今坂正一の世界
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奄美大島でキンモンフタオタマムシ?を発見

今坂正一・下野誠之

筆者の一人、下野は、奄美大島において、キンモンフタオタマムシ?と思われる1個体を採集したので、報告しておきたい。
1ex. 鹿児島県奄美大島大和村湯湾釜. 28. VI. 2003. 下野誠之採集 (図上左) 体長20mm

この個体は湯湾釜から金作原に向かう道路沿いに生えていた直径約5cmの樹木(樹種不明)の樹幹で、コウモリガ類の幼虫が作るような木屑に頭部を突っ込んでいたところを発見し採集した。
当日は梅雨明け直後ということもあってか、非常に蒸し暑く感じた。下野にとって奄美大島を訪れるのは初めてで、午前中を観光と移動に使い、午後からは湯湾釜周辺で蝶を中心とした採集を開始する予定でいた。しかし、午後は暑さのためにすぐに採集を始める気にならず少し休憩をとることにして道路端に座った。そして何気なく反対側の道路端の木を眺めていると陰になったところに何か甲虫がおり、遠目にはウバタマムシかと思ったが、近づいてみると全く違うタマムシであることに気付いた。種名はわからなかったが、上翅の特徴的な形状を図鑑で見た記憶があったので、とりあえず持ち帰って調べようと採集したのが本個体である。
キンモンフタオタマムシ Dicerca nishidai Toyama, 1986は、西田信夫氏により、1986年7月24日に鹿児島県トカラ列島中之島楠木(海岸沿いの集落)において桑の樹幹に静止中の♂個体が採集され、遠山(1986)により新種記載された種である。大桃・秋山(2000)の解説によると、2000年までに、トカラ中之島のみで雌雄合わせて5個体が確認されている。
本種が含まれるフタオタマムシ属 Dicercaには、世界で約50種が知られており、ユーラシア〜北アフリカと北アメリカの中緯度地方に分布し、特に北アメリカで種数が多い。
日本周辺では、国内より本種、トゲフタオタマムシDicerca tibialis Lewis (分布:本州、四国、九州)、フタオタマムシDicerca furcata aino Lewis (分布:北海道;原亜種が朝鮮半島、サハリン、中国北部〜ヨーロッパに分布)の3種が、また台湾からタイワンフタオタマムシDicerca kurosawai Hattori et Akiyama、中国雲南省〜チベットからシナフタオタマムシDicerca corrugata Fairmairが知られる。本属中、上翅後方に金毛の斑紋を持つ種としては、唯一本種が知られている。
今回、奄美大島において発見された個体は、本属の♂に通常見られる中脛節基部内側のトゲ状突起を欠き(図上左)、♀と考えられるが、性別は未確認である。図上右に示した遠山(1986)によるHolotype (Pl. 1-2:♂)や、図下左・右に示した大桃・秋山(2000)の図版(Pl. 64, 763-1:♂, 763-2:♀)と比較すると、奄美大島産は前胸背がより縦長で、上翅翅端部の伸長が弱いため、結果として上翅長は短い。金毛斑紋もより後方に位置しており、翅端は斜めに裁断され、合わせ目のトゲ状突起は顕著ではない等、形態の差がみられ、亜種程度に区別されるかもしれない。

参考文献
遠山雅夫(1986)日本産フタオタマムシ属の1新種.月刊むし,(189):18-19.
西田信夫(1986)新種キンモンフタオタマムシの発見.月刊むし,(189):20-21.
藤田宏(1986)キンモンフタオタマムシのニュースを聞いて.月刊むし,(189):22.
大桃定洋・秋山黄洋(2000)月刊むし・昆虫大図鑑シリーズ 4, 世界のタマムシ大図鑑.341pp. むし社.

図版説明
図上左:奄美大島産、図上右:トカラ中之島産Holotype ♂:遠山(1986)より引用、
図下左:トカラ中之島産♂:大桃・秋山(2000)より引用
図下右:トカラ中之島産♀:大桃・秋山(2000)より引用


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