今坂正一の世界
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多良山系の固有種はどこからきたか

今坂 正一

多良山系の甲虫相を特徴づける種として、固有種について考えてみたい。これらの種の分布を考えることにより、甲虫相の成り立ちや特徴の一端が明らかになってくるものと考えられる。

I.多良山系に分布する固有種
今回、多良山系に分布する固有種として、表7に示した25種を対象とする。これらの種あるいは亜種(型)は、少なくとも、分布範囲が多良山系を含む九州の一部に限定され、平戸を除く周辺の離島、朝鮮半島、本州、四国などには分布しないことが共通している。表7中、網掛けした範囲に分布していると考えられ、○が確認されている記録、その他の印は各(型)亜種の分布を示す。なお、×印は両方の型とその中間型が混棲していることを示している。
表7.多良山系固有種分布表
A.多良山系固有種
以下の7種は、少なくとも隣接する背振山系、雲仙山系には分布しておらず、多良山系固有種と考えられる。あるいは、国見山系など周辺の山地に分布している可能性もあるが、現状では多良山系の記録しかなく、多良山系固有種として扱う。なお、タラヌレチゴミムシとタラクビボソジョウカイについては、隣接する黒髪山に産することが知られているが、種の分布型から判断する限りこれらの種も同様の性格を持つと考えられるので多良山系固有種として扱う。

1.タラヌレチゴミムシApatrobus kurosawai Morita (図1, 2)
体長10mm前後、後翅が退化しややヒョウタン型をした黒色のゴミムシで、佐賀県(太良町中山)・長崎県(諫早市五家原岳、高来町金泉寺)の記録がある。多良山系と黒髪山(西田私信:未発表)の山地帯(標高300m以上)に分布し、広葉樹林内の渓流沿い、ガレ場などの湿った石下に生息する。北九州の英彦山山系に生息するヒコサンヌレチゴミムシApatrobus hikosanus Habuに似るが、雄交尾器等で区別される。中間の背振山系ではどちらの種も記録されていない。

図1.タラヌレチゴミムシ
上段:背面図
左:♂ 長崎県多良山系五家原岳 19. VII. 1983. 今坂採集
右:♀ 同上
下段:♂交尾器(Morita 1986より引用)  1, 2, 3, 4, 5, 6.
図2.タラヌレチゴミムシの分布
○:タラヌレチゴミムシ、●:ヒコサンヌレチゴミムシ、▲:ヒゴヌレチゴミムシ(仮称)

2.タラオオズナガゴミムシ(仮称) Pterostichus sp. (図3, 4)
体長20mm前後、頭部と大腮が大きく雌では左側が肥大化する、後翅が退化した黒色のゴミムシで、佐賀県(太良町中山)・長崎県(諫早市五家原岳、高来町金泉寺)の記録がある。多良山系の山地帯(標高400m以上)に分布し、広葉樹林内の渓流沿い、ガレ場などの湿った石下に生息するが個体数は少ない。

本種を含むオオズナガゴミムシ種群は、朝鮮半島、対馬、四国、五島福江島、九州西北海上の生月島、それに九州本土各地に分布しており、本州以北には分布しない大陸系の種群と考えられる。本種群は上翅が短く側縁が丸い離島群と、上翅が長く側縁が直線的な九州本土群に二分され、前者はそれぞれ別種として区別されている。対馬産(図3-上段右)はツシマオオズナガゴミムシPterostichus opacipennis Jedolicka、四国産(図3-中段右)はシコクオオズナガゴミムシ Pterostichus yoshidai Kasahara、五島福江島産(図3-中段中)はゴトウオオズナガゴミムシ Pterostichus amanoi Nakane、生月島産(図3-上段中右)はイキツキオオズナガゴミムシ Pterostichus sakagamii Morita (記載者の森田氏は、イキツキナガゴミムシを提唱しているが、オオズナガゴミムシ種群に含まれることは明らかなので、ここでは、このような和名を使用する)である。

後者はかつて、英彦山から記載されたヒコサンオオズナガゴミムシ Pterostichus macrocephalus Habu唯1種と考えられていたが、廣川(1994, 1998)の調査により、西九州を始めとして、各地の個体群は体型・雄交尾器など形態が異なることが指摘され、筆者は彼の示唆する個体群は山系ごとに別の種と考えている。九州本土では、英彦山から白髪岳までの九州山地にかけての東九州にヒコサンオオズナガゴミムシが分布し、背振山系にはセフリオオズナガゴミムシ Pterostichus sp. 2 (図3-下段, No.9, 19, 20)が、多良山系(図3-上段左, 中左, 下段, No.10〜13, 21, 22)に本種が分布し、この他、北九州市産(図3-上段中中)も別の個体群(仮称ヒラオダイオオズナガゴミムシ Pterostichus sp. 3)と考えている。九州を中心として周辺の離島、四国などで種分化を起こしている点や、本州以北に分布しない点、九州本土内でさらに地域ごとに変化している点から、最終氷期より一つ〜二つ前の氷期に朝鮮半島から九州本土に侵入し、まず離島で分化し、その後九州本土内で分化したと考えられる。

図3.タラオオズナガゴミムシ
上段:背面図
左:タラオオズナガゴミムシ(未記載)♂ 長崎県多良山系金泉寺 24. V. 1983. 今坂採集
中左:タラオオズナガゴミムシ(未記載)♀ 同上 10. V. 1983. 今坂採集
中中:ヒラオダイオオズナガゴミムシ(未記載)♀ 福岡県北九州市平尾台 1. X. 1996. 今坂採集
中右:イキツキオオズナガゴミムシ♂ 長崎県生月島 4. XI. 1996. 廣川典範採集
右:ツシマオオズナガゴミムシ♀ 長崎県対馬御岳 18. V. 1984. 今坂採集
中段:背面図
左:ヒコサンオオズナガゴミムシ(Habu 1955より引用)
中:ゴトウオオズナガゴミムシ(笠原1990より引用)
右:シコクオオズナガゴミムシ(Kasahara 1985より引用)
下段:背面図および♂交尾器(廣川 1994より引用)
図4.タラオオズナガゴミムシの分布
○:タラオオズナガゴミムシ、  ◆:ツシマオオズナガゴミムシ、
*:イキツキオオズナガゴミムシ、■:ゴトウオオズナガゴミムシ、
●:セフリオオズナガゴミムシ、 ▲:ヒコサンオオズナガゴミムシ、
★:ヒラオダイオオズナガゴミムシ

3.タラダケオノヒゲアリヅカムシ Bryaxis taradakensis Lobl, Kurbatov et Nomura (図5, 6)
体長1.4mm前後の、後翅が退化した褐色のアリヅカムシで、通常樹林内の落葉層中で生活する。Bryaxis属は多くの種を含み、外見も良く似通っていて、主として♂交尾器で区別されている。本種は、佐賀県(塩田町唐泉山、鹿島市経ヶ岳)・長崎県(多良岳:原記載)の記録がある。

図5.タラダケオノヒゲアリヅカムシ
左:同属のBryaxis protevusの背面図(横山 1943より引用)
右:♂交尾器(Lobl et al. 1998bより引用、24. タラダケオノヒゲアリヅカムシ)
図6.タラダケオノヒゲアリヅカムシの分布
○:タラダケオノヒゲアリヅカムシ

4.タラダケヒゲナガアリヅカムシ Pselaphogenius shintaro Nomura (図7, 8)
体長1.4mm前後の、後翅が退化した黒褐色のアリヅカムシであり、佐賀県(鹿島市経ヶ岳:原記載)・長崎県(多良岳)の記録がある。多良山系の山地帯に分布し、広葉樹林内の落葉層に生息していると考えられる。Pselaphogenius属に含まれるアリヅカムシは、小顎髭と肢が特に長く、主として雄交尾器で区別され、西九州では山系ごとに別の種に区別される。Nomura(1999)によると、長崎市周辺にアラメヒゲナガアリヅカムシPselaphogenius debilis (Sharp)、西彼杵半島にセイヒヒゲナガアリヅカムシPselaphogenius seihiensis Nomura、島原半島と多良山系に
シマバラヒゲナガアリヅカムシPselaphogenius shimabaranus Nomura、加唐島、平戸島と厳木町以西の松浦地方にマツウラヒゲナガアリヅカムシPselaphogenius patrius Nomuraが分布す
る。多良山系では北部にマツウラが分布し、中央高地に本種とシマバラが混棲し、本種群の3種が分布しているが、西九州のその他の地域では1種のみが側所的に分布している。マツウラとシマバラの多良山系における分布を、一度分断隔離されて種分化を起こした後の、二次的な侵入と仮定すると、ヒメキンイロジョウカイの色彩型の分布と驚くほど似通っており、共通の分化の要
因が示唆される。なお、本種の学名は、多良山系の金泉寺に住んでいたとして、古謡に歌われている「岳のしんたろうさん」に因むという。

図7.タラダケヒゲナガアリヅカムシ(Nomura 1999より引用)
上段:アラメヒゲナガアリヅカムシ背面図と、アラメ・セイヒ・マツウラ・シマバラ・タラダケヒゲナガアリヅカムシなど近縁種5種の分布図
下段:A, B, C, D, E. タラダケヒゲナガアリヅカムシ♂交尾器
図8.タラダケヒゲナガアリヅカムシの分布
○:タラダケヒゲナガアリヅカムシ、●:シマバラヒゲナガアリヅカムシ、
◆:アラメヒゲナガアリヅカムシ、 ■:セイヒヒゲナガアリヅカムシ、
▲:マツウラヒゲナガアリヅカムシ、▼:サイカイヒゲナガアリヅカムシ

5.タラチビジョウカイ(仮称) Malthodes sp. 2 (図9, 10)
体長5mm前後、全体黒色の小型のジョウカイボンで、佐賀県(鹿島市奥平谷、太良町中山)・長崎県(大村市南河内林道)の記録がある。多良山系の山地帯(標高400m以上)に分布し、広葉樹林内の林縁の葉上で見つかる。チビジョウカイ属Malthodes の種は、雄腹節末端部が立体的で複雑な形をしており、背板と腹板で雌の腹部を把握して交尾体制維持するという特徴を持つ。この形態は種ごとに異なっており、未記載種を含めて九州にも14種が分布する。本種は、九州〜本州に広く分布するキュウシュウチビジョウカイMalthodes kyushuensis Takakuraに近縁で、末端腹板の形は柄杓形で、その柄の部分がより強く曲がり、基部の突起も短いことで区別可能で、未記載種と考えられる。キュウシュウチビジョウカイは雲仙山系と脊振山系には分布しており、本種と住み分けているように思える。

図9.タラチビジョウカイ(未記載)
上段:タラチビジョウカイ♂ 長崎県大村市南河内林道 23. IV. 1985. 今坂採集
下段:キュウシュウチビジョウカイ♂ 長崎県島原市眉山 10. IV. 1977. 今坂採集
左:背面図、中:腹部側面、右:腹部腹面
図10.タラチビジョウカイの分布
○:タラチビジョウカイ、●:キュウシュウチビジョウカイ

6.タラクビボソジョウカイ Hatchiana nishidai Imasaka (図11, 12)
体長10mm前後、頭と上翅が黒色、前胸背と肢が赤褐色のきれいな細型のジョウカイボンで、長崎県(高来町多良岳横断林道、高来町轟の滝)の記録がある。多良山系と黒髪山の山地帯(標高300m以上)に分布し、広葉樹林内の林縁の葉上で見つかるが非常に少なく、5♂が知られるのみ。黒髪山から1♂が記録されているが、現段階では多良山系固有種とほぼ同じ性格を持つと考えて良いと思う。英彦山山系に分布するヒコサンクビボソジョウカイHatchiana hikosana (Nakane et Makino)に近縁で、雄交尾器がやや異なり、肢の色が赤褐色になることで区別できる。

本種が所属するクビボソジョウカイ属 Hatchianaは、極東と北アメリカ中北部に分布域が限定され、日本に最も多くの種(12種)が分布する。Hatchiana属は3種群に分かれ、本種はその内のishiharai種群に含まれる。ishiharai種群には5種が含まれるが、中国地方・四国・紀伊半島に広く分布するタキモトクビボソジョウカイHatchiana takimotoana (Kiriyama)を除く本種を含む4種は、ごく狭い範囲(一つの山系)に側所的に分布する。九州の多良山系と黒髪山に本種が、英彦山山系にヒコサンクビボソジョウカイが分布し、四国の石鎚山系にシコククビボソジョウカイHatchiana ishiharai (M. Sato)が、また剣山系にはサノクビボソジョウカイHatchiana sanoi Imasakaが分布する(Imasaka, 2001)。

朝鮮半島にも、本種群に含まれると考えられるHatchianaが分布し、本州中部以東には本種群が分布しないことから、本種群もオオズナガゴミムシ種群同様、朝鮮系と考えられる。本種はヒコサンクビボソジョウカイに最も近縁であるが、本種の方が祖先的であると考えられるので、ヒコサンクビボソジョウカイは本種から分化した種であると考えている。本種は今坂が共著者の西田に献名し、新種として記載した。

図11.タラクビボソジョウカイ
上段:背面図
左:タラクビボソジョウカイ♂ 長崎県高来町轟の滝 6. V. 1989. 今坂採集 (Holotype)
中:ヒコサンクビボソジョウカイ♂ 福岡県宗像町城山 10. V. 1998. 今坂採集
右:ヒコサンクビボソジョウカイ♀ 同上
下段:♂交尾器(Imasaka 2001より引用)
138, 139. パラメラ背面、143, 144. パラメラ腹面、148, 149. パラメラ側面、
153, 154. メディアンローブ側面、158, 159. メディアンローブ背面.
138, 143, 148, 153, 158. タラクビボソジョウカイ、
139, 144, 149, 154, 159. ヒコサンクビボソジョウカイ
図12.タラクビボソジョウカイ
○:タラクビボソジョウカイ、●:ヒコサンクビボソジョウカイ

7.タラメツブテントウ(仮称) Sticholotis sp. (図13, 14)
体長2mm前後、赤褐色で上翅には6黒紋を持つ。長崎県(大村市黒木、高来町轟の滝)の記録がある。多良山系の低山帯(標高200〜300m付近)に分布し、常緑広葉樹林内の林縁の葉上や樹皮下で見つかる。当初はメツブテントウ Sticholotis substriata Crotchとして記録したが、より小型で表面の点刻が密で大きく、斑紋パターンはむしろ、ムツボシテントウ Sticholotis punctata Crotchに似るが、黒紋はより小さいことにより区別される。日本未記録種あるいは未記載種と考えられる。

図13.タラメツブテントウ(未記載:背面図)
1ex. 長崎県高来町轟の滝 19. IV. 1989. 今坂採集
図14.タラメツブテントウの分布
○:タラメツブテントウ
タラヌレチゴミムシ、タラオオズナガゴミムシ、タラダケオノヒゲアリヅカムシ、タラダケヒゲナガアリヅカムシの4種は、後翅が退化しており、各地で分化する所謂分化型生物の典型である。

また、タラチビジョウカイとタラクビボソジョウカイは、後翅があり飛翔可能であるが、特に後者は種群全体においてそれぞれ分布域が狭く、山系ごとに分化する傾向があり、やはり分化型生物の好例である。

タラチビジョウカイについては、本種群は姉妹種が多いが、種群として所謂分化型生物とは呼べない。しかし、最も近縁なキュウシュウチビジョウカイが九州〜本州に広く分布するにもかかわらず多良山系では見つからず、変わって本種が分布することから、あるいは後者から多良山系において分化した可能性も考えられる。

これらの種の由来について、タラメツブテントウについては、後翅も存在し飛翔可能と考えられるが、分布や系統関係も不明で、今のところ分布について論じる材料がない。また、タラダケオノヒゲアリヅカムシについては、近縁種が本州に分布すると言うこと以外に情報が無く、同様に論じられない。残る5種のうち、タラチビジョウカイは多良山系を除く九州一円に、そしてタラヌレチゴミムシとタラクビボソジョウカイは英彦山山系に姉妹種が分布する。また、タラオオズナガゴミムシとタラダケヒゲナガアリヅカムシは、姉妹種が西九州各山系で細かく種分化している。多良山系固有種といっても、その由来や分化の程度などは、種ごとに様々であると考えられる。

B.多良山系と雲仙の固有種
多良山系と雲仙で記録されている固有種で、背振山系や国見山系でも記録がない。


8.シマバラヒゲナガアリヅカムシ Pselaphogenius shimabaranus Nomura (図15, 8)
体長1.5mm前後の後翅が退化した黒褐色のアリヅカムシであり、佐賀県(鹿島市経ヶ岳:原記載)の記録がある。多良山系と雲仙山系の山頂部付近に分布し、広葉樹林内の落葉層に生息している。Pselaphogenius属に含まれるアリヅカムシの西九州における分布状況は、タラダケヒゲナガアリヅカムシの項で述べた通りである(分布図は図8参照)。本種群の中では、本種とタラダケヒゲナガアリヅカムシのみが同じ地点での混棲が知られており、その他の種は総て側所的に分布している。このことは、あるいは本種は島原半島で分化した後で、二次的に多良山系に侵入したのではないかと推察される。

図15.シマバラヒゲナガアリヅカムシ(Nomura 1999より引用)
F, G, H, I, J. ♂交尾器

9.ウンゼンケナガクビボソムシ Neostereopalpus imasakai Nakane (図16, 17)
体長10mm前後、頭と前胸背、肢が黒色、上翅が褐色の細型のクビボソムシで、佐賀県(鹿島市奥平谷)・長崎県(大村市黒木)の記録がある。多良山系と雲仙の山地帯(標高300m以上)に分布し、渓流沿いにある広葉樹林内の林縁で、花上、葉上などで見つかるが個体数は少ない(図16-上段左, 下段, No. 4, 7)。九州では、Neostereopalpus属の種としては、上翅が褐色で本種に近縁と考えられるヒゴケナガクビボソムシ Neostereopalpus kyushuensis Nakane(図16-上段中左, 下段, No. 3, 9, 10)と、上翅が黒色のクロケナガクビボソムシ Neostereopalpus oitaensis oitaensis Nakane(図16-上段中右, 下段, No. 2, 5, 6)、およびその福岡亜種 Neostereopalpus oitaensis kidoi Nakaneの2種1亜種が分布し、主として雄交尾器の形などで区別される。中間の背振山系では両種群とも記録されていない。また、本州には後者に外見がよく似るケナガクビボソムシ Neostereopalpus niponicus (Lewis)が分布する(図16-上段右, 下段, No. 1, 8)。日本産Neostereopalpus属はこれら上翅が褐色種群と黒色種群の2種群に区別して考えることが可能で、英彦山から九州中央山地までの東九州では2種群が重複して分布している。Neostereopalpus属の祖先種より、九州中央山地において褐色種群と黒色種群に分化し、その後、褐色種群のうち多良山系や雲仙など西九州に分布が伸びた後に分化したのが本種で、黒色種群のうち本州へ分布が伸びて分化したのがケナガクビボソムシであると考えることが可能である。本種は故中根猛彦博士が今坂に献名し、新種記載した(中根,1983)。

図16.ウンゼンケナガクビボソムシ
上段:背面図
左:ウンゼンケナガクビボソムシ♂ 長崎県大村市黒木 1. VI. 1982. 今坂採集 (Paratype)
中左:ヒゴケナガクビボソムシ♀ 熊本県泉村葉木 16. VI. 1984. 今坂採集
中右:クロケナガクビボソムシ♂ 大分県九重黒岳 21. VI. 1979. 宮田彬採集 (Paratype)
右:ケナガクビボソムシ♂ 愛知県面の木峠 29. VI. 1975. 大石久志採集
下段:頭部と♂交尾器(中根 1983より引用)
1, 2, 3, 4. 頭部背面、5, 6, 7, 8, 9, 10. ♂交尾器(左:背面、右:側面)
1, 8. ケナガクビボソムシ、2, 5, 6. クロケナガクビボソムシ、
3, 9, 10. ヒゴケナガクビボソムシ、4, 7. ウンゼンケナガクビボソムシ
図17.ウンゼンケナガクビボソムシの分布
○:ウンゼンケナガクビボソムシ、■:クロケナガクビボソムシ、
●:ヒゴケナガクビボソムシ
B'.多良山系と雲仙の固有亜種

10.ルリクワガタ雲仙亜種 Platycerus delicatulus unzendakensis Fujita et Ichikawa (図18, 19)
体長13mm前後、雄は上翅が濃いルリ色を呈するのが本亜種の特徴で、佐賀県(太良町中山、太良町多良岳)・長崎県(高来町金泉寺)の記録がある。多良山系と雲仙の山地帯(標高800m以上)に分布し、広葉樹林内の立ち枯れ、樹皮下などでみられる。多良山系では生息範囲も山頂部の一部のみで個体数が少ない。多良山系産は、雲仙産と殆ど差がない個体から、かなり、原亜種に近いタイプまで変化に富み、移行的である。このことから、多良山系産を本亜種とすることに疑問を持つ研究者もおり、多良山系の個体群は、完全に雲仙産の個体群と同一というわけではないと考えられる。原亜種は北海道から九州まで分布し、九州では英彦山から九州脊梁に分布し、中間の背振山系では両亜種とも記録されていない。

ルリクワガタ多良山系個体群の変異状況を考えると、その成立について二通りの説が考えられる。第一は、多良山系は雲仙山系と一緒に九州本土から分断・隔離されて、両山系を通じてルリクワガタ雲仙亜種が形成されたとの考えである。その後に、雲仙山系とは分断され、九州本土と再接続し、背振山系を経由して原亜種が再侵入したために、多良山系においては雲仙亜種と原亜種が混じり合い、その後の経過時間が短いために中間的で個体による変異が大きい現状が出現したとの見方である。

第二は、筆者はこちらがより有力と考えているが、雲仙山系が、原亜種が分布していた多良山系から分断・隔離されて、ルリクワガタ雲仙亜種が形成された。多良山系にはその後雲仙山系から雲仙亜種が逆侵入し、在来の原亜種と混じり合ったために、多良山系では現状のような個体群が形成されたとの考えである。第一の説より、分断・接続の回数が一回少なくて済むこと、現在背振山系での本種の分布が知られないこと、アリヅカムシ科のPselaphogenius属において、シマバラヒゲナガアリヅカムシは島原半島で分化した後で、二次的に多良山系に侵入したのではないかと考えられることなどにより、後者の説が有力と考えている。

図18.ルリクワガタ雲仙亜種(背面図)
左:♂ 長崎県高来町金泉寺 17. IV. 1984. 今坂採集
右:♀ 同上
図19.ルリクワガタ雲仙亜種の分布
○:ルリクワガタ雲仙亜種、△:ルリクワガタ原亜種
以上の内、シマバラヒゲナガアリヅカムシはタラダケヒゲナガアリヅカムシ種群のメンバーで、後翅退化の分化型生物である。

また、ウンゼンケナガクビボソムシとルリクワガタは後翅があり飛翔可能である。このうち、ウンゼンケナガクビボソムシはやはり分化型生物であると考えられる。ルリクワガタは多良山系と雲仙を除く日本本土の総ての地域でほぼ変異が無く、この地域のみで特化しており、本来分化型生物であるとも判断しにくいが、国内に姉妹種と考えられる同属3種が分布することや、近縁のコルリクワガタ Platycerus acuticollis Y.Kurosawaでも九州を始め、各地で亜種化していることを考えると、準分化型生物とも表現できる分化しやすい素質をもつ種と言えるかも知れない。

C.多良山系と背振山系の固有種
多良山系と背振山系で記録されている固有種で、雲仙や国見山系でも記録がない。


11.タラダケナガゴミムシ Pterostichus taradakensis Kasahara et Ohtani  (図20, 21)
体長20mm前後、後翅が退化した黒色のゴミムシで、佐賀県(太良町中山、太良町多良岳)・長崎県(諫早市五家原岳、高来町金泉寺)の記録がある。多良山系と背振山系の山頂付近に分布し、広葉樹林内の渓流沿い、ガレ場などの湿った石下に生息するが個体数は少ない。本種は英彦山から白髪岳までの東九州と四国に分布するヒコサンナガゴミムシ Pterostichus hikosanus Kasahara (阿蘇山以南は亜種 ssp. higonis Kasahara、四国産は亜種 ssp. kurosonis Kasahara)に近縁で、体型や雄交尾器で区別できる。本種やイマサカナガゴミムシ、ヒコサンオオズナガゴミムシなどを含む種群は雄の腹節末端部に稜、トゲなどの付属物がなく、主として西日本に分布するが、九州産Pterostichus 属は全てがこの種群に含まれる。なお、当然ながら、タラダケナガゴミムシとヒコサンナガゴミムシが分化した後で、ヒコサンナガゴミムシの各亜種が分化したと考えられる。

図20.タラダケナガゴミムシ(背面図)
上段:背面図
左:タラダケナガゴミムシ♂ 佐賀県太良町中山 1. VI. 1982. 西田光康採集
中左:タラダケナガゴミムシ♀ 長崎県諫早市五家原岳 19. VII. 1983. 今坂採集 (Paratype)
中右:タラダケナガゴミムシ♂ 長崎県神崎町背振山 26. VI. 1993. 廣川典範採集
右:ヒコサンナガゴミムシ南九州亜種♂ 熊本県泉村白鳥山 19. VI. 1984. 今坂採集
下段:背面図など(Kasahara & Ohtani 1985より引用)
左:背面図♂
右:6. ♂腹板末端節、7a, b, c, d, e, f. ♂交尾器
図21.タラダケナガゴミムシの分布
○:タラダケナガゴミムシ、  ●:ヒコサンナガゴミムシ原亜種、
◎:ヒコサンナガゴミムシ南九州亜種、△:ヒコサンナガゴミムシ四国亜種

12.ヒメチャイロコガネ Sericania minuscula Nomura  (図22, 23)
体長10mm前後、全体褐色でツヤのあるコガネムシで、長崎県(大村市笹ヶ岳、諫早市五家原岳)の記録がある。多良山系と背振山系の低山〜山頂付近に分布し、広葉樹林内の花上や、コケの下より得られている。近隣の朝鮮半島と対馬にはクロスジチャイロコガネ原亜種 Sericania fuscolineata fuscolineata Motschulskyが、本州と四国にはその亜種ssp. nipponensis Nomura、北海道には亜種ssp. ezoensis Nomuraが分布するが、九州にはこの種は分布せず、その代置種としてごく近縁な本種が分布すると考えている。チャイロコガネ属Sericaniaに含まれている種は、各地で分化しており、分布範囲も狭い。灯火や葉上、樹皮下などで得られているが、生態的な知見は少ない。コガネムシ科の中では、ツヤケシビロウドコガネ属Sericaと共に地域性が強いグループで、地方ファウナを論じる良い材料になると思われるが、採集と同定が難しいこともあり、大部分の地域で調査が不十分である。本種とクロスジチャイロコガネの分化の後で、クロスジチャイロコガネの各亜種が分化したと考えられる。

図22.ヒメチャイロコガネ(左:♂背面図、右:♂交尾器背面)
♂ 長崎県大村市笹ヶ岳 25. V. 1996. 山本宣征採集
図23.ヒメチャイロコガネの分布
○:ヒメチャイロコガネ、●:クロスジチャイロコガネ原亜種
この内、タラダケナガゴミムシは後翅退化の分化型生物である。

また、ヒメチャイロコガネを含むSericania属は後翅があり飛翔可能であるが、分布範囲が狭く、各地で分化しており分化型生物であると考えられる。ただ、本属についての研究は分類・分布共に不十分で、近縁関係や姉妹種との分布境界など未解明の部分が多い。現状では、種の説明で示した大まかな系統関係と分布状況しか判明していない。

D.多良山系より西側の固有種
多良山系以西の狭い範囲に分布する固有種で、ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシの近縁種は五島列島、コナガキマワリの近縁種は奄美大島と沖縄本島に分布する。


13.マツウラヒゲナガアリヅカムシ Pselaphogenius patrius Nomura (図24, 8)
体長1.5mm前後の後翅が退化した黒褐色のアリヅカムシであり、多良山系では北端に位置する佐賀県(塩田町唐泉山と嬉野町虚空蔵山:いずれも原記載)の記録がある。常緑広葉樹林内の落葉層で採集されている。Pselaphogenius属に含まれるアリヅカムシの西九州における分布状況は、タラダケヒゲナガアリヅカムシの項で述べた通りで、本種群の中では、加唐島、唐津市大島、平戸島と厳木町以西の松浦地方と広く分布している(分布図は図8参照)。さらに、野村(投稿中)の解説によると、本種の雄交尾器の内部骨片には地域変異があり、武雄型、黒髪山型、東松浦型、相知型、厳木型、北松浦型の6個体群に区別できるが、亜種を形成するかどうかは不明であるらしい。

図24.マツウラヒゲナガアリヅカムシ(Nomura 1999より引用)
A, B, C, D, E. ♂交尾器の地域変異

14.ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシ Misolampidius clavicrus (Marseul) (図25, 26)
体長15mm前後、ヒョウタン型で漆黒のゴミムシダマシで、後翅は退化する。伊万里市と諫早市を結ぶ線の西側(国見山系、黒髪山、西彼杵半島、多良山系西部、長崎半島)のみに分布し、多良山系では佐賀県(嬉野町虚空蔵山)・長崎県(大村市狸ノ尾、諫早市白木峰)の記録がある。平地〜低山地(標高500m以下)の広葉樹林や、隣接するマツ林、スギ植林内の立ち枯れ、樹皮下などでみられる。本種は、背面の点刻が大きく、雄の中脛節の先端前内側に鋭いトゲを持つことによりMisolampidius属の他の種と区別される。

本種には背面の点刻の状態、♂交尾器などに地域変異があり3個体群に区別され、伊万里型(図25-左下)が国見山地に、長崎型(図25-左上、中上)が西彼杵半島・多良山系・長崎市周辺に、野母崎型(図25-中下)が野母半島先端部に分布する(今坂・中條1983)。多良山系では、同時にツヤヒサゴゴミムシダマシ Misolampidius okumurai Nakaneとマルヒサゴゴミムシダマシ Misolampidius molytopsis (Marseul)が分布するが、この2種と本種とは同一地点では採集されていない。五島には本種に近縁なゴトウトゲヒサゴゴミムシダマシ Misolampidius gotoensis M.T.Chujo et Imasakaが分布するが、後者は体長と体表の点刻が小さく、雄脛節のトゲと雄交尾器の形が異なることで区別される。

本種はG. Lewisの採集品をMarseul (1876)が記載したが、最近まで、この学名は国内各地に広い分布域を持つツヤヒサゴゴミムシダマシにあてられていた。中條・今坂(1982)は、長崎・佐賀両県に分布が限定される本種が真のMisolampidius clavicrus (Marseul) であることが指摘し、ツヤヒサゴゴミムシダマシには上記学名をあてるよう提唱した。雄交尾器やトゲの形状などから、ゴトウトゲヒサゴゴミムシダマシが本種の祖先形と考えられ、五島と本土とが陸続きになった頃に本土に侵入し、その後本種に分化し、さらに、3個体群に分化したと考えられる。

図25.ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシ
左4個体:ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシ背面図
左上:長崎型♂ 長崎県諫早市白木峰 13. II. 1983. 桃下大採集
中上:長崎型♀ 長崎県大村市狸ノ尾 27. II. 1980. 今坂採集
左下:伊万里型♂ 長崎県世知原町国見山 11. II. 1983. 松尾照雄採集
中下:野母崎型♂ 長崎県野母崎町権現山 24. II. 1982. 今坂採集
右:ゴトウトゲヒサゴゴミムシダマシ背面図♂ 長崎県五島福江島七岳 24. II. 1982. 今坂採集  (Paratype)
図26.ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシの分布
○:ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシ長崎型、
◎:ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシ伊万里型、
△:ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシ野母崎型、
●:ゴトウトゲヒサゴゴミムシダマシ

15.コナガキマワリ(オオヒョウタンキマワリ) Eucrossoscelis araneiformis (Allard) (図27, 28)
体長7mm前後、弱い銅色光沢を持つ細いヒョウタン型のゴミムシダマシで、後翅は退化する。前種とほぼ同じく伊万里市と諫早市を結ぶ線の西側(国見山系、黒髪山、西彼杵半島、多良山系、長崎半島と島原半島)のみに分布し、多良山系では佐賀県(嬉野町吉田、鹿島市奥平谷、太良町中山)・長崎県(大村市黒木、大村市郡岳、高来町金泉寺、諫早市五家原岳、高来町轟の滝)の記録がある。平地から山地まで標高にかかわらず広葉樹林の立ち枯れ、枯れ枝などで梅雨前の短期間にみられる。本種は1894年にG. Lewisが自らの採集品をStrongylium helopioides Lewisとして新種記載したが、その後約80年ほど国内から再発見されず、中根(1972)は幻のゴミムシダマシとして解説した。今坂(1977)はその幻の種を国内から再発見したもので、今坂(1979)でその分布の概要を解説した。その後、中條ほか(1983)は上記学名およびオオヒョウタンキマワリの和名を提唱している。同属の近縁種ヒョウタンキマワリ E. broscosomoides Nakaneが奄美大島、ヒメヒョウタンキマワリ E. michioi M.T.Chujoが沖縄本島に分布しており、本種とは色彩や雄交尾器の形で区別される。

図27.コナガキマワリ(背面図)
♀ 長崎県大村市黒木 1.VI. 1982. 今坂採集
図28.コナガキマワリの分布
○:コナガキマワリ、 ●:ヒョウタンキマワリ
△:ヒメヒョウタンキマワリ
D'.多良山系〜長崎半島の固有地方型

16.ヒメキンイロジョウカイ多良・長崎型 Themus midas midas (Kiesenwetter)  (図29, 30)
体長15mm前後、やや大型のジョウカイボンで、上翅には金属光沢を持ち、花上や葉上で見られ、山頂に吹き上げで飛来し、灯火にも集まる。対馬、五島、九州、四国、本州などに分布し、九州周辺では各地で色彩変異がみられる。多良山系では佐賀県(鹿島市奥平谷、太良町中山)・長崎県(大村市黒木、大村市狸ノ尾、諫早市五家原岳、諫早市白木峰、高来町轟の滝)の記録がある。各地で多くの色彩変異が知られ、記載はされていないが、それぞれ亜種的な個体群であると考えている。

◎対馬亜種(図29-上段左、中) ssp. tsushimensis M. Satoは上翅は紫色、翅端に黄褐色部が無く、足は黒い。対馬、平戸、国見山系、馬渡島に分布する。なお、筆者は亜種と考えているが、本来は種として記載され、降格の処置はまだ行われていない。

◎暗緑型(図29-上段右)は、上翅は暗緑色で、アオジョウカイやソボムラサキジョウカイ北九州亜種などによく似た色を呈す。死後標本はより暗色〜暗紫色に変化する。本型や緑型、キンイロジョウカイの緑型は死後このような色彩変化を起こし、非常に興味深い現象であるが、上記2種や本種の他の型ではそのような経験がないのは不思議である。足は黒く、翅端に黄褐色部は無い。西彼杵半島に分布する。

◎多良・長崎型(図29-中段左、中)は、上翅は明紫色、足は黄褐色、翅端の黄褐色部は狭く、対馬亜種と島原半島型の移行的な特徴を持つ。基本型に含まれる緑色系の個体は含まれていない。多良山系と長崎市周辺、野母半島に分布する。

◎島原半島型(図29-中段右)は、上翅は唐金〜明紫色、足は黄褐色、翅端の黄褐色部は広い。島原半島に分布する。

◎基本型(図29-下段左、中)は、上翅は紫〜唐金〜緑色と色彩変化が多く、南部にいくほど緑色の個体が増える。足は黄褐色、翅端の黄褐色部は狭い。背振山系、英彦山、本州各地の個体群は上翅の紫色がやや明るいものが大部分で、時に翅端の黄褐色部がやや広い。九重山から市房山までの東九州各地では、特に阿蘇山以南で緑色の個体が増える。

◎緑型(図29-下段右)は、上翅は明るい緑色、足は黄褐色、翅端の黄褐色部は狭いものから広い個体まで変化がある(死後標本はやや青紫色に変化するが、生時は明るい緑色)。九州南端、甑島、五島に分布し、五島の個体群は最も色彩が鮮やかである。

概略としては上記のような個体群に区別することが可能で、分布図を示すと図-30のようになる。本種の各色彩型は、多少、移行形や個体群内の色彩変異も含んでおり、各型を厳密に区別することは難しい。

しかし、大別すると、足と触角が黒色で翅端に黄褐色部を持たない対馬亜種と暗緑型(無翅端紋群)と、足と触角の大部分が黄褐色で翅端に黄褐色部を持つ個体群(黄褐翅端紋群)に分かれる。前者は九州西北部に分布が限定され、後者は九州の多くの地域と本州に分布する。後者のうち、多くの色彩変異を含む基本形が九州中央部の大部分を占め、その周辺地域に比較的限定された色彩型を持つ個体群が、各個に狭い範囲に分布しており、これらは基本型の一部が分断・隔離されて形成されたと考えられる。さらに、多良・長崎型は、基本型と対馬亜種の中間的な特徴を持ち、触角と翅端の黄褐色部の広さは大きく変化し、対馬亜種そっくりのものまでみられる。また、対馬亜種の分布域である国見山系で稀に翅端に黄褐色部を持つ他の個体が見られる。

これらのことから、本種は、一旦、無翅端紋群と、黄褐翅端紋群に二分された後、それぞれ、無翅端紋群は対馬亜種と暗緑型に、黄褐翅端紋群は島原半島型、基本型、緑型に分化した。その後、対馬亜種と島原半島型が接触して、両型の移行的な多良・長崎型が形成されたと考えることが可能である。本種の色彩型の分布により、九州本土は6つのブロックに分割され、特に西九州では4ブロックに分割される。図49に、九州本土の山地地形の配置を示した。濃色部分は標高200m以上の山地である。海面が200m上昇すると西九州は多くの島に分断され、多島海の様相を呈する。このことは、本種の個体群が細かく分断され、分断・接続を繰り返していたことを地形の上でも裏付けるものと考えられる。各型はそれぞれ亜種を構成すると考えている。

図29.ヒメキンイロジョウカイの色彩変異(背面図)
上段:無翅端紋群
左:対馬亜種♂ 長崎県対馬厳原町有明山 19. V. 1984. 今坂採集
中:対馬亜種♀ 長崎県平戸島安満岳 15. V. 1980. 今坂採集
右:暗緑型♂ 長崎県西彼杵半島県民の森 31. V. 1987. 野田正美採集
中段:黄褐翅端紋群
左:多良・長崎型(黒化タイプ)♂ 佐賀県太良町中山 7. VI. 1986. 西田光康採集
中:多良・長崎型(通常タイプ)♂ 長崎県大村市黒木 23. V. 1984. 今坂採集
右:島原半島型♂ 長崎県島原市上木場 9. V. 1983. 今坂採集
下段:黄褐翅端紋群
左:基本型(紫タイプ)♂ 熊本県砥用町大井草 15. V. 1983. 今坂採集
中:基本型(緑タイプ)♂ 同上
右:緑型♂ 長崎県五島中通島奈良尾 2. V. 1983. 日下部良康採集
図30.ヒメキンイロジョウカイの分布
○:ヒメキンイロジョウカイ多良・長崎型、△:ヒメキンイロジョウカイ島原半島型、
◇:ヒメキンイロジョウカイ基本型、▽:ヒメキンイロジョウカイ緑型、
□:ヒメキンイロジョウカイ暗緑型、◎:ヒメキンイロジョウカイ対馬亜種
タラダケヒゲナガアリヅカムシの項で述べたように、本種の色彩型とタラダケヒゲナガアリヅカムシ種群の分布は、西九州において多くが対応しており、対馬亜種:マツウラヒゲナガ、暗緑型:セイヒヒゲナガ、アラメヒゲナガ+タラダケヒゲナガ:多良・長崎型、島原半島型:シマバラヒゲナカの一部、ということになる。また、国見山系→多良山系、島原半島→多良山系の二つの再侵入があったと考えられる点も共通している。両種の地域個体群の成立には、ほとんど共通の要因が影響していることが示唆される。

以上の内、マツウラヒゲナガアリヅカムシ、ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシ、コナガキマワリ後翅退化の分化型生物である。また、ヒメキンイロジョウカイは飛翔可能な種であるが、再三述べているように分化型生物であると考えられる。

マツウラヒゲナガアリヅカムシについては、タラダケヒゲナガアリヅカムシの項で述べたとおりで、ヒメキンイロジョウカイの変異との関連についても上記に述べたとおりである。

しかし、ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシとコナガキマワリについては、多良山系に分布する他の固有種とは事情がまったく異なり、隣接する背振山系を始として、九州本土内に近縁種・姉妹種はみられない。ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシは五島列島にゴトウトゲヒサゴゴミムシダマシが、コナガキマワリは奄美大島にヒョウタンキマワリ、沖縄本島にヒメヒョウタンキマワリがと、海を隔てた島に姉妹種が求められる。両種とものに幼虫は朽ち木に食入するため、海流分布の可能性も否定できない。対馬海流の流れる方向から推定すると、コナガキマワリは奄美大島のヒョウタンキマワリに、ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシは五島列島のゴトウトゲヒサゴゴミムシダマシに、オリジンが求められるかも知れない。

E.西九州(背振山系〜多良山系〜雲仙)の固有種
多良山系と雲仙で記録されている固有種で、背振山系や国見山系でも記録がない。最も近縁な種・亜種は東九州(英彦山から九重山、祖母山、五家荘などの九州脊梁)に分布する。


17.イマサカナガゴミムシ Pterostichus imasakai Kasahara et Ohtani  (図31, 32)
体長17mm前後、後翅が退化した黒色のゴミムシであるが、肢や上翅は褐色を帯びる場合が多く、佐賀県(鹿島市経ヶ岳、太良町中山、太良町多良岳)・長崎県(大村市黒木、諫早市五家原岳、高来町金泉寺)の記録がある。雲仙、多良山系と黒髪山(西田私信:未発表)、平戸島、背振山系の低地〜山頂付近に分布し、広葉樹林内の渓流沿い、ガレ場などの湿った石下に生息し、比較的個体数は多い。本種は英彦山から九州山地にかけての東九州と山口県に分布するキュウシュウナガゴミムシ Pterostichus kyushuensis Habuに近縁で、やや大型であること、肢が赤みを帯びること、雄交尾器の形などで区別できる。本種はキュウシュウナガゴミムシの代置種と考えていたが、背振山系では混棲することが報告された(廣川1990)。未確認ながら、本種は国見山系でも得られているらしい。本種の学名は、Kasahara・Ohtani(1988)により今坂に献名され、和名にも採用された。

図31.イマサカナガゴミムシ
上段:背面図
左:イマサカナガゴミムシ♂ 佐賀県太良町中山 7. VI. 1986. 西田光康採集(Paratype)
中:イマサカナガゴミムシ♀ 長崎県諫早市五家原岳 19. VII. 1983. 今坂採集(Paratype)
右:キュウシュウナガゴミムシ♂ 宮崎県五ヶ瀬町白岩山 7. VIII. 1978. 今坂採集
下段:背面図など(Kasahara & Ohtani 1985より引用)
左:背面図♂
右:2, 3. ♂腹板末端節、4a, b, c, d, e, f. ♂交尾器
図32.イマサカナガゴミムシの分布
○:イマサカナガゴミムシ、●:キュウシュウナガゴミムシ
E'.西九州(背振山系〜多良山系〜雲仙)の固有亜種

18.リョウコジョウカイ原亜種(仮称) Asiopodabrus sp. 8  (図33, 34)
体長8mm前後、黒褐色で前胸背の周囲と上翅の合わせ目が黄褐色の、中型のニンフジョウカイで、本種をはじめとするリョウコジョウカイ種群は、雄の中肢の爪が雌同様に基部に三角の付属歯を備えることにより、ニンフジョウカイ種群より区別される。本種は九州全域に分布するが、九州脊梁などの東九州と、背振山系以西の西九州とで雄交尾器に亜種的な差が見られ、いずれも未記載である。多良山系では、佐賀県(鹿島市奥平谷)・長崎県(大村市南河内林道、諫早市五家原岳、高来町金泉寺、高来町轟の滝)の記録があり、低山地〜山頂付近に分布し、春期、主としてカエデなどの落葉広葉樹の花と新芽林などに集まりアブラムシなどを捕食する。雲仙と多良山系では雄交尾器に殆ど差がないが、国見山系と背振山系では微妙に異なり、多少とも英彦山など東九州産に似てくる。

図33.リョウコジョウカイ原亜種(未記載:背面図)
左:♂ 長崎県高来町轟の滝 7. V. 1987. 今坂採集
右:♀ 同上
図34.リョウコジョウカイの分布
○:リョウコジョウカイ原亜種、△:リョウコジョウカイ東九州亜種

19.ヒミコヒメハナカミキリ西九州亜種 Pidonia neglecta hizena Imasaka et Amano  (図35, 36)
体長10mm前後、前胸背が赤褐色になる中型のヒメハナカミキリで、佐賀県(鹿島市経ヶ岳、鹿島市奥平谷、鹿島市平谷、太良町多良岳)・長崎県(大村市南河内林道、高来町金泉寺、高来町轟の滝)の記録がある。原亜種は背振山系の東南端に位置する九千部山とそれより東側の九州本土全域と四国の山地に広く分布するが、西九州亜種は背振山系の西端に位置する八幡岳と、それより西に位置するの多良山系、および雲仙岳に分布し、雄交尾器の先端にカギ状の突起があることで原亜種から区別される。多良岳では標高350m〜1000m付近で得られており、4月中旬から6月中旬にカエデ、サワフタギ、ミズキなどの花上や、林縁の葉上で少数が得られる。西九州が九州本土から海などにより隔てられている時期に分化したと考えられる。雲仙岳を基産地としてImasaka・Amano(2001)が亜種の記載を行った。

図35.ヒミコヒメハナカミキリ
上段:ヒミコヒメハナカミキリ西九州亜種(背面図)
左:♂ 長崎県大村市南河内林道 4. VI. 1987. 今坂採集(Paratype)
右:♀ 同上 10. V. 1986. 今坂採集(Paratype)
下段:♂交尾器など(Imasaka & Amano 2001より引用)
7, 8, 9, 12, 13, 14, 17, 18, 19. ♂交尾器
7, 12, 17. メディアンローブ腹面、8, 13, 18. メディアンローブ側面、9, 14, 19. テグメン背面
10, 15, 20. ♀腹板末端節、11, 16, 21. ♀背板末端節
7〜11:西九州亜種、12〜16:原亜種(大分県産)、17〜21:原亜種(四国産)
図36.ヒミコヒメハナカミキリの分布
○:ヒミコヒメハナカミキリ西九州亜種、△:ヒミコヒメハナカミキリ原亜種
以上の内、イマサカナガゴミムシは後翅退化の分化型生物である。また、リョウコジョウカイとヒミコヒメハナカミキリは飛翔可能な種であるが、各地で変化しており分化型生物であると考えられる。3(亜)種共に背振山系以西に広く分布し、英彦山以南の九州脊梁や本州各地に近縁種あるいは別亜種が分布する。

F.有明海沿岸と長崎県本土海岸線の固有種

20.アリアケホソヒメアリモドキ Leptaleus sasajii Sakai et Telnov  (図37, 38)
体長3mm前後、名前のようにアリに似た褐色の甲虫で、前胸背は赤褐色、上翅の後半に黒褐色の横紋を持ち、雄触角の第5〜6節が三角形に広がる。熊本・佐賀・長崎県に分布し、有明海と九州北西部沿岸地域の海岸に限って生息する。多良山系の範囲では、長崎県(小長井町長戸海岸)の記録がある。砂礫海岸や砂浜、河川敷のゴミの下、草の根際などでみつかるが、生息地は汽水域に限定されるようで、海岸でも砂浜から2〜30m以上離れた後背地の草地ではみつからない。Sakai・Telnov(2001)により、国内で初のLeptaleus属の種として新種記載された。

図37.アリアケホソヒメアリモドキ
上段:背面図
♂ 佐賀県有明町有明干拓 26. VIII. 1998. 西田光康採集
下段:背面図および、♂交尾器(Sakai & Telnov 2001より引用)
左:背面図♀
右:2. ♂触覚、3. ♂小あご髭、4. ♂第9腹板、5. ♂交尾器背面、6. ♂尾節板内部構造
図38.アリアケホソヒメアリモドキの分布
○:アリアケホソヒメアリモドキ
本種は国内初のLeptaleus属の種であり、当然国内に近縁種は知られていない。分布域は長崎県北西部と有明海の沿岸地帯で、潮気を感じる海岸に限って棲息している。本種の由来は不明であるが、有明海に固有の魚介類(例えばムツゴロウなど)の分布パターンから、大陸との関係が推察される。

G.北部九州の固有種

21.オオトラフコガネの近似種 Paratrichius sp.  (図39, 40)
体長14mm前後、黒色で前胸背に三本の縦白紋、上翅には四個の白色帯紋を持つ。色彩変異が多いが、雄は上翅は赤褐色に縁取られる個体が多く美麗である。三宅(1990)は、従来1種と考えられていたオオトラフコガネを再検討し、南九州産のキュウシュウオオトラフコガネParatrichius kyushuensis Miyakeと、紀伊半島産のキイオオトラフコガネParatrichius itoi Tagawaをオオトラフコガネより区別した。キュウシュウオオトラフコガネは東九州の大分県九重山系黒岳以南、鹿児島県佐多岬まで記録されている。この種は特異な形態をしており、♂後脛節の長いほうの端刺はほぼ直線状で、♂交尾器も鶏冠のような特異な形をしている。

一方、オオトラフコガネは♂後脛節の長いほうの端刺は強く湾曲しており、外見からも前種との区別は容易で、紀伊半島を除く本州、四国、九州に分布するとされる。今坂ほか(1999)は、オオトラフコガネは、さらに、♂交尾器の形で5種程度に分割可能として、北部九州産をオオトラフコガネの一種 Paratrichius sp.と表示し、長崎・佐賀県境にある多良岳の個体を♂交尾器と共に図示した。本種の分布範囲は英彦山山系〜北九州と、釈迦岳など福岡県八女郡の一部、多良山系、平戸島安満岳で、多良山系では、佐賀県(鹿島市奥平谷)・長崎県(大村市笹ヶ岳、大村市黒木、諫早市五家原岳、高来町轟峡烽火山)の記録がある。山頂付近の花上で得られているほか、朽ち木中から幼虫を採集・飼育し、羽化させた記録が知られる。

図39.オオトラフコガネの近似種
上段:オオトラフコガネの近似種(未記載)
左上:♂交尾器側面長崎県大村市笹岳 14. V. 1998. 羽化, 10. IV. 1998. 幼虫採集, 青木良夫採集
左下:♂交尾器背面同上
中:♂背面図同上
右:♀背面図佐賀県佐賀県太良町中山 1993. 羽化, 20. XII. 1991. 幼虫採集, 青木良夫採集
下段:キュウシュウオオトラフコガネ
左:♂交尾器側面熊本県矢部町椎矢峠 23. VII. 1991. 今坂採集
中:♂交尾器背面同上
右:♂背面図同上
図40.オオトラフコガネの近似種の分布
○:オオトラフコガネの近似種、●:キュウシュウオオトラフコガネ

22.キュウシュウクビボソジョウカイ Hatchiana kyushuensis (Takakura)  (図41, 42)
体長10mm前後、頭と上翅、肢が黒色、前胸背が赤褐色を呈するジョウカイボンで、長崎県(大村市黒木、高来町金泉寺、高来町轟の滝)の記録がある。前記のタラクビボソジョウカイに似るが、肢が黒いことと、雄交尾器により区別される。九州北・中部の英彦山・九重山・祖母山・大崩山の各山系と多良山系の山地帯(標高300m以上)で記録されており、広葉樹林内の林縁で、落葉広葉樹の花上・葉上などで見つかる。

図41.キュウシュウクビボソジョウカイ
上段:背面図
左:キュウシュウクビボソジョウカイ♂ 長崎県高来町金泉寺 4. V. 1998. 今坂採集
右:キュウシュウクビボソジョウカイ♀ 長崎県高来町轟の滝 21. V. 2000. 今坂採集
下段:♂交尾器(Imasaka 2001より引用)

121. パラメラ背面、124. パラメラ腹面、127. パラメラ側面、

130. メディアンローブ背面、133. メディアンローブ側面.
121, 124, 127, 130, 133:キュウシュウクビボソジョウカイ
図42.キュウシュウクビボソジョウカイの分布
○:キュウシュウクビボソジョウカイ
G'.九州中北部の固有亜種など

23.ソボムラサキジョウカイ北九州亜種 Themus sobosanus kitakyushuensis Takakura  (図43, 44)
体長12mm前後、頭と前胸背、肢が黒色、上翅はくすんだ濃緑色を呈するジョウカイボンで、一見、本州に多産するアオジョウカイの緑色のタイプに酷似する(図43-左,中左)。本種は、アオジョウカイやヒメキンイロジョウカイの近縁種で、熊本県以北の九州中北部に分布する。原亜種sobosanus sobosanus M.Sato(図43-右)は祖母・大崩・椎矢峠、五家荘などに分布し、上翅は濃い紫色を呈する。また、九重山系の個体群(図43-中右)はヒメキンイロジョウカイ以上に翅端が広く黄褐色を呈し、亜種化していると考えられるが未記載である。北九州亜種は、英彦山山系、背振山系、多良山系に分布し、多良山系では、佐賀県(鹿島市奥平谷、太良町中山)・長崎県(大村市南河内林道、諫早市五家原岳)の記録がある。山頂付近に吹き上げで集まり、落葉広葉樹の花上・葉上などで見つかる。

図43.ソボムラサキジョウカイの色彩変異(背面図)
左:北九州亜種♂ 長崎県大村市南河内林道 21. V. 1985. 今坂採集
中左:北九州亜種♀ 同上 4. VI. 1985. 今坂採集
中右:九重山亜種(未記載)♂ 大分県九重黒岳 21. V. 1989. 西田光康採集
右:原亜種♂ 熊本県泉村白鳥山 5. VIII. 1984. 今坂採集
図44.ソボムラサキジョウカイの分布
○:ソボムラサキジョウカイ北九州亜種、◎:ソボムラサキジョウカイ原亜種、
△:ソボムラサキジョウカイ九重山亜種

24.ニシジョウカイボン黒足型(仮称) Athemus luteipennis (Kiesenwetter) (図45, 46)
体長12mm前後、頭と側縁を除く前胸背、触角、肢が黒色、上翅は褐色を呈する大型のジョウカイボンである(図45-左)。北海道から九州まで分布するジョウカイボン Athemus suturellus (Motschulsky)のうち、兵庫県以西の本州と九州に分布する個体群を雄交尾器の形態により別種としたものである(今坂・中村 1993)。奥島・佐藤・石田(2001)は、境界付近で変異が連続しているとして本種を後者の亜種と見なしているが、雄交尾器の形態から判断すると明らかに二型に区別され、引き続き別種と考えている。

多良山系では佐賀県(嬉野町大野原高原、塩田町唐泉山、鹿島市奥平谷)・長崎県(大村市南河内林道、大村市黒木、大村市狸ノ尾、諫早市白木峰、高来町轟の滝、多良岳山頂)から記録されている(大部分がジョウカイボンとして)が、実際は低地から山頂付近まで各地に普遍的に分布する。

黒足型の分布範囲は今坂(1996)に示したように、多良山系以西の九州本土、平戸島、五島列島の大部分と、北九州市周辺である。阿蘇山以南では触角と肢が黄褐色を呈する黄足型(図45-中右)が分布し、両分布範囲の中間地帯となる背振山系、英彦山山系、宮崎県北部の北川町では、両方のタイプとその中間形(図45-中左)が見られ、地理的に本拠地に近い型の勢力が強いように感じる。多良山系は黒足型西九州個体群の純正の分布域としては東端に当たると考えられ、佐賀平野以北では中間・黄足両タイプが混棲する。また、山口県など本州西部では黒足型であるが、一部の個体に翅端が黒化し、その出現率は地域によって異なる(黒足本州型:図45-右)。

九州内の型の分布状況から判断すると、概略、久留米−大分線を境界として、ニシジョウカイボンは一旦分断・隔離され、軽微な亜種である黒足型と黄足型に分化した。その後、隔離が解除され、黄足型がより北方へ進出し、現在中間地帯で混じり合い融合しつつある現状と考えられる。今後そう遠くない将来において、九州本土では総ての地域でこのうちのいずれかのタイプによって席巻される可能性が高いと考えられる。

図45.ニシジョウカイボンの色彩変異(背面図)
左:黒足型♂ 長崎県大村市狸ノ尾 8. V. 1984. 今坂採集
中左:中間型♂ 佐賀県多久市下多久 11. V. 1991. 西田光康採集
中右:黄足型♂ 熊本県天草天草町 2. V. 1978. 今坂採集
右:黒足本州型山口県下関市竜王山 26. V. 1988. 松永善明採集
図46.ニシジョウカイボンの分布
○:ニシジョウカイボン黒足型、□:ニシジョウカイボン黒足本州型、
△:ニシジョウカイボン黄足型、×:黒足型・黄足型の両タイプとその中間形

25.セダカコブヤハズカミキリ北九州亜種 Parechthistatus gibber longicornis Hayashi  (図47, 48)
体長12mm前後、黒色で灰褐色の毛を密生し、触角は長く、体長の2〜3倍、上翅末端は尖って突出し、後翅は退化する。多良山系では中腹以上の広葉樹林で、倒木や立ち枯れに集まり、秋期は枯れ葉にみられるが、個体数は多くない。

西日本のヒゲナガコブヤハズカミキリ属 Parechthistatusは、従来ヒメコブヤハズカミキリ P. giber 、セダカコブヤハズカミキリ P. grossus、ナンキコブヤハズカミキリ P. nankiensisの3種に区別されていたが、三宅(1980)によりセダカコブヤハズカミキリ 1種10亜種に整理された。九州本土には、九重山および阿蘇山以北の北九州では北九州亜種(図47-上段および中段左, 中, 下段右)が分布し、祖母山以南の南九州では、触角が更に長く上翅末端は尖らない南九州亜種ssp. grossus (Bates)(図47-中段右, 下段右)が分布するとされるが、その境界付近の個体群は場所により異なり、どちらの亜種に含めるべきか定かではない。

多良山系産(図47-上段右, 下段右)は北九州亜種とされ、佐賀県(鹿島市経ヶ岳、鹿島市奥平谷、太良町中山、太良町多良岳)・長崎県(大村市南河内林道、大村市黒木、諫早市五家原岳、高来町金泉寺)の記録がある。北九州亜種の中でも、平戸島、雲仙岳(図47-中段左)、多良山系、英彦山山系(図47-上段中)でそれぞれ変異があるといわれるが、明らかにされていない。また、対馬亜種(図47-上段左, 下段左)は南九州亜種より北九州亜種に近いと考えられる。

図47.セダカコブヤハズカミキリの地域変異
上段:背面拡大図(総て♂)
左:対馬亜種長崎県対馬厳原町内山竜良山 15. V. 1984. 今坂採集
中:北九州亜種英彦山産福岡県英彦山深倉峡 8. VIII. 1976. 松永善明採集
右:北九州亜種多良岳産長崎県諫早市五家原岳 16. VIII. 1981. 今坂採集
中段:背面拡大図(総て♂)
左:北九州亜種島原半島産長崎県国見町田代原 13. VIII. 1980. 今坂採集
中:北九州亜種九重山産大分県九重黒岳 28. VII. 1980. 佐々木茂美採集
右:南九州亜種熊本県泉村白鳥山 17. VI. 1984. 今坂採集
下段:背面図(総て♂、上記と同じ個体)
左から、対馬亜種、英彦山産、多良岳産、島原半島産、九重山産、南九州亜種
図48.セダカコブヤハズカミキリの分布
○:セダカコブヤハズカミキリ北九州亜種、△:セダカコブヤハズカミキリ南九州亜種、
◎:セダカコブヤハズカミキリ対馬亜種
以上の内、セダカコブヤハズカミキリは後翅退化の分化型生物であるが、その他の種は総て飛翔可能な種でありながら各地で変化しており、分化型生物であると考えられる。北部九州の固有(亜)種ということで一括りにしたが、分布範囲は、種ごとに微妙に異なり、ソボムラサキジョウカイ北九州亜種の分布範囲は西九州と久留米−大分線の北側、オオトラフコガネの近似種もほぼ同様で、ニシジョウカイボン黒足型も混棲地が生じる前には、このあたりに境界があったものと想像される。セダカコブヤハズカミキリ北九州亜種はほぼ阿蘇山周辺を境界とし、キュウシュウクビボソジョウカイもその東側に当たる大崩山を南限としている。

II.多良山系に分布する固有種の成立
多良山系に分布する固有種は、いつ頃、どこから多良山系に侵入したか?、それは固有種として成立する以前か、以後か?、また、それはどういう理由によるものか考えてみたい。


A..多良山系に分布する固有種の特徴
多良山系に分布する固有種・亜種など25種を紹介した。このうち、タラメツブテントウについては情報が少なく、今回は議論の対象外としたい。

固有種のうち、後翅が退化した典型的な分化型生物と考えられるものは、ヌレチゴミムシ1種、ナガゴミムシ類3種、アリヅカムシ科4種、ゴミムシダマシ科2種、カミキリムシ科1種の計11種である。これらの種は移動性が少なく、各山系ごとに分化することが多い。また、残りのルリクワガタ類1種、コガネムシ科2種、ジョウカイボン科7種、アリモドキ科2種、ヒメハナカミキリ類1種の計13種は、後翅が発達し、よく飛翔するのになぜか狭い山系ごとに分化し、これらの種群も分化型生物と考えられる。

つまり、多良山系に分布する固有種は総てが分化型生物と考えられるわけである。このことは、山系の範囲がそれほど広くなく、他の山系に比較して特殊な生態環境(例えば火山性草原を持つ阿蘇山のような)を持たない多良山系においては、むしろ、当然のことと考えられる。多良山系産固有種はその種自体が変化しやすい性質を内包する分化型生物であり、地史的な分断・隔離によって固有化したと考えられる。多くは固有化した後で多良山系に侵入してきたが、一部は多良山系に侵入した後で固有化したと考えられる。

図49に、九州本土の山地地形の配置を示した。濃色部分は標高200m以上の山地である。海面が200m上昇すると西九州は多くの島に分断され、多島海の様相を呈する。九州脊梁からなる東九州島と、多島海の組み合わせは、ガラパゴス諸島を彷彿とさせる。第四期に入ってから4回の氷期と、3回の間氷期がみられるが、間氷期の最も温暖な時期には、このような多島海が複数回出現した可能性が考えられる。多良山系を含むこれらの山系は、分断・接続を繰り返したと推定され、その間に本項でとりあげた固有種が誕生したと考えられる。

図49.九州の山地地形
●:alt.200m以上
B.どこから多良山系に侵入してきたか?
多良山系産固有種の進入経路としては、大部分の種は、(1)英彦山山系→背振山系→多良山系という道筋が考えられる。このことは、これらの地域に種や亜種の分布範囲が限定されること、または、英彦山山系や背振山系に姉妹種や亜種が分布することなどから判断される。表8における本州系と九州系に分類した種群、及び朝鮮系としたタラオオズナガゴミムシなどは、この経路で多良山系に侵入したと考えられる。

表8.多良山系固有種と姉妹種の分布
このうち、本州系と表示したタラヌレチゴミムシ〜ニシジョウカイボンの13種については、本州において数多くの(亜)種が分化・分布しており、ヒミコヒメハナカミキリを除く12種については、(1)a本州→英彦山山系→背振山系→多良山系という経路が考えられる。ヒミコヒメハナカミキリは、姉妹群にあたるムネアカヒメハナカミキリなどは本州にも分布しているので、本州系に含めたが、ヒミコヒメハナカミキリの種自体は直接九州と接する本州(中国地方など)には分布せず、ヒミコヒメハナカミキリ原亜種は英彦山山系〜九州脊梁と四国に分布するので、細かく分類すれば四国系ということになるかも知れない。(1)b本州→四国→九州脊梁→英彦山山系→背振山系→多良山系という経路が考えられる。

九州系と表示したタラクビホソジョウカイ〜ヒメキンイロジョウカイの5種について、分布型や姉妹種の分布から考えると、一見、タラクビホソジョウカイは(1)bに、それ以外の4種は(1)aに含まれると考えられる。しかし、種分化の状況や多様性等を考えると、遠い祖先種は大陸かあるいは本州から侵入してきたとしても、現在の種群は主として九州内で種分化し、逆に本州へ分布を広げたと考えられる。

タラクビホソジョウカイは、シコククビボソジョウカイ群に属するが、姉妹種はヒコサンクビボソジョウカイであり、九州系(2)a(朝鮮半島→)多良山系→英彦山山系という経路が考えられる。

ウンゼンケナガクビボソムシとヒメキンイロジョウカイの2種は、九州脊梁の全域が分化の中心であり、九州系(2)b九州脊梁→英彦山山系→(背振山系→)多良山系、キュウシュウクビボソジョウカイとソボムラサキジョウカイは同様に九州脊梁でも中北部の九重山系付近が分化の中心であり、(2)b'九州脊梁(九重山系)→英彦山山系→(背振山系→)多良山系のそれぞれ経路が考えられる。

また、タラオオズナガゴミムシは同じ種群が朝鮮半島、対馬、九州と付近の離島、四国に分布しながら、本州には分布せず、英彦山山系経由ながら朝鮮系(3)a朝鮮半島→対馬→英彦山山系→背振山系→多良山系と考えられる。

次いで、ヒメチャイロコガネは英彦山山系〜九州脊梁には分布せず、近縁種のクロスジチャイロコガネも朝鮮半島、対馬と本州に分布することから、朝鮮系でも(3)aのように英彦山山系を経由せず、直接九州西岸に侵入したと考えられる。(3)b朝鮮半島→対馬→背振山系→多良山系。

さらに、大陸での分布は不明でありほとんど想像に過ぎないが、アリアケホソヒメアリモドキも、有明海固有の魚介類と同様の起源を持つと想像すると、揚子江の河口が朝鮮半島の西側から九州西岸に達していた頃に、ムツゴロウやヨドシロヘリハンミョウ同様に、海岸沿いに九州西岸〜有明海沿岸に侵入したものと想像している。

一方、ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシは、最も近縁なゴトウトゲヒサゴゴミムシダマシが五島列島に分布しており、五島列島から侵入したと考えている。ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシは長崎県本土でも、国見山系、西彼杵半島〜多良山系〜長崎市周辺、野母半島先端の3個体群に区別され、中でも国見山系の個体群が最もゴトウトゲヒサゴゴミムシダマシに近い。ゴトウトゲヒサゴゴミムシダマシがナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシより祖先的であるので、ナガサキトゲヒサゴゴミムシダマシは(4)五島列島→国見山系→多良山系という経路で侵入したと考えられる。

さらに、コナガキマワリは、沖縄本島のヒメヒョウタンキマワリ、奄美大島のヒョウタンキマワリに近縁で、周囲のその他の地域には、大陸を含めてこの類の分布は知られていない。沖縄本島、奄美大島と多良山系とが直接陸続きになることは考えづらいので、今のところ黒潮沿いに沖縄本島、奄美大島から海流によって分布を広げ、長崎県に漂着した個体群が、その後本種に進化したと考えるしかない。本種は多良山系より東側には達していないので、長崎県本土でもより南西部からの侵入であろう。(5)沖縄本島、奄美大島→海流(黒潮)→長崎県南端(島原半島か野母半島)→多良山系。

まとめると、多良山系への侵入ルートは9ルートが考えられる。

本州系(1)a本州→英彦山山系→背振山系→多良山系
(1)b本州→四国→九州脊梁→英彦山山系→背振山系→多良山系
九州系(2)a多良山系→英彦山山系
(2)b九州脊梁→英彦山山系→多良山系
(2)b'九州脊梁(九重山系)→英彦山山系→多良山系
朝鮮系(3)a朝鮮半島→対馬→英彦山山系→背振山系→多良山系
(3)b朝鮮半島→対馬→背振山系→多良山系
その他(4)五島列島→国見山系→多良山系
(5)沖縄本島、奄美大島→海流(黒潮)→長崎県本土南端部→多良山系
ただ、以上のうち、亜種や型など、細かい変異を考えると、シマバラヒゲナガアリヅカムシ、ルリクワガタ雲仙亜種、ヒメキンイロジョウカイ、コナガキマワリの4種は、はっきりした根拠には乏しいが、島原半島で固有化した後で、多良山系に侵入し、ルリクワガタとヒメキンイロジョウカイでは交雑により、これらの多良山系個体群を形成した可能性が高い。また、そうなると、多良山系と雲仙山系の固有種であるウンゼンケナガクビボソムシと、この両地域と国見山系・背振山系でやや異なるリョウコジョウカイ原亜種、八幡岳まで分布し背振の九千部山には別の亜種が分布するヒミコヒメハナカミキリ西九州亜種なども、島原半島で固有化した後で、多良山系に分布を広げた可能性が出てくる。

なお、タラメツブテントウについてはまったく情報がなく、タラダケオノヒゲアリヅカムシについても、近縁種が本州に分布する以外手がかりが無いので、この2種については言及しなかった。

C.いつ頃多良山系に侵入し、固有種が形成されたか? 両者の前後関係は?
ある地域で種や亜種などが形成されるためには、まず周辺の地域からその地域へ祖先種が侵入するための接続(寒冷化→海面低下)が起こり、その後に種分化のための分断・隔離(温暖化→海面上昇)つまり島嶼化が必要である。この状態で、一定以上時間が経過することにより固有化すると考えられている。また、寒地性の種においては分布域は山頂部に限定されており、平野部を経由しての分布の拡大は出来ず、見かけ上、陸続きであっても結果として生息域は分断・隔離されている状態にある。これらの種は島嶼と同様に、寒冷化によって、生息域が低地まで広がり分布拡大が可能になり、温暖化によって生息域が山頂部に限定されて分断・隔離され固有化が起こる。

以上のことから、固有種のそれぞれについて、侵入・分布拡大と分化の過程を推定し、それを一応、最後の状態から逆算して、機械的に当てはめてみたのが、表9である。

表9.多良山系固有種の形成と移動
この表でみると、多くの種で、朝鮮半島から九州へ、あるいは本州から九州へ、九州から離島へと海を越えての分布拡大の時期があり、九州内でも、英彦山→西九州と、背振山系→多良山系あるいは、島原半島→多良山系への分布拡大の時期があることが解る。これらの移動は、多くの種でほぼ同じ時期に行われたと考えるのが自然なので、同じ移動については時期を合わせ、最終の微妙な分化時期を完新世として、侵入・拡大時期を氷期に、分化時期を間氷期に当てはめて示したのが、表10である。侵入時期と分化時期には網掛けをして示した。

表10.多良山系固有種の分化時期と侵入時期
この表によると、大部分の種が多良山系に達したのはリス氷期(25〜15万年前)であり、次のリス・ウルム氷期に固有種として分化したという結論になる。リス氷期には、一部の種においては、多良山系を経て島原半島まで達し、同様にリス・ウルム氷期に固有化し、次のウルム氷期(2.5〜1.8万年前)には再び多良山系に侵入し直したと考えられる。島原半島の成立がほぼ20万年前であること、最終氷期以降の交雑による変化と思われる微妙な地域変異が多良山系産のルリクワガタやヒメキンイロジョウカイなどでみられることなどからも、以上の推定は支持される。

なお、本州系に含まれるタラヌレチゴミムシ、タラチビジョウカイなど多くの種が、リス氷期に多良山系に達し、次のリス・ウルム氷期に固有化しているのは興味深い。また、固有化した後で多良山系に侵入したと考えられるのは、オオトラフコガネの近似種、ヒメチャイロコガネ、キュウシュウクビボソジョウカイ、ソボムラサキジョウカイなどである。

「多良岳の甲虫相2001」の中で多良山系の甲虫相構成として、「最も多いのは本土系種Fで、次いで北方・本土系種E、北方系広域分布種A、南方系広域分布種、大陸・本土系種Cなどが多く、以上でほぼ9割を占めた。また、少ないながら、暖地系種G、九州固有種J、九州・四国固有種I、琉球系種H、大陸系種D、長崎・佐賀固有種K、多良山系固有種Q、北九州固有種O、背振・多良山系固有種Pなども産し、未記載種などの分布不明種Mも含まれていた。」と述べた。また、島原半島との比較の中で、「多良山系と島原半島の甲虫相の相違は、多良山系では本州系・九州系の種を中心として、九州脊梁や英彦山山系に分布する多くの種が全体として多良山系まで陸づたいに分布を広げ、その甲虫相を構成したのに対して、島原半島にはそのうちの北方・本土系の種の一部は達することが出来ず、甲虫相は全体として調和を欠いた状態に陥った。そのために空白となった生態的な隙間には、主として移動力の大きい北方系・南方系両方の広域分布種が、海流分布やその他の手段でより多く侵入したと考えられる。島原半島に侵入した南方系種や広域分布種の一部は、多良山系まで達したと考えられるが、大部分の種は多良山系までは到達できず、多良山系での比率は少ないと理解される。」と結論づけたが、多良山系固有種の分布と分化の推定からも同様の結論が導き出された。

現在多良山系に分布する本州系や朝鮮系の甲虫類の多くは、おそらく、ミンデル氷期(46〜42万年前)までには九州に達し、遅くともリス氷期には英彦山と背振山を経由して多良山系に侵入し、多良山系固有種は次のリス・ウルム氷期に成立したものと推定される。

なお、末筆ながら本報文の掲載について多大なお骨折りを頂いた本誌編集部の古川雅通氏、市場利哉氏、本文作成に種々のご協力をいただいた西田光康氏、アリヅカムシ類の分類について懇切丁寧な指導を頂いた国立科学博物館の野村周平氏、ナガゴミムシ類の分類と分布についてご教示頂いた故笠原須磨生氏、常日頃多良山系の記録についてご教示いただいている長崎市の野田正美氏、青木良夫氏、山元宣征氏、佐賀県大和町の廣川典範氏に心より厚くお礼申し上げる。

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