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日出生台で採集した甲虫類

今坂正一

はじめに
玖珠町日出生台(くすまち・ひじゅうだい)は大分県北部、観光地として有名な湯布院町の西北10km程に位置する標高約700mの高原状の台地である。大部分は草地で、カシワ・コナラ林が点在し、自衛隊の演習地として使用されている。

佐藤・平松(1977)と中島(1977)は、日出生台湿原について、九州未記録の種を含む特異な昆虫相を持つ地域であることを報告した。次いで、野尻湖昆虫グループ(1985)や佐藤・佐々木(1991)により、カツラネクイハムシとスゲハムシの分布が公表されて、九州では稀な高層湿原としての日出生台の存在がさらにクローズアップされ、その後多くの同好者が採集に訪れるようになった。さらに、佐藤(1991, 1996)、三村(2004)などの報告もあり、現在までに日出生台からネクイハムシ類を中心として25種の甲虫類が記録されている。

筆者は佐々木茂美氏からこの日出生台の情報を得て、1993年5月19日と1995年7月16日の2回当地を訪れ、湿地を探して採集を試みた。湿地らしい水たまりが或る場所は、いずれも自衛隊の演習地に隣接するか、あるいは演習地内にあるようで、湿地を探して彷徨っては何度か検問で追い返され、注意を受ける始末で、満足に採集することはできなかった。

結局、ごく一部で採集可能な湿地を見つけてなんとか91種が採集できた。それでも、採集品の中には、中島(1977)が述べた以上に九州の他の地域では見い出せない種が多く含まれていたので、文献記録も含めて報告しておきたい。

報告に当たり、日出生台産甲虫についての大分県内での分布記録についてご教示いただき、本文の搭載にもお骨折りいただいた本誌事務局の三宅 武氏、マメゾウムシの同定とゾウムシ類の食草についてご教示頂いた森本 桂九州大学名誉教授、日出生台の採集場所等について紹介いただいた佐々木茂美氏、以上の方々に心より厚くお礼申し上げる。

A.日出生台での採集状況
1993年5月19日は主として湿地の周辺でネクイハムシを探しながらの採集であり、1995年7月16日はむしろ草原性の甲虫を狙っての採集であったと思う。既に10年ほどの歳月が経っているので、採集時の詳細な状況は失念したが、まばらなカシワ・コナラ林の周囲に草地が広がり、細い小川が流れていて、一部が溜まって湿地状になっていたと記憶している。

採集結果は、表1に示したように5月19日36種90個体、7月16日58種175個体で、合計22科91種265個体であった。前後2回の採集時期が2ヶ月ほどずれているが、バラルリツツハムシ、クワノミハムシ、チャイロチョッキリの3種が重複しただけで、他はそれぞれ一度だけの採集であるのは興味深い。植生が単調なこともあり、一時期に見られる種の数はあまり多くないようである。

その後、日出生台では米軍の実弾射撃訓練などが行われるようになり、前にも増して湿地での採集は難しいものになっていると考えられる。

B.注目種
自身で採集した種のうち、興味深い種について以下に示す。これらの種は大分県のみならず九州全体においても記録が少なく、当地に生息することは注目される。


1. キイロセマルコミズギワゴミムシ Elaphropus latissimus (Motschulsky)(写真1)
7月に1ex.のみ採集した。本州,九州に分布し、湿地や溜め池で、水際の石下などから採集される。大分県では、西田・大塚(2000)による飯田高原の記録が唯一のものである。福岡・長崎・佐賀の各県でも記録されている。


2. ミズギワアトキリゴミムシ Demetrias amurensis Motschulsky (写真2)
7月に1ex.のみ採集した。松本(2000)によると、本種はアシ、オギ、ススキなどの茎や葉の表面、葉鞘などで見られ、根元の腐植層にも潜り込むという。

関東以北の湿地や大河川では比較的普通に見られるというが、九州ではいずれも九重町内の地蔵原(中島, 1977)、九重山(八尋, 1994)、長者原(八尋, 1994; 松本, 2000)、飯田高原(西田・大塚, 2000)の記録が知られているのみである。当地は九州内での2番目の産地(町単位では)になる。


3. クロズジュウジゴミムシ Lebia cruxminor (Linnaeus) (写真3)
7月に1ex.のみ採集した。北海道から琉球、大陸まで広く分布する種であるが、黒地に赤褐色の斑紋が鮮やかな珍しい種で、筆者は初めて採集した。九州では、比較的採集記録が多い福岡県を除いて、ほとんど採集記録を知らない。大分県初記録。


4. チャバネクシコメツキ Melanotus seniculus Candeze (写真4)
5月に2exs.を採集した。本州、四国、九州に分布し、大河川の河川敷など比較的広い草地で見られるが、余り多くない。各地で記録されている。


5. ササキニンフジョウカイ Asiopodabrus sp. 39 (写真5)
5月に3exs.を採集した。未記載種で、最初飯田高原で見つけたが、その後、本州(広島)、九州(福岡、大分、熊本、佐賀)の各県と対馬で得られている。主として疎林、草地、河川敷などで見つかっている。西日本のAsiopodabrusとしては、比較的大型の種。


6. トゲアシチビケシキスイ Meligethes schenklingi Reitter
7月に1ex.を採集した。北海道〜九州に分布し、記録は多くない。オドリコソウの花などに集まるので、注意すれば各地で見つかるかもしれない。福岡県では香春岳、笠置山、城山で記録されているが、長崎・佐賀県の記録はない。大分県初記録。


7. ズカクシナガクチキムシ Anisoxya conicicollis Champion (写真6)
7月に1ex.を採集した。本州、九州に分布するが、記録は多くない。筆者のベースグラウンドであった長崎県島原市上木場のクリの枯死部についた黒い菌類から多く採集したことがあり、当地産はカシワかコナラの枯れ枝に付いていたと思う。福岡・佐賀県からは記録がない。大分県初記録。


8. クロマメゾウムシ Bruchus loti Paykull (写真7)
7月に3exs.を採集した。森本桂九大名誉教授に同定して頂いた。森本博士のご教示によると、「従来クロマメゾウムシの学名として用いられていたBruchus maculipes Picは本種のシノニム。北海道と本州(千葉、佐渡)などでは海岸のハマエンドウから普通に採れるが、福岡の海岸ではこれから採れない。ヨーロッパではミヤコグサにつく記録もあり、その属名Lotusが種小名のもとになっいる。Sharp(1886)はLewisの採集品でKawachiを挙げているが、これがいままでの最も西の記録。私も長野、千葉以北の標本を見ただけ。」とのこと。確か、クサフジの花で採集したと思う。九州初記録。


9. スゲハムシ Plateumaris sericea (Linnaeus) (写真8)
5月に28exs.を採集した。多数が見られたが、採集したものは大部分が青紫色の個体で、緑青色と銅色のものが若干含まれていた。本種は大陸と北海道〜九州に分布し、国内産の高層湿原の虫としては最も分布が広く、産地では個体数も多い。

しかし、九州では野尻湖昆虫グループ(1985)によると、佐賀県厳木村天川平野沼、大分県由布院町(玖珠町の誤り)日出生台段原、同高陣ヶ尾湿原、福岡県下広川村(Kimoto, 1964aより引用)などの記録が知られている程度である。本種は大分県RDB(レッドデータブック)のIA(絶滅危惧IA類)として、絶滅の恐れのある種に選定されている。


10.ルリナガツツハムシ Smaragdina mandzhura (Jacobson) (写真9)
7月に4exs.を採集した。金緑色に輝く美しい種である。大陸と本州(岡山)、九州(福岡、大分、佐賀・長崎)の各県から知られる。安定的な草原に限って生息しており、木元・滝沢(1994)は、国内の産地として岡山県上川村、福岡県平尾台、大分県湯布院町塚岡(塚原の誤り)高原を上げている。また、西田(2002)は佐賀・長崎県境の大野原高原での観察例を報告している。これらの2編は食草としてススキをあげているが、高倉(1972)は、「従来の記録はハギを食草としてあげてあるが、確認できていない」由述べており、食草については観察が不足しているようである。当地は国内で5番目の産地となる。


11. タテスジキツツハムシ Cryptocephalus nigrofasciatus Jacoby (写真10)
7月に9exs.を採集した。橙黄色地に、上翅の合わせ目と平行に黒褐色の縦筋紋を持つが、紋の色彩には個体変異があり、ほとんど消失する個体もある。本種も大陸と本州〜九州に分布し、ヤマハギ・ヤナギなどを食草とする。高倉(1989)はクロスジツツハムシの和名で福岡県各地(英彦山地、福智山、平尾台、香春岳、田川市、香春町、大任町)から記録しているが、佐賀・長崎両県では見たことがない。


12.ジュウシホシツツハムシ Cryptocephalus tetradecaspilotus Baly (写真11)

13.ハギツツハムシ Pachybrachis eruditus (Baly)
7月に前者1ex.、後者2exs.を採集した。両種とも丈の低い草原でマルバハギなどの葉上で見られるが、かなり安定した草原でないと見られない。大分県内では、前者は既に中島(1977)により日出生台と地蔵原から、後者は高倉(1978)によりホソツツハムシとして九重山から記録されている。この2種は多良山系(長崎・佐賀県)でも知られている。


14.カシワコブハムシ Chlamisus consimilis (Chujo) (写真12)
7月に5exs.を採集した。本州、九州に分布する。九州では、九重の飯田高原や阿蘇高原など、高地のカシワ・コナラの疎林で、葉上に比較的普通に見られることが知られているが、それ以外の地方ではほとんど記録がない。


15.ヒメウスイロハムシ Monolepta nojiriensis Nakane (写真13)
7月に11exs.を採集した。本州、九州、対馬に分布する。本種もマルバハギなどハギ葉上で見られ、かなり安定した草原でないと見られない。福岡県では平尾台の記録があるが、佐賀・長崎県本土では知られていないようである。大分県初記録。


16.クロルリトゲトゲ Rhdinosa nigrocyanea (Motschulsky) (写真14)
5月に3exs.を採集した。大陸と本州〜九州に分布し、ススキなどを食草とする。福岡県では知られているが、長崎・佐賀県では記録されていないようである。黒くてトゲのあるよく似た種として、カヤノトゲトゲ Hispellinus moerens (Baly)が各地で見られ、当地でも中島(1977)により記録されているが、この種は爪が1本であるのに対して、本種は普通に2本である。


17.アカアシホソクチゾウムシ Apion viciae (Paykull)
7月に2exs.を採集した。北海道、本州、九州に分布する。森本博士のご教示によると、北海道では普通だが、九州では稀で、熊本県波野村のクサフジから採集したことがある、とのこと。

福岡・大分県では比較的記録が多いが、長崎・佐賀県では知られていない。


18.シロモンチビゾウムシ Nanophyes albovittatus Roelofs
7月に1ex.を採集した。本州、四国、九州に分布する。食草はヒメミソハギ類と考えられており、河原などの草地で得られるが少ない。福岡県(田川市東町)と長崎県(島原市熊野神社、諫早市)から報告されているが、佐賀県では記録がない。大分県初記録。


19.ホソウスイロチビゾウムシ Nanophyes mihokoae Morimoto (写真15)
7月に1ex.を採集した。四国、九州のみに分布する。本種も食草はヒメミソハギ類と考えられており、水辺の草地で見られるが少ない。福岡県では福智山、小石原村芝峠、若杉山で記録されているが、佐賀・長崎県では記録がない。大分県初記録。


20.チビアオゾウムシ Hyperstylus pallipes Roelofs
7月に11exs.を採集した。本州〜琉球に分布し、マルバハギなどの葉上に見られる。福岡・長崎・佐賀の各県でも記録されている。大分県では高倉(1978)による九重山の記録が唯一知られる。


21.ババスゲヒメゾウムシ Limnobaris babai Chujo et Morimoto (写真16)
5月に3exs.を採集した。本州、九州に分布し、湿原のスゲで見られるという。当地では、中島(1977)や佐藤・佐々木(1991)も報告しており、比較的見つけやすいものと思われる。大分県内では西田・大塚(2000)による飯田高原の記録もある。福岡・佐賀・長崎県での記録はないようである。

なお、採集できなかった日出生台産甲虫のうち、カツラネクイハムシは高層湿原に特有の種で、瀬戸内海を囲むように、近畿以西の本州、四国、九州に分布する。九州では九重町地蔵原、湯布院町(玖珠町の誤り)日出生台段原、同東方湿地(以上、野尻湖昆虫グループ, 1985)、日出生台(佐藤・佐々木, 1991; 佐藤, 1991)で記録されている。本種は、環境省RL(レッドリスト)のDD(情報不足)、および大分県RDB(レッドデータブック)のIA(絶滅危惧IA類)として、絶滅の恐れのある種に選定されている。

またクロスジチャイロテントウは、九州では中島(1977)による鳴子川渓谷(九重町九酔渓)と地蔵原、西田・大塚(2000)による飯田高原の記録が知られ、極めて分布が限られている。同様に、大分県RDBの準(準絶滅危惧)として選定されている。

C.日出生台産甲虫の種構成
従来の記録に自身の採集品を加えると、表1に示したように、日出生台産甲虫として26科109種を数えることが出来る。このうち、最も多いのはハムシ科で36種、次いでゾウムシ科13種、コガネムシ科8種、テントウムシ科とオトシブミ科が各6種、コメツキムシ科5種、オサムシ科・ゲンゴロウ科・ジョウカイボン科・ケシキスイムシ科が各4種などと続く。

依存する環境ごとに出現種の比率を求めてみると、特徴的なものとしては、(1)湿地性の種22種(20.2%)、(2)草原性の種30種(27.5%)、(3)カシワ・コナラ林の依存種18種(16.5%)などが含まれており、一部は他所ではなかなか見られないものであった。これらの他に普通に草地〜林縁、二時林などに見られる種が39種(35.8%)見つかっている。植生ごとの種構成は以下の通り。

1.湿地性の種22種(20.2%)
ヒラタキイロチビゴミムシ、キイロセマルコミズギワゴミムシ、ミズギワアトキリゴミムシ、クロズマメゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウ、ハイイロゲンゴロウ、シマゲンゴロウ、オオミズスマシ、ガムシ、ヒメガムシ、ヒメマルハナノミ 、ヒゲナガハナノミ、クロスジチャイロテントウ、カツラネクイハムシ、ネクイハムシ、イネネクイハムシ、スゲハムシ、シロモンチビゾウムシ、ホソウスイロチビゾウムシ、イネミズゾウムシ、ババスゲヒメゾウムシ、アカアシクチブトサルゾウムシ。

水中で生活するゲンゴロウ類とガムシ類、幼虫が水棲のマルハナノミとヒゲナガハナノミ、水辺で生活するゴミムシ類、水中および水辺で育つ植物をホストとするハムシ・ゾウムシ類が含まれる。九州の山地では高層湿原の存在そのものが極めて稀な状態なので、湿地性の種がこのように高率で見つかる所は今のところほとんど報告されていないのではないかと思う。

以上のうち、ミズギワアトキリゴミムシ、カツラネクイハムシ、ネクイハムシ、スゲハムシ、ホソウスイロチビゾウムシ、ババスゲヒメゾウムシの各種は、九州での記録は少なく、分布は局所的である。大変貴重であると共に、当湿地の成立を考える上でも重要である。また、クロスジチャイロテントウは、近畿地方以東の本州では、大きな川の河川敷(丈の低い草地)に比較的普通に見られるが、九州の河川では記録されていない。水辺で生活していることは明らかだが、ホストについてはほとんど未知である。

2.草原性の種30種(27.5%)
ヒラタアオコガネ、ウスチャコガネ、キスジコガネ、マメコガネ、コガタクシコメツキ、チャバネクシコメツキ、クロクシコメツキ、ササキニンフジョウカイ、ナナホシテントウ、キアシクビボソムシ、クロマメゾウムシ、ルリナガツツハムシ、タテスジキツツハムシ、キボシツツハムシ、ジュウシホシツツハムシ、ハギツツハムシ、アオバネサルハムシ、ヒトミヒメサルハムシ、ヒメキバネサルハムシ、ウリハムシモドキ、イチゴハムシ、ヒメウスイロハムシ、アカバナトビハムシ、ヨモギトビハムシ、カヤノトゲトゲ、クロルリトゲトゲ、ヒメジンガサハムシ、クロケシツブチョッキリ、アカアシホソクチゾウムシ、チビアオゾウムシ。

このうち、ルリナガツツハムシ、タテスジキツツハムシ、ジュウシホシツツハムシ、ハギツツハムシ、ヒメウスイロハムシなどは、いずれもマルバハキなどハギ類をホストとすると思われるが、九州では平尾台のような安定的であって比較的丈の低い草原でしか見つかっていない。九州の中央部には九重高原から阿蘇にかけて広大な高地草原が存在するが、その大部分は牧草地など人為的に管理されている草地か、あるいは放置されてススキ原→疎林に遷移中であり、これらの草原性の種の生育に適した丈の低い安定的な草地の存在は極めて少ない。そのためこれらの種の分布はかなり局所的で数少なく、大変貴重である。また、クロマメゾウムシは、本州以北では海岸のマメ科に見られるのに、九州では高原の湿地草原から見つかったことは興味深い。

一方、キスジコガネ、チャバネクシコメツキ、ササキニンフジョウカイ、キアシクビボソムシ、クロルリトゲトゲ、アカアシホソクチゾウムシ、チビアオゾウムシなども草地性で、比較的規模の大きい草原なら各地に見られるが、分布はやや局地的である。その他の種はホストがあれば、狭い空き地の草地などでも見つかることがある。

3.カシワ・コナラ林の依存種18種(16.5%)
ヒメアサギナガタマムシ、ズカクシナガクチキムシ、ヨツボシチビヒラタカミキリ、タマツツハムシ、カシワコブハムシ、カサハラハムシ、クロオビカサハラハムシ、ヒメクロオトシブミ、ルリオトシブミ、アシナガオトシブミ、チャイロチョッキリ、カシルリチョッキリ、クリイロクチブトゾウムシ、コカシワクチブトゾウムシ、ケブカクチブトゾウムシ、カシワクチブトゾウムシ、クロホシクチブトゾウムシ、ジュウジチビシギゾウムシ。

このうち、大部分の種はカシワ林のみならずコナラ、クヌギ、クリの林でも見られ、比較的生息範囲は広いようである。しかし、ヨツボシチビヒラタカミキリはカシワ林のみで見られ、カシワコブハムシもカシワ林以外の記録は極めて少ない。

4.その他の生態を持つ種39種(35.8%)
39種が含まれるが、クロズジュウジゴミムシ、ツマフタホシテントウなどは記録が少なく珍しい種である。これらの種が依存する生息環境については良く解っていない。それ以外の種は、概ね草地〜林縁で普通に見られる種である。

日出生台で記録されている特徴的な種としては、草地性の種が最も多く、次いで湿地性の種、そしてカシワ・コナラ林の依存種の順であった。景観的には草原の比率が最も多く、次いでカシワ・コナラ林で、二時林と湿地はごく狭い範囲のみ存在した。面積比からすると、湿地性の種の数がかなり多く、草地性の種はそれほど多くない印象を受けた。

D.まとめ
1.大分県玖珠町日出生台で採集した甲虫22科91種を記録した。

2.このうち、九州初記録1種、大分県初記録6種を含む注目される種21種について、九州内での分布記録、生態など判明している知見を述べ、16種については標本写真を示した。

3.過去の文献記録を含めて、日出生台産甲虫26科109種のリストを作成し、それらの種が依存する植生、国内での分布についても示した。

4.その表を元に、環境別の種構成、種数を示し、日出生台産甲虫の特徴について考えてみた。

5.日出生台の甲虫を特徴づけるものは、草地性の種と湿地性の種、そしてカシワ・コナラ林の依存種であり、特に、湿地性の種の数がかなり多いことが明らかになった。そのいくつかの種については、現在のところ九州では日出生台に限って分布が確認され、あるいは、大分県内の同様の環境(高地湿原+草原)のみの生息が知られており、非常に貴重である。

幸いにして、日出生台は、自衛隊演習地として当分は一般的な開発などからは免れ、湿地と草地、カシワ・コナラ林の全てが1セットとして存続すると推定されるので、早い時期における産する種の絶滅の可能性は少ないと考えられる。しかし、九州でも数少ない貴重な高層湿地+草原であるので、今後、より正確に甲虫相の全貌を把握する必要があると考えられ、調査を継続し見守っていきたいと考えている。


図版説明

1. キイロセマルコミズギワゴミムシ    9. ルリナガツツハムシ

2. ミズギワアトキリゴミムシ    10. タテスジキツツハムシ

3. クロズジュウジゴミムシ11.ジュウシホシツツハムシ

4. チャバネクシコメツキ  12.カシワコブハムシ

5. ササキニンフジョウカイ13.ヒメウスイロハムシ
a:全体図, b:♂交尾器(上背面, 下腹面)

6. ズカクシナガクチキムシ14.クロルリトゲトゲ

7. クロマメゾウムシ15.ホソウスイロチビゾウムシ

8. スゲハムシ16.ババスゲヒメゾウムシ


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