛媛県新居浜市別子山銅山越, 5. VI. 2005, 白石正人採集
1♂1♀, 愛媛県新居浜市別子山銅山越, 12. VI. 2005, 白石正人採集
2♀♀, 愛媛県西条市瓶ヶ森, 26. VI. 2005, 白石正人採集
なお、2005年度、瓶ヶ森では白石正人氏が3回アオハムシダマシ類を採集されているが、その個体数の変化が各種の発生期を比較的良く現していると思われるので、以下に示しておきたい。当地では四国産5種全てが産する。

表-1  2005年度瓶ヶ森で採集されたアオハムシダマシ類の個体数

この表から、四国高地において、キアシアオハムシダマシとニシアオハムシダマシの発生ピークが一ヶ月ほどずれること、アオハムシダマシに対してシコクオオアオハムシダマシの発生期のピークが、より盛夏に近い方にずれていることが推定される。上記、5月29日〜6月12日の皿ヶ嶺、鎚山、別子山銅山越などの各採集地においても、アオハムシダマシは得られているもののシコクオオアオハムシダマシは採集されていないことによっても、この推定は補強される。この2種の関係は、中部山岳に於けるアオハムシダマシとオオアオハムシダマシの関係によく似ているようである。

なお、四国産のアオハムシダマシとシコクオオアオハムシダマシはよく似ているので、写真を示す。前者の触角第8〜10節がそれほど長くないのに対して、後者はかなり長い。上翅も前種がやや短いのに対して、後種はかなり長い。また、腿節の色はアオハムシダマシの方が基部の黄褐色部がかなり広いのに対して、シコクオオアオハムシダマシの方はごく狭いので、その点で区別は容易である。♂交尾器も多少違った形をしている。

以上の結果、四国では九州と並んで5種を産することになった。九州では、九州のみの

 

側面  背面
♂交尾器
側面背面


四国産アオハムシダマシ   シコクオオアオハムシダマシ
(銅山越産♂)   (瓶ヶ森産パラタイプ♂)
固有種は知られていないので、その点では、シコクオオアオハムシダマシという固有種を有する四国の方がファウナとして興味深いと言えるかもしれない。

先に述べたように、アカガネハムシダマシとミヤマアオハムシダマシについても、四国に分布しない理由は思いつかないので、さらに、地元諸兄の奮起をお願いしたい。


2.オキアオハムシダマシ Arthromacra okiana Imasaka, 2005の隠岐島前からの発見
本種は隠岐島後西郷町大久付近の個体を基に記載した種であるが、前報では、島後(どうご)のみから報告した。つい先頃、門脇久志氏から、島前(どうぜん)西ノ島産が送られてきた。島前では最近黒いアオカナブンの亜種など、固有亜種が報告されているので、あるいは、島後産とは異なる形質を持つ個体群が分布するかもしれないと期待して調べてみた。結果としては、予想通り若干の異なる形質が見られたが、亜種を分けるまでの確信には至らなかったので、とりあえず、本種として記録しておきたい。

3♂♂1♀, 島根県隠岐島前西ノ島焼火(タクヒ)神社, 7. VI. 1999, 門脇久志採集;
3♀♀, 島根県隠岐島前西ノ島美田(みた)ダム上流, 11. VI. 1999, 門脇久志採集;
1♂1♀, 島根県隠岐島前西ノ島黒木林道, 11. VI. 1999, 門脇久志採集;
3♂♂, 島根県隠岐島前西ノ島焼火林道, 12. VI. 1999, 門脇久志採集;
1♂, 島根県隠岐島前西ノ島美田, 30. V. 2000, 門脇久志採集.

島後産は、他のアオハムシダマシ類では、♂交尾器のパラメラの背面中央部〜先端部にある縦溝が、不明瞭であるという特徴が見られた。しかし、今回検視した西ノ島産8♂♂はいずれも比較的明瞭に縦溝を持っており、その点ではむしろ、本土のアオハムシダマシに近いと考えられる。
もう一つの特徴である腿節基部の黄褐色部と先端半の黒褐色部の境界が不明瞭である点と、その暗色部の緑色の金属光沢がごく弱い点においては、島後産と共通している。
また、検視した5♀♀の中に、腿節の暗色部が無く、全体黄褐色の個体が2♀♀含まれていたが、♂ではそのような個体は見られなかった。この2♀♀が別の種である可能性も無いことはないが、ここまで酷似した2種が、この狭い島前に分布すると考えるのは多少無理があるので、今のところ、それらの個体もオキアオハムシダマシの変異型と考えるのが自然であろう。それを裏付ける傍証として、残りの3♀♀も、腿節の暗色部は雄よりかなり狭く、色も薄かった。結局、島前産の♀は暗色部が縮小する傾向が強く、一部は消失するという風に理解している。なお、島後産パラタイプの19♀♀のうち、腿節全体が黄褐色になる個体は見ていないが、1♀のみ図示したように暗色部が縮小し、やや淡色化した個体も見られたので、オキアオハムシダマシの種として♀は暗色部が縮小する傾向が有ると思われる。正しくは、西ノ島の、より淡色のものが祖先型と考えているので、暗色部が縮小したのではなくて、本来は全体か黄褐色のものが黒化したと推定される。それで、島後のものが島前の個体群より黒化が進んだ(子孫的である)と、言い直す必要があるだろう。
事実、腿節全体が黄褐色になる種は、本種が含まれるアオハムシダマシ種亜群7種のうちでは、最も祖先的と考えているヤクアオハムシダマシ Arthromacra yakushimana Imasaka, 2005が知られているだけである。この腿節が単色であるという形質は、オキアオハムシダマシの系統的位置を考える上からも、興味深い補強材料になると考えられる。
以上、訂正と追加の新知見を記録した。可能なら今後もタイムリーに記録していきたい。

参考文献
今坂正一(2005)日本産アオハムシダマシ属の再検討. 比和科学博物館研究報告, (44): 61-163.

 


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